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狩猟都市への帰還

 翌朝、目覚めて最初に視界に飛び込んできたのは、無表情でこちらを凝視するノルンであった。美少女の無表情というのは、少々、心臓に悪い。


「おっ、おはよう」

「おはようございます。昨夜はお二人だけで何かされていたようですが……」

「いや、大した事じゃないよ」

「いいえ、大した事です! 空から敵が侵入して来たら、どうしたというんです?」


 うぇ、確かにそこは盲点だったよ……。空を飛ぶ魔物だっているのに、星空に浮かれて、そんな事にも気付かないなんて、我ながら迂闊過ぎだ。にしてもノルン、俺がしたことに気付いていながら、わざわざ聞いて来るとか、ちょっと意地が悪いぞ。


「済まない、確かにノルンの言う通りだな。今後はノルンにも一言声を掛けることにするよ」

「……分かってくれればいいんです。(私が本当は何に怒ってるかは分かって無さそうですが、仕方ないですか……)」


 なんとかノルンの機嫌も直ったようで、朝食の準備が出来ていると伝えられ、スズも起こして朝食を取りに向かう。


 相変わらずの肉肉肉の食卓だ、家に帰ったらスズの料理が食べたいものだ。肉を焼くだけの単純な調理だと、料理スキルの恩恵は殆ど無いが、料理スキル持ちがちゃんと、時間を掛けて調理した時の料理は格別なのだ。


「さて、用事も済んだことだし、さっさと街に帰ろうかと思うんだが、イリスはどうする?」

「拙者も皆のようにもっと強くなりたいでござる。どこまでも付いて参る所存」

「そうか、ならこれからも宜しくな」

「こちらこそ宜しくでござる」


 よっし、盾役ゲットだぜ。言っちゃ悪いが、コテツ達が頼りにならなくなって来て、困ってたんだよな。

 かといって俺はスキル構成的に、盾役に向いてるとは言えんし、最前列だと指示も出しづらい。スズやマシロに任せるってのも論外だ、見た目的には幼気な少女の2人にそんな事させたら完全にアウトだろう。

 イリスの見た目も少女と言っていいほどに若いが、女性にしては大柄であるし、歳もそれなりに……いや、人生経験も豊富そうで頼りにできる。


「そうと決まれば出発だ、今日中には狩猟都市に山を下りるぞ」


 朝食を終えた俺達は準備を整え、白龍様の住処を後にしたのだった。




 狩猟都市までの道程は、行きと違って3日間で狩猟都市に着くことができた。行きは竜人の集落までが約3日、そこから白龍様の住処までも約3日であったので、だいたい半分の時間で帰れたことになる。

 これは、ただ帰るだけなら慎重に行動する必要が無いので、極力戦闘を避けて進めたことと、竜人集落に寄る必要が無かったためだろう。

 俺達が辿ったルートはだいたいこんな感じである。


挿絵(By みてみん)


 行きは白龍山の東側を大廻りするルートだったが、帰りは狩猟都市へと一直線に帰るルートを取っている。なお、帰り道のルートでもワイバーンを何度か見かけている。そのため、ワイバーンを狩りに来る際は、帰りに使ったルートで2日ほどかければ、狩場に着けるはずだ。


 ちなみに、帰り道では、障害となる最低限の魔物は倒している。この戦闘によりノルンのレベルが33に上がっているが、耐久値はまだまだ低く、これではノルンの期待に応えてやることは難しいだろう。残念なんて思ってはいない、ホントダヨ。


 おっと、こんなことを考えている場合では無い、前方には夕日で赤く染まる狩猟都市の外壁が近づいてきている。


「あれが普人族の街でござるか、立派な物でござるな~」

「ちょっと待ったイリス、この外套で身体を隠してから頼む!」

「むむ、やはり拙者の見た目では拙いのでござるか?」

「ああ、流石にその鱗が浮き出た肌は目立ちすぎる。悪いとは思うが隠してほしい」


 少々、心苦しくはあるが、変に悪目立ちして厄介ごとに巻き込まれるよりはマシだ、イリスには街に入る前に、フード付きの外套で素肌を出来るだけ隠してもらうようにする。

 ちなみに、スズの見た目は普人族と変わらないし、ノルンとマシロは耳が隠れるような帽子を被っている程度だ。普人族の街で暮らしてもらうのに、イリスには苦労を掛けることになってしまい、申し訳ない気持ちになる。


 イリスはこちらの思いを察してくれたのか、素直に外套を着てくれたので、そのまま狩猟都市に入る。イリスが初めてであったため入り口で多少手間取ったが、保証金を払い、俺の冒険者カードを見せ身分を保証する旨伝えると、どうにか通ることが出来た。


 街へと入った俺達は、まず借家へと向かった。長旅の疲れもあるし、いい加減、我慢も限界なのだ。


「皆、今回は疲れただろう、別名あるまではゆっくりと休んでいてくれ。俺は部屋で休むから、夕食は各自、自由に取ってくれ。あと、イリスの部屋はどうすっかな……」

「私がアスラの部屋に移るから、代わりにイリスとナオの部屋にすれば良いんだよ」


 とのスズの一声で、イリスが泊まる部屋と、俺のプライベートが無くなることが決定した。まあ、俺のプライベートが無いのは今更の話である。


 俺は夕食も取らずに洗い場で身体を清め、さっぱりとした身体で自室に引っ込む。自室のベッドに倒れこみ、布団の柔らかさを感じていると、ランドドラゴンとの激戦を生き延びれた事の実感が沸いてくる。


「よいしょっと」

「ん?」


 薄着の解放感に包まれながら、俺が自室のベッドで横になっていると、元気な声と共にお腹の上に僅かな重みを感じた。

 

「我慢してたんじゃない?」

「バレたか。でも良いのか、今日は寝かせないぜ?」

「いいよ、私もだし……我慢してたの」


 と言うわけで、狩猟都市へと付いた当日は、ギルドへの報告や夕食、他もろもろの全てを放り出し、長旅の疲れすら横に置いて、いろいろな事をしてスズとの時を過ごした。




 何時寝たのかはわからないが、翌朝、身体にだるさは残る物の気分はスッキリと起きることが出来た。寝る前に木窓の隙間から、朝日が差し込んで来ていたような気もする、ちょっと無茶しすぎたかもしれない……。


「朝だぞスズ、起きろー」

「ううん……もう無理~」


 スズの寝起きは悪くは無いはずだが、今日はちょっと起きそうにない……だいぶ無茶しすぎたかもしれないな。


「まあいいか、俺ももう一眠りと行くか」

「おきてマスター、もうおひる」


 俺が二度寝に移ろうとすると、何時の間に居たのかナオに起こされてしまった。


 にしても朝じゃなくて、昼になってたのか……ギルドへの報告もあるし、しょうがない起きるとするか。


「分かった起きるよ。もう少ししたらスズも起こしてあげてくれ」

「りょーかい」


 どこで覚えたのやら、ピシリと敬礼のポーズを取って了承するナオを置いて、1階のリビングに降りてゆったりと時間を過ごす。たまにはこうやって何もしないで時を過ごすのも悪くは無い。



 俺がリビングでまったり過ごしていると、ノルンが食堂のほうから現れ、お茶を入れてくれる。俺に気付いたのか、庭の方からはマシロがやって来て、俺の膝の上に陣取ってじゃれ付き始めた。


 ふっ、俺はもう全てを手に入れたと言っても過言ではないんじゃないか?


 と、そんな俺のパラダイス空間にイリスもやって来る。


「なっ、なっなんでござるかそれは! 奥方はスズ殿1人では……はっ、もしや拙者のことも!?」

「いや、それは無いから!」

「えっ、違うのでござるか?」

「うん、ないない」


 俺は「そうでござるか……」と、心なしか残念そうに去っていくイリスの背中を見送った。


「宜しかったのですか? 私達に気を遣う必要は無いんですよ」

「いや、そういう訳じゃない、俺の都合だよ」

「それなら良いのですが……では、私は食事の下ごしらえでもしてきますね。何か食べられますか?」

「ああ、何か軽いものを頼む」


 ノルンはそう言ってくれたが、イリスと男女の関係にならないことを決めたのは、本当に俺の都合だ。前世ではチーレム物の小説に憧れたものだが、実際になってみて俺には無理そうだと気づいたのである。


 スズとノルン、マシロは上手くやってくれているが、それは俺が何かをしたからと言うよりは、3人が各自の領分を守って俺を立ててくれているからに他ならない。俺の甲斐性的にも、これ以上の増員は厳しいし、正直、スズ1人でも俺は充分に幸せなのだ。

 それに、イリスには肉壁……おっと盾役を頼むため、必要以上に近づきたく無いという理由もある。俺だって愛する相手を最前線で敵の攻撃を受ける、一番危険な場所には置きたくは無い。


 まあ、イリスが俺のことを好きになるとは限らないから、俺の自意識過剰というものだろう。帰る道中聞いたところでは、イリスは26歳といい大人であるらしいから、きっと相手は自分で探すだろうよ。


 しばらくして、ノルンがワイルドボア肉入り野菜炒めを持ってきてくれた。相変わらずの肉料理だが、ワイルドボアは低レベルの魔物であるから軽いと言えば軽い。小腹を満たし、食欲を満たすと今度は眠くなって来る。



 俺が、リビングでマシロと一緒にゆったり微睡んでいると、スズが起きて来る頃には夕方になっていた。


 充分な睡眠を取って体力が回復したスズが、料理の腕を振るって作った夕食は、とても美味しい物であった。ただ焼いただけだと少々硬く、臭みもあったドレッドベアの肉も、スズに掛かれば臭み無く旨さが際立った、別物と言っていい逸品に変わる。

 ノルンが作った料理もなかなかに美味いのだが比ぶべくもない、やはり料理スキルの有無というのは馬鹿にできない物のようだ。


 可愛い女の子に、美味しい料理、まったく最高の一日だな。ギルド? あぁうん……明日でいいよね。


 久しぶりの家と言うことも有り、1日まったりと過ごしてしまった。まあ、明日からは頑張るから、今日のところはこのままゆっくり寝させてもらうとしよう。



 夕食後、部屋に戻り、スズと一緒に特にナニをする訳でも無く、べたべたと過ごしていると、部屋の扉をノックする音が聴こえてくる。


「アスラさん入っていいですか?」

「ノルンか、いいぞー」

「では失礼します……むむ、またそんなべたべたと……私へのあてつけですか?」


 スズとひっついたまま出迎えるのは、流石に無神経過ぎたか。


「いや、そんな事は無いんだがな」

「悔しかったら、ノルンももっと強くなるといいんだよ」


 スズよ、そういう挑発は勘弁してくれ……胃が痛くなる。


「それなんですが、今回の遠征でだいぶ強くなったと思うんですが、どうですか今夜あたり……」

 

 おぉう、嬉しいお誘いではあるが、ちゃんと確認してからじゃないと怪我させそうで怖い。ノルンのステータスはこうだ。


----------------

名前:ノルン

種族:混血種(樹人/普人)

モラル:105 ↑1up

レベル:33 ↑2up

筋力:39 (279) ↑2up

耐久:44 (314) ↑3up

敏捷:54 (386) ↑3up

器用:48 (343) ↑1up

精神:28 (200)

魔力:57 (407) ↑3up

通常スキル:体術Lv4 杖術Lv2 隠密Lv4 生活魔法Lv2 光魔法Lv4 風魔法Lv4 雷魔法Lv4 詠唱省略Lv4 肉体異常耐性Lv2 精神異常耐性Lv2 裁縫Lv2 異次元収納Lv2

固有スキル:真偽判定

ギフトスキル:アスラの加護

スキルポイント:10pt

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 確か俺の筋力値が補正込みで788だったから、ノルンの耐久値はその4割といったところか……確かに以前に比べて高くはなっているが、まだ少し怖い差だ。


「耐久値がもう1割ほど増えたらにしよう、済まないがあと1か2レベル上がるまで待ってほしい」

「あと1割ですか……それなら大丈夫だと思います。スズも良いですよね?」

「……しょうがないか約束だしね。でも、私の居ない所では駄目だよ」


 えーっと、俺の言い分は? まあ、良いんだけどさ……。


 どうやら、ノルンとの事は今夜で決まりらしい。スズが一緒なのは今更な話だが、かなり居心地が悪いのは変わらない。スズ的には、自分が見ていない所でされるよりは、自分の監視の上のほうがマシってことなのだろうか?


 今一、愛されているのか、大して愛されていないのか分からないが、これも所謂一つの愛の形と思っておくのが幸せだろう。



なんとか投下です、今回でシルバーランクになるはずだったんですが……あれ?

私の怠け癖が、主人公に移ってしまったようです。


8/14) 流石に色々と記述が雑すぎたため、狩猟都市到着~翌日辺りに加筆修正を実施(いつもの猫様、ご指摘ありがとうございました)



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