孤児院の子供達との交流
2/10 クレアのステータスを修正しました。
マリーさんとの狩を終えて街に着いた俺は、まず冒険者ギルドで討伐依頼の報酬を受け取ると、マリーさんに連れられて孤児院に向かった。
孤児院は街の北東側に行った住宅街のはずれにあり、かなり大きな建物であった。ここなら俺の宿屋からも近い、偶然近くに寄ったときにマリーさんに挨拶するのも不自然ではないだろう。あくまで偶然なのであり、ストーカーというわけではないのだ。
マリーさんに付いて孤児院の中の奥の部屋に入ると、中には人の好さそうな中年の男性がいた。
「ただいま戻りました、院長先生」
「おかえり、マリー君、無事なようで何よりだ。ところで、そちらの方はどなたかな?」
「アスラと申します。今日はマリーさんにたいへんお世話になりました」
「アスラさんですね、マーサさんからお話は聞いていますよ。こちらこそマリーがお世話になりまして。私はここの院長でタイラスと申します」
孤児院の院長さんが軽く頭を下げて自己紹介してくれる。タイラスさんは、髪は白く顔のしわは目立つが、若々しさに溢れており、服の上からでも肉体が鍛えられていることが見て取れる。興味本位で鑑定してみると次の通りであった。
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名前:タイラス
種族:普人族
モラル:452
レベル:38
筋力:43 (392)
耐久:41 (374)
敏捷:29 (265)
器用:48 (438)
精神:45 (410)
魔力:37 (338)
通常スキル:体術Lv3 槍術Lv4 水魔法Lv3 土魔法Lv3 裁縫Lv3 異次元収納Lv3 生活魔法Lv2
固有スキル:なし
ギフトスキル:なし
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モラルも高いしパラメータもバランス良く高水準だ、何でこの人こんなところで院長とかやってんだろうか……あ、右手の杖に体重をかけてるから、右足が悪いみたいだ、敏捷が低いのはこのせいか。
「それでですね、院長先生。アスラさんに狩っていただいた魔獣を、ここで解体して直接お店に卸そうという話になりまして」
「なるほど、それは助かりますが、アスラさんはそれでいいので? ギルドに持っていけばランクアップの評価にも繋がりますが」
ふむ、ギルドに持っていってランクアップ評価を稼ぐか、ここで解体して金を多く稼ぐかってことだな、まぁ討伐依頼だけでも充分こなしてる現状は、当初の予定通り、ここで解体して金にした方がいいよね。
「はい、ランクアップは急いでませんので。それで解体や売却の手数料はいかほどお支払いすればいいでしょうか?」
その後、タイラスさん、マリーさんに魔獣の売り値を確認し、手数料について話し合った。ギルドでは銀貨3枚にしかならないワイルドボアも、自前で解体し店に直接卸すと、銀貨6枚にはなるらしい。ギルドで銀貨2枚のホーンディアも、同様に銀貨4枚以上にはなるとのことだ。
最初、手数料は売上の1割でいいと言ってくれたのだが、さすがにそれだとこちらが申し訳ないので1体あたり銀貨1枚でお願いすることにした。このほうが分かりやすいしね。
今日はワイルドボア2体とホーンディア1体で銀貨13枚のもうけとなる。ギルドに持って行った場合は銀貨8枚だから、かなりのお得だ。孤児院側も銀貨3枚の収入を得られ、これぞWin-Winの関係ってやつだな、これからもいい関係でありたいと思うし、マリーさんとはもっといい関係になりたいものだ。
「それではアスラさん、話がまとまった処で解体しにいきましょうか」
マリーさんに連れられて、院長の部屋を出る。外に出る途中でマリーさんが他の部屋に寄って、誰かに呼びかけた。
「クレア! スズ! こっちへいらっしゃい」
相手は女の子だろうか? マリーさんが呼びかけてしばらくすると、部屋の中から二人の女の子がとことこと出てきた。
「シスターマリーおかえりなさ~い、その様子だと獲物は仕留められたんだね!」
「おかえりなさい……おにく……とれた?」
赤髪黒目の元気な12歳くらいの子と、その後ろに隠れた黒髪赤目の10歳くらいの子だった。
「クレア、スズ、お客様の前です。まずはご挨拶なさい」
「私はクレアっていいます! これからよろしくね、お兄さん」
「スズっていうの……よろしくね?」
赤髪の子がクレアで、黒髪の子がスズというらしい。クレアちゃんのほうは少女らしい丸みを帯びた身体つきで可愛いらしいが、スズちゃんのほうは病的なほどに痩せていてちょっと怖い。
「クレアちゃんとスズちゃんだね、俺はアスラっていうんだ、これからよろしくね。」
「ちゃん付けキモイ……スズでいい」
「だね~、私もクレアでいいよ!」
「じゃぁ、スズ、クレア、改めてよろしくな」
ぐぅ、スズちゃんが意外に毒舌だ、そして同意するクレアちゃんも何気にヒドイ。まぁ、キモイとか言われ慣れてるけどさ、だからって心が痛まないわけじゃないんだぞ。
「自己紹介も終わった処で、外で解体始めちゃいましょ」
「解体ってこの子たちがするんですか?」
「こう見えて、クレアは解体スキル持ちですよ。スズはけっこう力持ちだから補助ね」
へー、そうなんだ、二人とも鑑定してみるか。
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名前:クレア
種族:普人族
モラル:2
レベル:2
筋力:21 (22)
耐久:22 (23)
敏捷:24 (25)
器用:27 (28)
精神:12 (13)
魔力: 6 ( 6)
通常スキル:解体Lv2 小剣術Lv1
固有スキル:天才
ギフトスキル:小剣の才
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名称:人族の子供
説明:レベル1になっていない子供
レベル1になるまでは名前が不確定で鑑定不可能
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ん? クレアのほうは観れたけど、スズのほうは「人族の子供」とだけ出たな。説明を見る限りでは、レベル1からしか鑑定できないみたいだ。もしかしたらある程度成長するまでレベルが上がらないのかもしれないな。後でマーサさんの処で聞いてみよう。(後から聞いた話では、10~12歳くらいでレベル1になる時に名前や固有スキルが決定するため、それまでは鑑定不可能だそうだ。)
ちなみにクレアの、【天才】は取得経験値2倍で、【小剣の才】は小剣術Lv+1の効果だそうだ、ギフトスキル持ってる子は初めて見たな。まぁ、解体Lv2もあるみたいだし任せてみるか。
「なるほど、それならお手並み拝見といこうか」
「まかせてー。ささっと済ませちゃうよー」
そう言ってクレアが元気に外に駆けていく。スズもその後ろをとことこ付いていった。
「元気な子たちですね。それにしてもスズのほうはだいぶ痩せてますが、病気かなにかで?」
「それがよく分からないんですよね。むしろ他の子よりたくさん食べてますし、病気ってわけでもなさそうなんですが、何故か痩せたままなんです」
「そうなんですか、不思議ですね……」
「そうなんですよ。あの子もここに拾われた1年前までの記憶が無いみたいで、自分のことでも分からないみたいですし、なんとかしてあげたいとは思うんですけど」
マリーさんにスズの事を訊くと、記憶喪失な上に謎な体質を抱えてるみたいだ。判官びいきな日本人の血が騒ぐ、スズには優しくしてあげようと思う。またキモイとか言われるかもしれないが……。
マリーと一緒に外に出ると、孤児院の庭で、解体用の鉈を持ったクレアとスズが待っていた。
鉈を片手に立つ、可愛いらしい少女と病的な少女、軽くホラーである。マリーさんが今日狩ったワイルドボアを一匹、異次元収納から取り出すと、喜々として解体に取り掛かる。
「おっにく、おっにく!」
「おにく……おにく……」
クレアとスズは、手や顔を血塗れにしながら、手慣れた手つきで解体を進めていく、正直ドン引きである。これ、肉を全部売っちゃったら、俺刺されるんじゃね? 元からお土産にいくらか渡す気だったけど、怖すぎるから多めにあげとこう。
「マリーさん、ワイルドボアの肉は20kgほどは残してください。お近づきの印にお渡ししますので、今晩のおかずにでもしてください」
「そんなたくさん、悪いですよ。さすがに頂けません」
マリーさんは申し訳なさそうに答える。解体していたクレアとスズが、手を止めて訴えるようにジッとこっちを見ている。
わかってるよ、何とか説得するさ。うーん、この手で行くか。
「じゃぁ、食材を提供する代わりに、私の食事もついでに作ってもらえませんか?」
「うーん、それでしたら有り難く頂きます。がんばって料理しますので楽しみにしてくださいね!」
気合いを入れて料理を頑張ろうとしてくれるマリーさんの仕草は、とても可愛かった。クレアとスズも満足したように頷き、解体作業を再開する。その後、3匹分の解体が終わるころには日が傾き始めていた。
「今日はもう遅いですし、売却は明日でいいですよね? 明日も雇って頂けるなら、その時お渡ししますので」
「はい、明日で大丈夫です。明日もよろしくお願いします」
うっし、明日のデート……いやパーティも決定だ。最近ついてて怖いくらいだぜ。
「それじゃ、これから食事の準備をしてきますので暫くお待ちくださいね」
そう言うとマリーさんは、解体済みの毛皮や肉をスキルで収納してから、孤児院の中に入っていった。
暫く待つのか、何してりゃいいんだ……?
「お兄さん、お兄さん。さっきはうまくやりましたね」
「いい仕事でした……褒めてあげます」
手持ち無沙汰にしていると、クレアとスズに話しかけられた。肉の件だろう、なんか上から目線で褒められた感じだが、生意気盛りなこの年の子なら仕方ないだろう。そんなことより血塗れでニッコリ笑う二人がおっかない。これさっさと何とかしよう。
「2人とも血を洗い流すから手を出してね」
【洗浄】魔法で血を洗い流してきれいにする。
うん、きれいきれい。スズはちょっと怖いが、肉をいっぱい食わせれば、そのうちマシになるだろう。
その後は食堂に移動して、クレアとスズと雑談をしながら食事ができるのを待った。
マリーさんの料理が終わり、ワイルドボアのステーキが食卓に並ぶと、左隣のクレアはフォークを片手に「おっにくー、おっにくー。」と騒ぎ、右隣りのスズは黙って手を合わせ、ステーキを拝んでいる。肉好きすぎるだろうこいつら。そして、俺の前のステーキは明らかに大きい、これ食いきれないって絶対。
タイラスさんとマリーさん、他の子たちも20人ほど食卓についている。マリーさん以外にも1人、シスターっぽい人がいる。建物が大きいことから予想はしていたが、結構な規模の施設である。全員が食卓に着くと、タイラスさんが食事の始まりを告げる。
「さて、それでは食事にしますが、まずは今日の食材を提供していただいた、アスラさんに感謝を」
「「「「アスラさん、ありがとうございますっ!」」」」
おぉ、なんかこっぱずかしいなこれ。でも、悪くない気分だ。
「それでは、我らが神と精霊に感謝して、いただきます」
「「「「いただきますっ!」」」」
おっ、この世界でもいただきますはあるんだな、1人じゃ言わないから、久しぶりに言ったなこれ。
いただきますが終わると、全員がすごい勢いで食事を始める。俺も食事を始めたが、かなり美味であった。それでもやはり量が多すぎる。半分くらいで満腹になってしまい、食休みしているとマリーさんに話しかけられた。
「どうですか、お味は?」
「すごく美味しいです。ですがさすがに量が多くて……」
「アスラさんってすごく強いですし、レベルが高い人は良く食べるので多めにしたんですが、思ったより小食なんですね」
「そうなんですね、うーん、残りはどうしようかな」
レベル高いと食事量も増えるのか、どうりで最近宿の食事量で物足りないわけだ、それにしてもこの残りはどうするか。周囲を見回すと、スズが綺麗になった自分のお皿を恨めしそうに見つめてるのが目に移った。そういや、この子がいたな。
「スズ、スズ、こっち向いて口開けて」
スズがこっちを向いて首を傾げた後、おずおずと口を開ける。俺が細かく切った肉をスズの口に放り込むと、モッキュモッキュと肉を食べ、また口を開ける。
何これ、ちょっと面白いかも。なんか小動物にエサをあげてる気分になるな。
しばらくそれを続けていると、ジトっとした視線を感じる。視線を感じた方向に振り向くと、そこには二組の軽蔑したような視線が……、マリーさん、クレア、こっこれはちゃうんです。
「アスラさんがそんな趣味だったなんて、孤児院につれてきたのは失敗だったでしょうか……?」
「お兄さんは、スズちゃんがいいんだー。ちゃんと幸せにしてあげてね!」
「ち、違うんだ、これは肉が勿体無いからで……スズもなんか言ってくれ!」
スズのほうを見ると、口を開けて待っている。その眼には「そんなことはいいから、早く肉をよこせ」と書いてある。これはダメだな、頼りにならん。
「とにかく、違うからな! 残すのは良くないから、食べれる人が食べるべきだ!」
俺は強引に話を打ち切り、残りの肉をスズの口に放り込む作業を再開する。マリーは呆れたように去っていき、クレアは肉を切るのを手伝ってくれた。
俺の食卓の肉が全てスズのお腹の中に消え、どうやらスズも満足してくれたようで、お腹を押さえて幸せそうな顔をしている、こういうところは可愛らしいな。
賑やかな食事が済むと、タイラスさんが食事の終わりを告げる。
「それでは、我らの糧となった食材に感謝して、ごちそうさまでした」
「「「「ごちそうさまでしたっ!」」」」
ごちそうさまでした。今日のご飯はうまかったなぁ、食事自体もうまかったと思うが、やっぱりみんなで食べる食事は格別なようだ。また一緒に食べられるといいんだがな。
「アスラさん、今日はありがとうございました。皆も久しぶりの肉に喜んでおりましたよ。私が足を痛めてから肉を狩ることも減りましてな」
「こちらこそ、美味しい食事をありがとうございました。またこんな機会が持てるなら、魔獣なんていくらでも狩ってくるんですけどね」
「それは有り難いですね、アスラさんさえ良ければお願いします」
「明日も狩にいきますので、ぜひお願いします」
食事のあとにタイラスさんが話しかけてきたので、また一緒に食事できないか聞いてみると、快く応じてくれた、これもまたWin-Winの関係というやつだな。これで俺もボッチから脱却できただろう。
タイラスさんとマリーさんに帰る旨を伝えるとお土産にワイルドボアのステーキを包んでくれた。孤児院を後にし、宿屋の自分の部屋に戻り、鎧を脱ぐと肝心なことを忘れていたことに気付く。
ごっ、ごめんなさいナオちゃん、忘れてたわけじゃないんだよ。食事もほらこれを。
危なかった、お土産もらってて命拾いしたわ。ステーキを食べ機嫌が直ったナオちゃんと、今日も戯れてから眠りについた。今日は心も体も満たされている気がする。
今日はなんだかんだで楽しかったな、明日もこんな一日であればいいなぁ。
お読みいただきありがとうございました。
今回思ったより長くなってしまいました。
やはりロリっ子はいいですよね。




