価値観の変化
「ノブさんが自分に責任があると言ったのも間違いじゃありません。その人の人生の選択は誰かの後押しはあったとしても結局は自分で決めた事になります。
一分、一秒の使い方も自分で決めています。
だらだらする人もいれば勉強やトレーニングにあてる人もいます。
人は何かあったら環境のせいにしようとします。
周りの人が?親が?友達が?先生が?
誰が何を言おうとあなたの人生に責任はとってくれません。あの時のアドバイスのせいで失敗したから私が取り返すチャンスをあげようなんて人はいないんです。
そもそも国が国民を助けないのに個人が個人を助けてる余裕なんてないんです。
アドバイス一つにしても真剣に悩んで考えたものなのか、その場で格好つけて言ってるだけなのかもわからない。
それを真剣に受け止めるのはかなりのリスクがあります。一つの出来事あるいは悩み事に対しては多角的に色々なアドバイスを貰った方がいいですね。
さて、話がそれましたね。
ノブさんが経験してきた事には社会の変化の裏で更新されて来なかった価値観の闇が詰まってるんですよ。」
ナカさんが
「価値観の闇ですか?」
「そうですね。
まずは学歴という何の意味もない指標。
勉強をやってきたや学力が高い事を判断するのにはどこの高校に行ってどこの大学に行ったのかで判断するのはわかりやすいですが、学力が高いイコール仕事ができる訳でもない。
それなのに大学を出てるから基本給が高いとか意味がわからないですね。そのくせ昇給するかどうかは実力主義で昇給しない大卒がいたりする。
そうなると大学に行った意味って何だったのかと考えるし、奨学金の返済に追われてる人は借金までして行った大学に意味がないとなると絶望です。
昔からずっと続いてきてる基準が更新されず、改良しようともしていない事ってたくさんあるわけです。
大学卒業の22歳くらいの年で就職していない人は社会府適合者みたいな扱いをされる。
これもおかしい話なんですよ。三年以内の離職率が高くなってるなんて話もあります。
とにかく就職しなければいけないと追い込まれて入った会社がブラック企業だったりする事もある。
大人になったら会社で働いて当たり前という価値観がノブさんを『おっさんバイト』という肩身の狭い立ち位置に追いやったわけです。
それまでの経歴で、その人を判断するのも難しい話ですよね。本人の申告により経歴を公表するわけですが、これも信じて貰えなければ意味がないわけです。
人の判断をするための基準が社会の変化についていけず、変わらない価値観が現代人の首をしめ続けている。
なのに、その価値観で選ばれてきた大人達が自分を否定されたくないから価値観を変えようとしない。
だからずっと古い価値観に苦しまされる人が出続ける。
これが価値観の闇なんですよ。
誰もが一つや二つこの古い価値観にぶつかり嫌な思いをしますが、ノブさんは人よりも多くの価値観にぶつかり過ぎたために居場所を見つけられなかった。
これが偶々、ノブさんが生きてるだけで亡くなってしまってる人もいたでしょうね。
さて、長くなりましたね。
では、ノブさんについての宿題は……『価値観を変えるために必要な事は何か?』にしましょうか。」
引田は笑顔でそう言って初回の集まりが終わった。




