14:蘇生術
ゴルジフ卿が楽しそうに話しかけてくる。
「二十二番君、君には生き残ることを期待しているよ」
「そりゃ、どーも」
「……いけないな。この程度で地が出てしまうなんて」
「育ちが悪いもんでね」
仲良く出来そうも無いからな。
「…………」
肩をすくめ立ち去るゴルジフ卿。
理解できた。
この第二試験には二種類の意味があるのだ。
有能な冒険者の獲得。役に立つと思った冒険者をここで殺し、高額な蘇生料金を肩代わりする換わりに隷属契約を結ぶ。
大抵はパーティーで行動する冒険者。もし死人が出ても蘇生料の工面はパーティーメンバーがしてくれる。だが、ここはソロの迷宮。蘇生料の工面などしてくれる仲間は居ない。死イコール隷属ということだ。
そして、おそらく。
この第二試験を生き残った者に勧誘がある。
第二試験で殺しに来る相手だ。最終試験はどのようなことになるのか、確実に生き残れない試験が待っているならば、いっそここで軍門に下ってしまえばと思う。そのための脅しも含めたこの第二試験。
もし勧誘を断っても、最終試験で確実に殺し隷属させる。
たしかに合格者など出る筈も無い試験だ。
全力で生き残る。
今出来る最善はこれだ。
そして、翌日の最終試験は受けずに全力で逃げる。
契約などしても、こいつは確実に俺達冒険者を使い捨てる。
フジワラを見る。
俺の視線に気付いて、ニッ! と笑い返してくる。
凄い奴と言う噂はよく聞いた。ギルド長のギルバートさんとよく迷宮に潜っているとも聞いた。
実際さっきの戦闘をみれば桁外れの強さだった。
しかし、所詮は一人の冒険者でしかない。この町の冒険者ギルドを掌握してしまう貴族の力には敵わない。
力という物の桁が違う。
だから、もし俺がダメだった場合は、お前が全力で逃げてくれ。
頼む。
「始め!」
無慈悲な合図。
「ダブルスラッシュ!」
「アローレイン!」
スラッシュが左右の退路を塞ぎ。
矢の雨が上から降ってくる。
絶望的だな。
「いきなり使うことになるとは、――――トンズラ!」
バシュー!
と走る。トンズラは、一定時間通常の三倍のスピードで走れるようになる。
スラッシュより速く、矢の雨が降る前に移動する。
このまま、逃げるか!?
扉へ向かおうと思いそちらを見れば、騎士が二人扉を塞いでいる。
他には??? む、何か来る!大きく避ける。何かが通り過ぎた!
ウィンドカッター、風の刃か。この魔法は風の魔法の為見え辛い。
「進路を塞ぐんだよ! 面で攻撃したまえ!」
おい。何指示出しているんだよ貴族の若様よ。
「火の壁!」
チッ! だがその程度なら走り抜けられる。
「溜めスラッシュ!」
クソッ! 攻撃範囲と威力が上がる溜め攻撃かよ!
だが、まだいける!
「よし、もうすぐ三十秒経つよ。スピードが落ちたら畳み掛けたまえ!」
…………なんだよ。トンズラの持続時間まで知ってるのかよ。
クソッ!!!
クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソが!!!
子供が生まれて、少しだけ上を目指そうと思った。
背に痛みが走る。
スキルを増やしもう少し安全に探索できるようにと。
腕の感覚が無くなる。
そんなことを考えると死ぬぞと笑いながら仲間に言われた。
地を蹴る足の感覚が無い。
俺達冒険者は、普通の幸せを求めちゃいけないんだろうか...
片手と両足が切断されて、ポールが地に落ちる。
「…………」
気分が悪い。
立ち上がる気も起きないが、無理矢理立ち上がる。
四つになったポールを騎士達が集めている。
「なあ」
ゴルジフ卿に声を掛ける。
「ん? なんだい」
「蘇生の代金って幾らかな?」
「君が払うのかい?」
「いや、ポールから金を預っている」
「ポール、それは誰かね?」
「ああ、二十二番だったな」
「そうかい。幾らあるのかね?」
「いや、幾ら掛かるのかな?」
「…………フジワラ、君も口の聞き方を忘れたようだね」
「あー、すまんね。で、幾ら?」
「……そうだね。君が預った額の倍かな」
「………………はぁ」
ため息が出る。
「あんた等、ポールは俺が預るわ」
ポールを運ぼうとしている騎士達に声をかける。
「…………」
無言で威圧してくる騎士達。
「預ってどうするんだい?」
背後からゴルジフ卿が質問してくる。
「蘇生する」
振り向かずに答える。
「この町にいる司祭は、我々の許可無く蘇生術は使わないよ」
ま、そうだろうな。
「司祭とかいらねえから、どけ」
騎士達に殺気をぶつける。
気絶した騎士達をどかし、雑に纏められたポールを持ち上げる。
試験場の外でポールを寝かし、腕と両足を元の位置に置く。
その死に顔は怒りと後悔が混じり合ったなんともいえない顔だ。
「ったく。アホだな」
守るものがあるなら、そこから離れるなよ。バカ。
光の魔力を集める。
「蘇生!」
ポールの体が光に包まれ、腕が、足が元に戻り。
生き返る。




