異世界の神と信者達
やはり太陽の男神とは、前世で俺の転生を斡旋してくれた太陽さんだった。
(お久しぶりです、太陽さん。いくつかお聞きしたいことが有るのですが、よろしいですか?)
(丁度いま暇だから、言ってみ)
(太陽さんに通じたってことは、エスト教って神様公認なんですか?)
まずこれは確認しないとマズいだろうと思ったことを聞く、もし神様公認ならうっかり敵に回したりしないよう、注意しないとならないだろう。
(いんや、神の名を騙ってるだけの団体だね。主神の名前も違うし、実在すんのは俺と冥府の女神くらいだ)
(そうですか、じゃぁ敵になっても神罰が下ったりとかはないと?)
(むしろ、滅ぼしちゃってもいいぞ。俺の名前が騙られてんのも、そっちの神の嫌がらせみたいなもんだし)
いきなり過激だな、この世界の神と仲悪いのかね。
(さすがにそれは、まずくないです? こっちの神様は困るんじゃ)
(変わんねーよ、俺達にとっちゃお前等なんて、ゲームの登場キャラみてーなもんだ。お前等だってキャラ育成に失敗したら、消して作り直したりするだろ)
ゲームの登場キャラね、それだけかけ離れた存在だってことかね。そういや転生時に内政チートやりすぎると、処分されるって注意されたっけ。世界がマズい方向に進むと、同じように処分されたりすんのかもな。
(エスト教は処分されると?)
(ああ、最近、調子に乗ってやりすぎてっからな。そのうち、使徒でも降ってくんじゃねーかな)
使徒が天使みたいなのなら、レベル上げれば何とかなりそうな気もするが、人型決戦兵器が必要な相手だったらどうしようもないな。俺も調子に乗らんように気を付けよう。
(天使みたいなやつだな、レベル90以上だから強いぞー。お前も使徒になりたきゃ、レベル90以上に上げて神に挑みな、負ければ使徒になれっぞ)
(勝ったら神にでもなれるんですか?)
(そうだ、まぁ滅多に勝つ奴なんていねーがな、神殺しはそんなに甘いもんじゃねぇ)
訊く前に答えてくれるって、やっぱり考えてること読まれてんのかね。神殺しとか厨二心が疼くけど、まだまだ先の話だし、君子危うきに近寄らずだ。
(それより、まずはエスト教ですね。そんなにひどいんですか?)
(そこの神父は良い奴だから、こうして俺とのパスを繋いでるが、他の奴は酷いのが多いな。洗礼については知ってるか? その国に普人族以外も1割以上いるが、みんな奴隷みたいな扱いだぜ。洗礼じゃなくて、洗脳とか調教だよな)
そんなことだろうと思っていたが、やっぱりか。だからって一国を敵に回すとか、無謀でしかないよな。
(確かに酷いもんですね、ですが私に出来ることも少なそうですし、使徒様に期待するとします)
(いいのかい? 使徒はその国の人なら見境無く殺すぜ、根こそぎ処分が基本だからな)
うへ、流石にそれは寝ざめが悪いな、聞かなきゃよかったよ。
(むぅ、何とかならないんですか?)
(そうだなぁ、その国の力を削ぐのが良いかもな。調子に乗る原因を排除するってこった)
(その原因というのは?)
(白龍山に封印されてる白龍だ。300年ほど前にその国の奴が、気の良い白龍を騙くらかして封印したんだ。それ以来、その国のために白龍の魔力が利用されてんだよ)
白龍ね、前あった黒龍みたいなもんか。関わりたくねぇなぁ……気の良い龍って言っても、封印されて恨んでるだろうしなぁ。
(その白龍の封印を解けと?)
(そこまでは言ってねぇがな、機会があったら白龍に協力でもしてやりな)
(まぁ、機会があったらですね。それにしても魔力を利用なんてできるんですね)
(ああ、魔力濃度が高い場所で生活すっと、パラメータの魔力値が上がりやすいからよ、白龍の魔力がその国に行き渡るようになってんだ。まぁ封印の補強だけが仕来りとして残ってるくらいで、その仕組みも忘れられちまってるからよ、白龍の封印にたいした護衛も付いてねーだろうさ)
護衛が甘いってのなら、やってもいいかなぁ。仲間に異種族が多い俺にとって、この国の在り方は問題だ。流石に根こそぎ滅ぼされるのは可哀そうだが、力を削ぐくらいはしといたほうがいいだろう。
(他に何かあっか? あと一つくらいなら聞いてやっぞ)
(そうですね、ステータスのモラル値について聞いていいですか?)
一度死んでる俺としては、死んだ後がある事を知っている、今世でもモラルがマイナスにならないようにしたいからな。
(モラル値か、わかってっとは思うがマイナスになると地獄、魂を粉砕して作り直しだ。それが嫌ならマイナスにならねーように気を付けな。まぁ種族が違う相手への悪事は、減少量が5分の1になるから、やりすぎなきゃ大丈夫だとは思うけどよ)
(へー、5分の1になるんですね。それじゃ領主の時、60くらい減ってたのもそのせいですか?)
(正しくは領主で60減って、護衛で3増えてるぞ。マイナス300を下回る奴を殺すと、相手のモラル値の100分の1だけ上昇する)
異種族だと減少量が5分の1か、争わせようとでもしてんのかね? それに人殺してモラル増えるとか、人殺しを推奨されているようで、なんか気分悪いな。
(減少量が低いのは、慈悲であり試練でもあるってとこか。人殺しに関しちゃ今更だろ、前世の神話でも神罰で人が死ぬ話はよくあるだろ? 神は人を裁いてもいいのに、人が人を裁いちゃいけないなんて、神の傲慢だろうさ)
いろいろ言いたいこともあるだろうが、人の命がどうだとかは今は置いておいて、話を聞くことに集中した。他にもモラル値について聞いたところ、まとめると次の通りだった。
・異種族相手だと減少量が5分の1
・-300以下の相手を殺害すると、相手のモラル値の100分の1上昇
・-299~-100の相手だと、モラル値の変動無し
・-99~99の相手だと、モラル値が200減少
・100~299の相手だと、モラル値が300減少
・300以上の相手だと、モラル値が400減少
・戦争時は、名乗りの儀式をすることでモラル値の増減無し
・軽犯罪等でも減少するが、詳細は省く
・善良に生活しているだけで、少しずつ上昇する
・多くの人から感謝されている場合、上昇量が増える
・懺悔して正当性が認められると、モラルの減少が取り消される
ざっとこんなものである、俺の場合5分の1になるが、1人殺すと40~80は減少する。好き勝手やると俺のモラル値なんて、すぐに吹き飛ぶだろう。
大きな街には懺悔用の神聖な石があるらしいが、教会が白龍山でそれを発掘して広め、信仰を得るために利用しているらしい。懺悔するにしても、どの程度の理由だと、正当性が認められるかもわからんし、出来るだけ無茶はしないようにしないとならない。
(おっとそろそろ合コンの時間だな、元気でなアスラ。あと、もうちょい胸のあるシスターにしてくれと、神父に伝言を頼む。じゃあな)
(太陽さんありがとうございました、健闘を祈ってます)
そう言って別れると、何らかの繋がりが切れた気がした。長い時間跪いていたせいで痺れた足に、力を入れて立ち上がると、ノルンさんが冗談交じりに話しかけてきた。
「ずいぶんと長い時間、祈りを奉げていたようですが、神様とお話でもされてましたか?」
「まぁそんなとこです」
俺が肯定すると、ノルンさんは驚愕に目を見開きにじり寄ってくる。近づいて見るとわかるが、ノルンさんは意外に小さい、頭身が高いので遠目には背が高く見えるのだが、実際には155cmくらいだろう。背が低いのに頭身が高いので、身体の各パーツが小さく、より一層細く見えた。
段々と近づいてくるノルンさんに一種の恐怖を覚える。押しとどめようにも、うっかり握っただけでポッキリと骨が折れたりするんじゃないか?
「今のは冗談ですよ、不謹慎なことを言ってすみません」
「嘘ですね、誤魔化さないで答えてください。あなたは何者ですか?」
うっかりしていた、この人、真偽判定とかいうスキルもってたんだったか。太陽さんと話してたことを肯定したのが真実で、冗談だといったのが嘘だとバレたのか。神と話をしてたなんて、ほんとに何者だよって話だよな。
ここで迂闊な回答をすると、神の御使いとか言って祭り上げられたリ、妄言を吐く異常者にされるかもしれない。俺が回答に迷っていると、教会の入り口が乱暴に開かれる音が聞こえた。
「相変わらずのボロ屋だ、これなら犬小屋のがマシだな……。ニコラス! わしが直々に来てやったぞ。さっさと出迎えんか!」
振り向くとそこには、白い布を巻いた巨大な肉塊が立っていた。周りには護衛と思われる騎士が4人ほど居るので、それなりに高位な男なのだろう。
その男は、悪い宗教家のイメージをギュッと固めて作ったような奴だ。これからの展開は、どうせ碌なもんじゃないだろうが、ノルンさんの追及を誤魔化せるだろうことだけは感謝してもいい。
何はともあれ、目立たないようにしよう。俺はスズ達を連れて、こっそりと教会の隅に身を寄せることにした。
人の命に関してはデリケートな話で、少し迷いましたが当初の設定通り書きました。
作者は死刑肯定派のため今回書いたような設定となりますが、この世界ではこういう設定なんだなぁという程度にしておいてほしいです。
人の命に関しては、議論してもきりがないですからね。




