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クレアちゃんいろいろ頑張る

投稿遅れまして申し訳ありません。

主人公瀕死のため、クレア視点での回になります。

 唐突ですが、私ことクレアは今、途方に暮れてます。私が言った不用意な一言が原因とはいえ、これはないんじゃないかなぁと思います。この苦境を上手く乗り切らないと、毎日の食事からお肉が無くなることになりかねません。これからの私の行動は責任重大です。


 まず、肉男爵発言により、隣で完全に固まっているのがアスラさんです。肉男爵っていうのはマリー姉さんに貢いでいる男達に孤児院の仲間が付けたあだ名の一つです。他にも野菜男、パンおじさん、塩太郎とかもいるけど、お肉を貢いでくれる人は別格なのです。

 でも男爵と中途半端に偉い称号なのは、アスラさんの地味な外見が関係しています。あの外見で王や王子ってのはないから、男爵くらいが丁度いいだろうってのがほんとのところです。


 こんなことお兄さんには絶対に言えない、お兄さんって意外に打たれ弱いからなー。


 次に、問題発言をしたにも関わらず、いつも通りマイペースなのがスズちゃんです。スズちゃんが孤児院に来てからよく一緒に居る私でも、未だに何を考えているのか分からないことが多いです。記憶が無いせいなのか、たまに突拍子もないことを仕出かすので油断ができません。


 この子、自分が何をやらかしたのか分かってないんだろうなぁ。まずはスズちゃんがどういうつもりで、お兄さんに話しちゃったのかを確認だ。


「スズちゃん、今のは言っちゃダメなんじゃないかなぁ?」

「大丈夫……アスラはわたしにメロメロ……シスターにも負けてない」


 どうやら、お兄さんへの暴露は意図的だったようです。マリー姉さんがいろんな人に貢がせてるのが、孤児院のためってことは、孤児院のみんなが知っていることだ。それでもマリー姉さんに対抗するってことはよほどお兄さんを気に入ったのかな? それに、私とスズちゃんはお兄さんと仲が良いけど、メロメロってのとは何か違う気がするんだけどなぁ。


「えっと、そうなの……かな?」

「そう、食べ物くれるし……指輪もくれた……間違いない」


 あぁ、やっぱり誤解があるみたい。お兄さんとしては子供を可愛がってるつもりだろうから、スズちゃんの勘違いだと思う。まぁ指輪なんて簡単にプレゼントしちゃうお兄さんが一番悪いんだから、今回のことは完全にお兄さんの自業自得だよね。うっかり言葉を滑らせただけの私は悪くない、無罪確定だ!


「かえる……僕……おうちかえる」


 私が責任逃れの自己弁護をしてると、お兄さんの呟きが聞こえてくる。


 だめだ、ショックのあまり子供に戻っちゃってる。お兄さんがやっと動き出したかと思ったら、喋り方が子供みたいになっていた。早く落ち着けるところに移動しないと。


「とっ、とりあえず、お兄さんを宿屋に連れてってあげよー。スズちゃん場所はわかる?」

「わかった……こっち……付いてきて」


 この際、なんでお兄さんの宿屋を知っているのかは置いておく。スズちゃんの先導の元、お兄さんの手を取り宿屋に向かう。お兄さんは逆らう気力もないのか素直に付いてくる、なんか少し可愛いかもしれない。



 宿屋に着くと、女将さんらしき人が冗談交じりに話しかけてきた。


「あら、アスラさんモテモテですねぇ、こんな時間から3人でお楽しみですか?」

「うん……これからみんなで楽しむ……部屋……は?」

「!? 衛兵さんを呼んでこなきゃ!」


 冗談で聞いたつもりがスズちゃんの思わぬ返答に、女将さんが慌て始めた。これを放っておくと、お兄さんが不名誉な罪で捕まってしまいます。スズちゃん、お願いだから考えて喋ってね!


「あの! 違うんです。この子はあまりそういうこと分かってなくて、ただお兄さんを送ってきただけなんです」

「ほんとにそうなの? 何もされてないのよね?」


 私が説明をすると、女将さんが親切にも聞いてくる。


「今日は……お肉……食べさせられた……おっきくて美味しかったよ?」

「えっと、串焼きのことです。あはは、いつもご馳走になってるんですよー」


 スズちゃんがまた誤解されそうな事を言うから、私もフォローするのに必死だ。ほんとにわざとじゃないんだよね、スズちゃん? もっと空気読もうよ!


「それならいいんだけど……部屋に案内するわ、付いてきて」


 女将さんに連れられて、お兄さんの部屋に入った後、お兄さんは部屋の隅っこで両膝を抱えて座っている。どうしよう、これ……完全に参っちゃってるよね。


「スズちゃん、これどう見ても大丈夫じゃないよね?」

「うん……想定外……むーぅ」


 スズちゃんが腕を組んで考え出すが、何も思いつかないようだ。やっぱり私が何とかしないとだめなのかなぁ? 私はスズちゃんのお姉さんだから、頑張らないとと思って呟く。


「しょうがない、これは、私が一肌脱ぐしかないかな」

「わかった……一肌脱ぐ」


 私の呟きを聞いたスズちゃんが、おもむろに服を脱ぎだす。あまりの出来事に私が固まってる内に、スズちゃんが裸になり、お兄さんに近づいていく。スズちゃんってこんな事する子じゃないんだけどね……何がそうさせてるのやら。


「えっ、えっ、なにこの状況!? ちょっ、スズ、服着て!」


 あ、お兄さんが戻ってきた。まさかスズちゃんみたいな小っちゃい子の裸に反応して戻ってくるとは、これからはお兄さんのことを、乙女として警戒しないと駄目そうだね。裸のスズちゃんを前に、両手で顔を隠しているけど、指の隙間から見てるのもろバレですよお兄さん。


「お兄さん、ここまでのこと覚えてる? スズちゃんは早く服を着て!」

「えーっと、クレアとスズが部屋まで連れてきてくれたんだよね? ありがとう」


 スズちゃんがごそごそと服を着ている間、お兄さんと部屋に来るまでのことについて話す。


「いえ、それでシスターマリーのことは気づいちゃったって思っていいの?」

「あー、うん。俺が誘惑されて肉を貢いでたってことになるのかな?」


 やっぱり気づいたみたい。お兄さんは顔は地味だし、気も効かないが、結構察しはいい。


「シスターマリーのことは恨まないでほしいの、全部私達のためにしてることだから」

「……恨まないよ。正直最初はショックだったけど、よく考えると俺も損はしてないからさ」


 騙されたって怒る人も多いのに、やっぱりお兄さんは良い人だ。こういうところは私も好きだ、甲斐性もあるし、穏やかで優しい。地味な外見に目をつぶれば、なかなかの好物件だよね。お肉のためにもがんばって引き止めるとしますか。


「やっぱり、俺みたいな男を好きになるわけないんだよなぁ」

「そんなことない! お兄さんは凄くいい人だよ」

「いい人かぁ……やっぱりいい人どまりなんだよなぁ」


 褒めたつもりなのにお兄さんが激しく落ち込んでしまった。いい人って褒め言葉だよね? うーん、もう正面突破しないと駄目なのかなぁ?


「お兄さん、私じゃだめかな? 実は私、お兄さんがすっ「だめ!!」」

「お姉ちゃんもだめ! アスラはわたしのなの!」


 私がお兄さんを誘惑していると、服を着終わったスズちゃんに止められてしまった。スズちゃんが本気なら私は引こうと思う。ちょっと惜しいけど、やっぱり顔の良い相手のほうがいいしね。


「えーっと、クレア、スズ? 気を遣わなくてもいいんだぞ」

「アスラはわたしと結婚すればいいと思うの……そして毎日、私にお肉を食べさせるといいと思うの」


 あー、やっぱりお肉なのね、お肉が目的なのねスズちゃん、お姉ちゃんはあなたの将来が心配です。


「お肉か、まーありがとうな。じゃぁ、スズが大人になっても好きでいてくれたら結婚しようか?」

「うん……約束……、やぶったら……刺すから」

「あっ、ああ、約束だ」


 軽い気持ちでその場しのぎの答えをしたお兄さんは、スズちゃんからの思わぬ本気の回答にドン引きしている。お姉ちゃんも正直、今のスズちゃんは怖いです。

 恋って人をここまで変えるものなのね。まぁ、お兄さんに関係したときだけみたいだから問題無い。他人事だけどお兄さんがんばれー。


「そうだ、これからも孤児院には通おうかと思うんだけど、いいかな?」

「もちろんです!」

「毎日……きてね」

「良かった、やっぱり皆でご飯食べたほうが美味しいからな」


 よっし、お肉確保完了です。スズちゃんの思わぬ行動に、引っ掻き回された気はするけど、目的は無事に達成できた。私頑張った、私偉い。


 無事?に話がまとまった私達はこの後、孤児院に向かっていつもの通り、お肉がたくさん入った食事を食べた。お兄さんとマリーお姉さんは食事の後に話をしていたが、どうやら和解したみたい。素のマリーお姉さんはさっぱりとした姉御な人だから心配はしてなかったけど、これで安心ね。


 ちなみにスズちゃんは、マリーお姉さんと話している間もお兄さんの横にずっと付いていて、たまに眼がおっかない事になっていた。マリーお姉さんも軽く引いてたよ……。



 何はともあれ、お兄さんとの距離感にはこれから気を付けよう。妹分に刺されるとか洒落にならないしね!


お読みいただきありがとうございました。

女の子視点で書くのは、気恥ずかしいものですね。

書きなれないもので所々、おっさん視点になってしまっていたら済みません。

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