第54話 奴隷商人カク 再び
ヨクトはスカーレットに指定された場所に赴いた。
「扉しかないですね。」
ついてきたソウがつぶやく。
目の前には頑丈そうな扉があり、小窓がついている。
「そのスカーレットさんはどうするつもりだったんでしょうね。」
ヨクトはスカーレットことアカのことを仲間たちに話した。
◇
ビゼンは闘技場の戦いのあと、疲れがたまったのか、部屋からあまり出ず、眠っているようだ。
「大丈夫だよ。心配しないで。」
アオはそう言っていた。
(アオ様がそういうなら大丈夫だと思うがな。)
ヨクトはそう思って納得した。
「あと、アカは私のほうで会いにいくよ。だから奴隷商人のほうはヨクトのほうでお願い。でないとあいつ、どっか行くかもしれないからね。」
四神のスカーレットを相手にするよりは奴隷商人を相手にするほうがましだった。
「オレはどうしたら?」
ソウも役に立ちたそうに目を輝かした。
「だったらオレと一緒にきてくれ。お前がいると助かる。」
「わかりました!」
ヨクトはそういってソウに同行を依頼した。
アオとスカーレットが万が一争うなんてことになったら、間違いなくソウはそこにいないほうがいい。
宿においていってもいいが、ソウは張り切っている。
闘技場の後、ソウにもアオが四神・青竜であることをつたえたら、いままでの無礼を思い出して固まっていたのは別の話である。
◇
「スカーレットが朱雀竜様ならこんなもの消し飛ばすだろうが、俺たちは頭を使おうか。」
そう言ってヨクトは小窓をノックする。
「ここが例の場所だって聞いたんだがな。間違いなのか。」
しばらく待つが返事がない。
「ほら、これでどうだ。小窓から金貨数枚をながす。」
ウルファーJr.から奪ったものだ。
「そんなのに金貨をもったいない…」
庶民だと金貨を見ること自体ほとんどない。
ソウのような下っ端ギャングならなおさらだった。
「だれの紹介だ。」
窓の向こうから声が聞こえた。
「スカーレットって女だよ。しらないか。ここには極上のやつがいると聞いたんだがな。ほら、金ならもっとあるぞ。」
そういってヨクトはさらに小窓から金貨を放り込む。
そして、鉄のドアがゆっくりひらく。
「だれにも見られていないだろうな。」
男が現れる。
「もちろんだ。」
ヨクトが答え、扉の中に入る。
そして男たちに囲まれる。
「すまねえな。悪く思わないでくれよ 。一応、武器なんかはこちらで預からせてもらう。」
「金以外はなにももってきてねえよ。」
ヨクトは金貨のつまった袋を地面に置いて大人しく両手をあげる。
ソウもそれにしたがう。
男の護衛がヨクトのポケットなどをさぐり、女の護衛がソウの身体をさぐる。
「よし、まあ、だれの紹介かはわからねえが、客であることは間違いないようだな。すまなかったな。俺らもこの町にきてまだ間がないんだ。」
男がついて来いと相手をする。
そして建物の中に案内される。
檻の中に刻印持ちの人間などが繋がれている。
(チッ)
ヨクトは心のなかで舌打ちをし、思わずいら立ちが顔にでる。
「どうしたお客さん。」
「い、いや、もっと、質のいい奴がいると聞いていたんだがな。」
ヨクトは思わずごまかす。
「なるほど、じゃあダークエルフなんてどうだい?」
男がニヤリと笑う 。
「ダークエルフだと?」
「ああ、あいつらずっと若いからな一生遊べるぜ。」
男が下劣な笑いをする。
(ビゼンをつれてこなくて正解だったな。こいつら問答無用で皆殺しだったぞ。)
「ダークエルフか。見せてもらっていいか。」
「ああいいぜ。正直、俺たちもわけありでこいつらはやく手放したいんだ。」
ヨクトは案内されて、ダークエルフ3人が閉じ込められた牢の前にたつ。
「子供もいるな。」
「ああ、まあ子供といっても俺たちより長く生きてるかもしれねえがな。なあに、いらなくなったら殺せばいいさ。」
ヨクトは怒りを抑えながら男に聞く。
「ひとつ教えてくれ、こいつらは、王都のコウロにところにいたダークエルフか?」
「てめえ、なぜそれを…」
男がそれを言い終わる前に突然、気絶して意識を失いたおれる。
「え?どういうことだ?兄貴なんかしたのか?」
「まあな。実戦じゃあはじめてだがうまくいったな。」
ヨクトはアオの術を参考に、目線があったものだけに【豪傑覇気】を浴びせるすべをマスターしていたのだった。
「で、このあとどうするんだ?兄貴。」
ソウが声をかける。
「こうするのさ。」
ヨクトはにやりと笑い、息を吸い込む。
「だれかたすけてくれええ!」
「おいおい」
ソウの顔色が変わるが‥‥
「どうした?」
「なにかあったのか?」
男たちが集まってくる。
「わからない。怪しいやつが急におそってきて、カクはどこだ?とかいってた。この人もしらないといったら、殴られてこれだ。俺たちは客だから見逃されたみたいだが…」
「なんだと、カク様だと!」
「すまない、お客さん、今日はもう帰ってくれるか。」
そういうと男たちは去って行って。
「なるほど‥…」
ソウは思わず納得する。
「あんたらもう少し待っててくれよな。」
ヨクトはおびえるダークエルフたちに声をかける。
◇
「カク様大丈夫ですか!」
男たちがカクの部屋にやってくる。
「なんだお前ら騒々しい!」
カクは奴隷の女を侍らせ、酒をのんでいた。
その中には悪魔の女すらいた。
「いや、怪しいやつがカク様を探しているらしくて‥‥」
「そうです。一人やられまして……」
男たちはカクにかけよる。
「はあ?何をいってるんだ、お前らは、人が楽しんでるのをじゃましやがって。」
カクが不機嫌にいう。
◇
「どうも。おじゃましまーす。あんたがカクか。」
ヨクトがカクの部屋の入口に立つ。
「なんだお前は?」
カクがそういった瞬間、ヨクトの【豪傑覇気】が発動する。
カクと悪魔の女、そして、ソウ以外の全員がその場に倒れ込む。
「な、なんだこれは?お、おいお前ら,どうした?」
慌てふためくカク。
「やつのスキルですね。凄まじい魔力エネルギーを浴びせることで、戦闘不能にするのがやつのスキルのようです。」
青い目をした肌の白い女が無機質に話す。
だが、その顔には刻印が刻まれており、黒い翼は明らかに人ではないこと示していた。
「あんたには、聞きたいことがあるからな。大人しく来てもらえると助かるんだが。」
「お、お前、なにものだ!コウロの手先か!それともアマンのほうか!」
カクは悪魔の後ろに隠れ、ヨクトの方に指を突きつける。
「おいおい、悪魔とはいえ、女の後ろに隠れるなんてそれはないんじゃねえか、カクさんよ。あんたも王都じゃ、ちったあ売れた名前だったんだろ。」
ヨクトは悪魔から目を離さず 答える。
「華候姫こいつを殺せ!」
「かしこまりました。」
華候姫と呼ばれた黒い翼の悪魔がヨクトめがけて羽ばたく。
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