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教会の主

 彼女は端的に言ってエルフであった。よくよく見ると彼女の顔は整っているが、頬はこけており、服の袖から除く手首も細く骨ばっている。きっと肋骨も浮き出ているだろうから、良い洗濯板になることだろう。


「あの……見ましたか?」


 慌てた様子でベールを被り直したエルフちゃん(仮)が話しかけてくる。何を見たのか聞かれているのかと言えば、耳のことだろうな。鑑定して見れば何かわかるかもしれない。


----------------

名前:ノルン

種族:混血種(樹人/普人)

モラル:84

レベル:4

筋力:26 (30)

耐久:28 (32)

敏捷:35 (41)

器用:41 (47)

精神:26 (30)

魔力:31 (36)

通常スキル:杖術Lv1 生活魔法Lv2 光魔法Lv2

固有スキル:真偽判定

----------------


 おうふ、混血種だったのか。そういえば耳も人と比べれば長いって程度だし、痩せてるのはこの所為だろうな。ちなみに種族は次の通りだ。


----------------

種族:混血種(樹人/普人)

基礎寿命上限:100

基礎パラメータ上限:筋力(85) 耐久(85) 敏捷(130) 器用(110) 精神(110) 魔力(140)

説明:樹人族と普人族から生まれた混血種。混血種の特徴として基礎パラメータが高い代わりに、成長が遅く、成長には多量の栄養を要する。また、繁殖力が低く、滅多に子供ができることは無い。

----------------


 寿命が長く、パラメータ上限は魔法性能寄りで、説明を見る限り、やはり燃費は悪そうだ。これ以上、腹ペコ魔人が増えるのも困るし、ここは見なかったことにする。真偽判定なんてスキル持ってるみたいだし、誤魔化すにしても嘘はダメだから、話を逸らすことにしよう。


「顔なら見たぞ。その顔だと男達がほおっておかないだろ?」

「そんな、私なんて骨と皮ばかりで胸だって……って、そうでは無くてですね」


 少し照れながら自虐するノルンさんだが、すぐに正気に戻って問い詰めようとする。どうやらこの程度では誤魔化せないようなので、俺は捨身の策を敢行する。


「そんなに悲観しなくていいんだぞ、俺の故郷には『貧乳は希少価値だ』という格言があってだな。女性の胸には等しく価値があり、それぞれの素晴らしさがあるんだよ!」


 少々わざとらしくだが俺が力説すると、皆の俺に向ける視線が冷たいものに変わっていくのを感じる。面倒事に関わらなくて済むなら、これも甘んじて受けようじゃないか。白けた空気の中、上着の袖を引っ張られる感覚に振り返ると、スズが真剣な顔で訊いてくる。


「それってアスラは、小さくても良いってこと?」

「ああ、もちろんだ。俺は博愛主義者だからな」

「そっかー、よかったぁ……えへへ」


 スズが反応するのは想定外だが、喜んでくれているようで良かったよ。それにしても胸のことを気にしていたとは、スズも女の子だったんだな。

 俺の主義として、あくまで個人的な考えだが、小は愛でるもの、中は揉むもので、大は埋もれるものだと考えている。ともあれ男としては、一度くらいは埋もれてみたいものである。


 スズとの話が終わると、平静を取り戻したノルンさんからの突っ込みが入る。


「話が終わったのでしたら、早く帰ってくださいね、変態さん」

「そういうわけにもいきません。治療を依頼したいのですが」

「変態さんに掛ける魔法はありません、変態は治療できませんので」


 口元だけは笑みの形だが、目が笑っていない。失敗したな、深い仲の相手なら軽口で済むことでも、初対面の人にはセクハラでしかないからな。軽口も相手を見て言わんとな。


「気を悪くしたのなら謝ります。申し訳ありませんでした」

「仕方ありませんね、謝罪に嘘は無さそうですし、許してあげます。何の治療をご希望ですか?」

「麻痺を直してほしくて、『リカバー』を使える方はいますか?」

「はい、祖父を呼んできますので、しばらくお待ちくださいな」


 しばらく待つと、教会の奥からよぼよぼの爺さんが、ノルンさんに付き添われてやって来た。爺さんの後ろから小っちゃい女の子も付いてくる。爺さんは見た目こそよぼよぼなのに、足元はしっかりしていた。


「わしはここの神父でニコラス、この子はシンシアじゃ、ノルンはもう挨拶したかの?」

「いえ、改めまして私はノルンと申します。変態さんのお名前を聞いてもいいですか?」

「私はアスラと言います、変態さんはそろそろ勘弁してください」


 爺さんがニコラスさんで、幼女がシンシアちゃんというらしい。シンシアちゃんはニコラスさんの後ろから一瞬現れて、ぺこりとお辞儀をすると直ぐに隠れてしまう、やはり幼女はかわええのぉ。一応『リカバー』を使える人がどの程度の強さなのかと、ニコラスさんを鑑定しておく。


----------------

名前:ニコラス

種族:普人族

モラル:873

レベル:39

筋力:19 (121)

耐久:20 (128)

敏捷:17 (109)

器用:39 (249)

精神:64 (409)

魔力:56 (358)

通常スキル:杖術Lv3 生活魔法Lv2 光魔法Lv5 人物鑑定Lv4

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 やはり見た目通り、身体能力は低そうだ。精神値が高いのを見ると、精神は年齢に比例して高いのかもしれんね。


「変態とな、おんし何をしたんじゃ!? 事と次第によっては叩きだすぞい!」

「ご、誤解ですよ。俺は小さな胸の素晴らしさを語っただけで、他にはなにも……」

「何を愚かなことを、胸は大きくてナンボじゃろう。我らが父、太陽の男神様もこう仰っておられる『女性の胸は包容力の象徴、大きければ大きいほど良い』とな」


 太陽の男神、何を信者に教えてやがる……、それよりノルンさんからの冷めた視線が痛い。


「あー、その話は止めておきましょうか、神父様もお忙しいでしょうし」

「う、うむ、そうじゃの。ところで治療が必要なのはどの子かの?」


 俺がアイコンタクトで、ノルンさんの機嫌が悪くならないよう、ニコラスさんに提案すると直ぐに承諾してくれた。俺はスズの両肩に手をやって前に出し、ニコラスさんに紹介する。


「この子はスズと言います。今は一時的に動けてますが、重い麻痺に掛かっていまして『リカバー』をお願いしたいのです」

「ふむ、いいじゃろう。そこに座っておくれ」


 スズを椅子に座らせると、ニコラスさんも対面に座り、『リカバー』の魔法を掛けてくれる。


「これで大丈夫じゃろう、身体に違和感は無いかの?」

「はい、ちゃんと動きます。神父様ありがとうございました」


 スズが御礼を言って立ち上がり、俺は鑑定を使ってスズの麻痺が直っていることを確認した。後は報酬も支払わんとな。


「御礼はいかほどお支払いすればいいでしょうか?」

「2人も連れて、お主も食費が大変じゃろう? 気持ち程度でいいぞい」


 む、2人もって……ああ、スズとマシロを鑑定されたのか。ニコラスさんも苦労してるんだろう、ノルンさんもたくさん食べるんだろうね。


「それはいけません、御爺様。変態さんから相場分はいただくべきです」

「そうですね、資金に多少余裕はありますので、これは私の気持ちです」


 ノルンさんはしっかりしてるな。お金は大切だからね、こういう人は好きよ。俺はノルンさんに相場が金貨1枚のところを、金貨2枚支払った。ノルンさんは少し驚いた表情をしたが、受け取ってくれる。


「お気持ちありがとうございます。アスラさん、また困ったことが有りましたら、いらしてくださいね」


 呼び方まで変わって……まぁ良いんだけどさ。ちょっと教会である人に聞きたいことが有るから、ついでにお願いしてみるかな。


「いえいえ、代わりと言ってはなんですが、少しお祈りしていっていいですか?」

「もちろんですよ、ゆっくりしていってくださいね」


 ノルンさんの対応が優しい、やはり世の中、金だよな。まぁ客に笑顔で対応するのも、仕事の内なのかも、シスターはある意味接客業と言ってもいいかもしれんね。


 ノルンさんの許可を得た俺は、祭壇の前で跪き、太陽の男神に呼びかけを行う。


(太陽さん、太陽さん、聞こえますか? おーい、太陽さ~ん。早く返事してくれ、アポロン)

(おい! その名前は呼ぶなって言わなかったか!? なんか用かよ、アスラ)



 やはり、太陽の男神は閻魔太陽さんだった。あのチャラ神が巨乳派だとかどうでもいいこと知っちまったよ。俺はこの後、もっと役に立つことを教えてもらおうと思っている。



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