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死の闇の中。


光が溢れる。


「ん...」

目を開けると、フジワラがこちらを見下ろしている。


少し怒ったような顔をしながら笑って言う。

「よう、死んでんじゃねーよ」

ああ、死んだのか。生き返ったということは。

「金は足りたのか?」

「足りねーよ。貴族様は、こっちの持ち金の倍とか言ってきたからな」

そうだな、あいつ等はそう言うやつらだったな。

「もしかして、フジワラが出してくれたのか?」

「んなわけねーだろ。俺が生き返らせただけだ」

「は?」

生き返らせた?


「俺の光魔法で生き返らせたんだよ」

「は?」

「は? じゃねーよ。ばか。蘇生代は貰うからな」

「あ、ああ。あれでいいなら貰っておいてくれ」

全財産だがまた稼げば良い、安いものだ。

「そんなにがめつくねーよ、半分の金貨百枚貰っとく。ほら、大事に持っておけ」

魔法の鞄を投げて寄越す。金貨二百の半分でいいのか?

「あ、ありがとう」

「礼ははえーよ。とりあえずそこで待ってろ。騎士達に捕まったりするなよ」


ニッと太く笑い背を向けるフジワラ。





黙ってこちらを見ていたゴルジフ卿に声をかける。

「わりーな。試験を続けてくれ」

言葉使いはもういいだろう。面倒だしな。

「ああ...フジワラ君。君は光魔法も使えるのかね?」

「見ての通り。蘇生魔法も使える」

「へ、へえ。凄いんだね」

「下手に殺すと光魔法使えなくなるかもな」

死んだものが生き返るとき、ある確率で持っていたスキルが消えてしまうことがある。

「…………そうだね」


殺して生き返らせること自体にある程度のリスクが存在するのだ。

生き返らせるときに隷属の魔道具によって強制的に奴隷にすることも出来るが、その場合スキルの損失率が上がる。

光魔法、それも蘇生が使えるスキルレベルの者の存在は希少だ。


「試験を再開するよ、二十六番前に出たまえ」

「オ、オレは棄権する」

「そうかい。じゃあ出て行きたまえ」


あっさりと棄権を認めるゴルジフ卿。

もう、他の冒険者などどうでもいいのだろう。


残りは俺だけ。


「フジワラ君。君は合格だよ」

俺の第二試験はパスらしい。

「どーも」


「フジワラ君。少し話があるのだけど、いいかな?」

早速勧誘というところか。

「ああ、ちょっと待っててくれ」

言いつつ、扉に向かって歩き出す。


「ポール」

ポールを呼び。扉を塞ぎ退く気配の無い騎士達、ゴルジフ卿を見る。

「通したまえ」

扉を開き、オッサンを呼ぶ。気配察知で居るのは分かっている。

ストーキングマスターの俺に気付かれずストーキングするなど不可能!

「ポール、このオッサンの部屋で待っててくれ」

「オイ、ちゃんと名前で呼べ」

「冒険者ギルドのギルド長なんだから、ポールを貴族に売るなよ」

「オイ、名前で呼べといっとるだろうが」


怒った振りをして俺に近づき、セザールが耳元で囁く。

「誘いに乗れよ」

おそらくこの後始まる勧誘に乗れという事。

「むり」

「オイ」

「普通に試験合格するから大丈夫」

「オイ、貴族をなめるなよ」

「いやあ、俺今スゲー我慢してるんだぜ?」

「なにを、言ってるんだ?」

「さっきさ、ここに居る貴族の関係者全員を皆殺しにしちゃおうかなーって思っちゃってさ」

「なにを、」

「さすがに拙いじゃん? オッサンの立場とか町の立場とかさ。だから我慢したんだぜ」

「おまえ、正気か?」

「わかってないなぁ」


「例えばさ、ここにアークデーモンが現れたとするとさ、どうなる?」

「アークデーモンだと! そんなものが現れたら町が崩壊するわ」

「おー、オッサン遭った事あるんだ」

「迷宮で出くわした時、必死で逃げたわ!」

「俺は無傷で倒したぜ」

「は?」

「は? じゃねーよ。わるいが、俺はおっさん達が認識出来ている強さと桁が違う」

さすがに、自分で言うのは恥かしいな。


「マテマテ、Sランク級にはそういうのがいるのは知っている。だがフジワラ、お前はDランクだろう」

「貴族と仲良くする気が無いから上げてないだけだ」


ポールが話しに加わる。

「フジワラは、ローラン王都の管理迷宮の最下層を攻略している」

「は? あの四十層あるといわれている迷宮をか? Dランク、というのは当てにならんのか」

「俺は二十層までしか行ったことはないが、それほど凄いことなのか?」

「当たり前だ! 触れるだけで命を奪う魔物も出てくるような場所だ。二十層なぞ子供の遊び場に思えるぞ」

「そ、そんなに凄いのか...」


「ま、そんなに凄いんだわ。で、俺はそこをソロで攻略できる」

した事無いけどね。危険だし、楽しくないしな。

「す、凄いな」

「そうか、ならばもうワシがどうこう言える事ではないな」

腕を組んで黙るオッサン。


「で、流れ的にポールを拉致して俺にいうこと聞かせようって目が出てきたから、取り合えずオッサンに保護を頼むって所だ」

「そうなのか?」

「ポール、お前あまり貴族と駆け引きした事無いだろ。あいつ等は思いつく最悪の事を何でもするぞ」

「そ、そうなのか...」


「そうか、そこまで考えているのか」

「ああ、もしポールが捕まっても見捨てるつもりだが、捕まらない策はとる」

「フジワラ、今さらっと酷いこと言ったよな」

「気にするな。俺も気にしないから」

「気にするわ!」


まあ、貴族からすればポールを捕まえた時点で生かしておく理由が無い。

既に俺が蘇生を使えるのは分かっているのだ。詳しい説明は省くが、首だけ俺に見せるほうが効果的。


「ポール、分かってるだろうが、お前はローランに帰ってもらうぞ」

「ああ、分かっている。どうせここに居てもすること無いしな」

試験に落ちたポールはスキルの迷宮には潜れない。


「じゃ、オッサン頼むわ」

「セザールじゃ! 任せておけ」


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