第十二話「訓練の成果」
お読みいただきありがとうございます!
リリアへの推理訓練が始まって数日。
観察力、論理的思考——彼女は真剣に学んでいます。
今回は、その訓練の成果を見せる回です!
リリアが、自分の力で推理に挑みます。
エドガーは、見守る立場で。
リリアの成長を、どうぞお楽しみください。
第十二話「訓練の成果」、どうぞ。
訓練を始めて一週間が経った。
リリアは、毎日真面目に通ってくる。
観察の練習、論理的思考の訓練、記録魔法の活用——
彼女の吸収力は、素晴らしい。
この日も、リリアは朝からクロウ家にいた。
「エドガー様、今日の訓練は何ですか?」
彼女は、ノートとペンを用意している。
「今日は——」
そう言いかけた時、セバスチャンが部屋に入ってきた。
「若様、村長のグレン様がお見えです」
「村長が?」
俺は、リリアを見る。
「ちょうど良いタイミングです。実践訓練にしましょう」
「実践?」
「はい。本物の依頼です」
*
応接室で、村長グレンが待っていた。
六十代の、温厚な老人だ。
「エドガー殿、お忙しいところすみません」
「いえ。どうされましたか?」
「実は——懐中時計を失くしてしまいまして」
グレンは、困った顔をする。
「懐中時計ですか」
「ええ。亡き妻の形見なんです」
「昨日までは確かに持っていたのですが、今朝見たら無くなっていまして」
俺は、リリアを見る。
彼女は、緊張した顔で頷く。
「リリア、やってみますか?」
「は、はい!」
リリアは、グレンに向き直る。
「グレン様、詳しくお聞かせください」
「昨日、懐中時計を最後に見たのは、いつですか?」
グレンは、考える。
「昨日の昼頃です。村役場で、時刻を確認しました」
「その後は?」
「午後、いくつか用事を済ませて、夕方家に帰りました」
「家に帰ってから、時計を確認しましたか?」
「いえ……夕食を食べて、そのまま寝てしまいました」
リリアは、ノートに記録する。
「今朝、時計がないことに気づいたんですね」
「はい」
「どこを探しましたか?」
「家中、全て探しました。ですが、見つからず——」
リリアは、俺を見る。
俺は、頷く——続けて、という合図だ。
「グレン様、昨日の午後、どこへ行かれましたか?」
「えっと——まず、パン屋へ行きました」
「それから、鍛冶屋——いえ、鍛冶屋は休みでしたね」
「その後、広場で知り合いと話して——」
「あとは、雑貨屋へ」
リリアは、全て記録する。
「ありがとうございます。では、一緒にその場所を確認してみましょう」
*
俺とリリア、そしてグレンは、村を回った。
まず、パン屋。
トマスに尋ねると——
「グレン様? ええ、昨日いらっしゃいましたよ」
「何か変わったことは?」
リリアが尋ねる。
「変わったこと? いえ、特には——」
リリアは、店内を観察する。
棚、カウンター、床——
そして、カウンターの隅に何かが光っている。
「あれは?」
リリアが指差す。
トマスが見る。
「ああ、これは——ボタンですね」
「昨日、落ちていたので拾っておいたんです」
リリアは、ボタンを見せてもらう。
銀色の、小さなボタン。
「グレン様、これは?」
「ああ! これは、私の上着のボタンです!」
グレンが驚く。
「では、ここでボタンが取れたんですね」
リリアは、ノートに記録する。
『パン屋:ボタンが取れた』
次に、広場へ。
昨日、グレンが話していた場所を確認する。
だが、特に何も見つからない。
最後に、雑貨屋へ。
マーサに尋ねる。
「グレン様? ええ、いらっしゃいましたよ」
「何か、落とし物は?」
「落とし物? いえ、特には——」
リリアは、店内を見回す。
だが、懐中時計らしきものは見当たらない。
リリアは、少し困った顔をする。
俺は、彼女に小さく囁く。
「昨日の訓練、思い出して」
リリアは、はっとする。
そして、もう一度店内を観察——
床、棚、カウンター——
そして、棚の下——
「マーサさん、あの棚の下、見せていただけますか?」
「棚の下?」
マーサが、棚を少し動かす。
そこに——
銀色の懐中時計が、落ちていた。
「あった!」
グレンが叫ぶ。
「ああ、良かった——!」
リリアが、懐中時計を拾って渡す。
「グレン様、これですね」
「ありがとう、リリア様!」
グレンは、涙を流して喜んでいる。
*
帰り道、リリアが俺に尋ねる。
「エドガー様、どうして分かったんですか?」
「雑貨屋に時計があると」
「分かっていたわけではありません」
俺は答える。
「ただ、可能性を考えただけです」
「グレン様は、パン屋でボタンを落としました」
「つまり、その時点で上着のポケットが緩んでいた可能性がある」
「だとすれば、その後に立ち寄った場所で、時計も落としたかもしれない」
「広場では見つからなかった。ならば、雑貨屋——」
「そして、棚の下という見えにくい場所にあるかもしれないと」
リリアは、頷く。
「観察と、論理的な推測——」
「はい。訓練で学んだことを、思い出しましたね」
リリアは、嬉しそうに笑う。
「はい! ありがとうございます!」
クロウ家に戻ると、セバスチャンが紅茶を用意してくれた。
リリアは、ノートに今日の出来事を記録している。
『グレン様の懐中時計捜索』
『パン屋でボタン発見→ポケットの緩み推測』
『雑貨屋で時計発見→推測が的中』
俺は、リリアのノートを見る。
綺麗に整理されている。
「リリア、成長しましたね」
「ありがとうございます。でも、まだまだです」
「いえ、十分です。自信を持ってください」
リリアは、照れくさそうに笑った。
セバスチャンが、クッキーを持ってくる。
「お二人とも、お疲れ様でした」
「ありがとう、セバスチャン」
俺たちは、紅茶とクッキーを楽しんだ。
お読みいただき、ありがとうございました!
第十二話、訓練の成果でした!
村長の懐中時計探し——小さな依頼でしたが、
リリアが自分の力で推理しました。
助手として、着実に成長していますね!
次回、第十三話からは新展開!
リリアとエドガーの新しい日常と、
次の事件への予兆——
引き続き、お楽しみください!
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次回もお楽しみに!




