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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
桃園血盟~後宮~編

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第50話 大勝負

前回までのあらすじ――


奴隷商人カクを追い、歓楽都市オアシスにやってきたビゼン、ヨクト、アオの三人。現地で出会った女ギャングのソウに案内され、情報収集のために闘技場への出場を決める。(43話)


しかし闘技場でソウの元パーティー、ビーカ一行がソウを侮辱。ビゼンはビーカたちを含めた5回戦を一人で勝ち抜くと宣言し、挑発した。


試合前の時間つぶしに訪れたカジノでは、アオがイカサマカジノを逆手に取り金貨13000枚を獲得。これを知ったカジノのオーナーでもある闘技場の主催者ウルファーJr.が、その13000枚をビゼンの5回戦勝ち抜きに賭けると勝負を申し込んできた。アオとビゼンはこれを受諾。勝てば26000枚、負ければゼロの大勝負が始まった。(47話)






「あーっと!ダークエルフの戦士、ビゼンのローキックがオーガの戦士、秦鬼しんきの左足をへし折ったようだー!秦鬼選手たてるかあああ!」


実況アナウンサーが熱狂し、隣の解説席に目をやる。


そこに座る女は、マスクをつけていてもなお息をのむほどの美貌だった。黒いコスチュームは胸元が大きく開き、白い肌と完璧な肢体を惜しげもなくさらしている。金の髪が肩に流れ、脚を組むたびに周囲の男たちの視線が吸い寄せられた。しかし当の本人は観客など眼中にない様子で、闘技場を見下ろしている。


プリンセスマスク。


それがこの女の名だった。


「どうでしょう?解説のプリンセスマスクさん!」


「あのダークエルフのスキルはおそらく物理防御力無視だな。」


低く落ち着いた声が、マイクを通して場内に響く。


「というと?」


「やつに殴られれば、いかに固いものでも砕かれ、蹴られれば骨まで砕かれる。」


「え?それって、とんでもないスキルなのでは?」


「やつの魔法力を上回るスキルは魔法シールドならば防げるが、単純な暴力は無意味ということだな。」


プリンセスマスクは身を乗り出してビゼンを見つめ、ビールを一口飲む。その所作の一つ一つが場違いなほど優雅だった。


「ありがとうございます!プリンセスマスクさん!なんとビゼン選手とんでもないスキルをもっていました!オーガの戦士、秦鬼、たてるかあああ!」






アオ、ヨクト、ソウの三人は解説を聞きながらビゼンを応援している。


「アオ様、あのプリンセスマスクって…」


ヨクトがプリンセスマスクを指さす。


「究姫だね。彼女もちゃんと仕事するようになったんだね、成長したよ。」


「いや、そういう問題なんですか。四凶が闘技場の解説で働くって。」


「天職かもしれないね。彼女はこういうの好きだし、彼女に解析できないやつなんてそうそういないだろうしね。」


アオは今日は目のマスクをはずし、ラフな冒険者スタイルだ。飾り気のない簡素な上下に、青い髪をまとめただけの格好でポップコーンを頬張りながら試合を眺めている。


しかしその容姿は、解説席で妖艶に脚を組むプリンセスマスクに引けを取らなかった。むしろ着飾ることを一切意識していない無防備さが、かえって周囲の目を引きつけている。男も女も、気づけばアオの方を盗み見ていた。


当の本人はポップコーンの袋を傾けながら、そんな視線を完全に無視していた。


「まさか、あの秦鬼を素手で圧倒するなんて、ビゼンってとんでもない武闘家だったんだな…」


ソウがビゼンの戦いぶりをみて驚愕する。


「なにいってんだ。ビゼンは薙刀使いだ。武闘家ってわけじゃないぜ。」


ヨクトがソウに一言いう。


「え?ということは、あれでまったく本気じゃないってことか‥、すげーぜ!ビゼンの姉貴!」


いつのまにか、ソウの中ではビゼンは姉設定になっていた。






膝をついた秦鬼の足が徐々に再生していく。


ビゼンは相手が立ち上がるのを待っている。


「おーっと!ビゼン選手、追撃しません!秦鬼選手の再生能力を見ながら距離を保っています!ここまで2回戦を圧倒的な強さで制してきたビゼン選手ですが、これは油断でしょうか!それとも策でしょうか!プリンセスマスクさん、どう見ます!」


プリンセスマスクは試合から目を離さずに答える。


「再生能力は体力まで回復するわけじゃない。骨が繋がっても疲弊は残る。あのダークエルフ、それをわかってて待っているんだろうな。」


「なるほど!体力を削りきる戦略ということですか!」


「まあ、そういうことだ。」






「なるほど、再生能力か。」


ビゼンはオーガの戦士、秦鬼と正面から向き合う。


3メートル近い巨体が影を落とす。170ほどのビゼンの頭など、秦鬼の胸の高さにも届かない。しかしビゼンは一歩も引かなかった。


「お前、強いな!強い戦士と戦うのは楽しいぞ!」


秦鬼が吠える。巨大なハンマーが頭上に持ち上がり、重力に引かれるように振り下ろされる。


地面が揺れる。


ビゼンは右に跳んでいた。


(よけられるのは想定済みよ!)


秦鬼はすでにハンマーを横に薙ぎ払っていた。回避した先に、鉄の塊が迫る。怪力と速度が合わさった必殺のコンビネーション。


しかし。


ビゼンの右拳がハンマーを直撃した。


バキィッ!!


砕けたのはハンマーの方だった。


「なにい!?ハンマーのほうがくだけるとは!」


秦鬼が絶句する。


「痛いだろうが悪く思うなよ!」


ビゼンの右足が低く鋭く放たれる。


ローキック。


秦鬼の右足が、音を立てて砕けた。


巨体が傾く。


そこにビゼンが踏み込む。


拳が腹に沈む。肘が脇腹を砕く。蹴りが膝を折る。


一撃ごとに鈍い音が響く。


秦鬼の再生能力が追いつかない。折れた骨が繋がる前に、次の骨が砕かれる。


「ぎゃああああ!」


巨体が崩れ落ちた。


地面に叩きつけられた秦鬼の四肢は、曲がってはいけない方向に曲がっていた。それでも骨が少しずつ再生していく。しかし秦鬼は立てない。


「アああああッと!秦鬼選手ダウン!両手両足が!信じられない光景が広がっています!それでも骨が再生している!立てるのか!秦鬼選手!」


沈黙。


秦鬼は動かなかった。


「無理です!秦鬼選手立てません!ビゼン選手の猛攻が再生能力を上回りましたああ!」


「「おおおおおおおお!!」」


会場が割れる。


「いいぞねえちゃん!!」


「次もたのむぜえ!」


外ウマをかけた観客たちの歓声が波のように押し寄せる。


ビゼンは静かに右手を上げた。



「なんとビゼン選手!四人抜き、しかし次はどうでしょうか!A級冒険者ビーカ選手が率いるパーティー”ビーカーズ”の入場です!」


「「おおおおおおおお」」


ヒートアップする会場。


「おれはもう一度、ねえちゃんに賭けるぜ!」


「ビーカーズがまけるわけがねえ!」


観客から声援がとぶ。


そして、鎧甲冑をまとったビーカたちが入場してくる。


「まさか、本当に一人でここまで突破するとはな。」


「へへへへ」


ビーカとその仲間たちがビゼンに対峙する。


「おい、ビゼン、外ウマの観客がもりあがっているが、一つ俺たちも賭けをしないか?」


ビーカがビゼンを挑発する。


「ほう?なんだ?」


「負けたほうが、勝ったほうのいうことを1日なんでもいうことを聞くというのはどうだ?お前も自信があるんだろう?」


「ビーカ隊長、そんな度胸はこの女にはないですって!」


4対1のくせに挑発をつづけるビーカたち。


「いいだろう。」


ビゼンは答えて構える。


「よし!聞いたなお前たち!とっととこいつを痛めつけて、ヒーヒー言わせてやろうぜ!」


「「おおう!」」


下劣な笑いを浮かべながら、獣の皮で装飾された大盾を構えた戦士がビゼンの前に立ちふさがる。




「これが!ビーカーズの必勝のパターンです!タンク役のダム戦士がまずは敵の攻撃を防ぎます。しかし、ビゼン選手には物理防御は効かないはずですがどうか?!」


ビゼンは大楯にハイキックを入れる!


鈍い音が響く!


しかし、盾は砕けない。


「ばかめ!」


その瞬間後方から矢が射出され、ビゼンは大きくさがる。


「これはどういうことでしょう!解説のプリンセスマスクさん!」


「あの大盾、アレを覆っているのはヴァナルガンドの毛皮だな。盾だけじゃない。あのチームの武具は全身ヴァナルガンドの毛皮で覆われている。さらに、武器、防具はヴァナルガンドの爪や牙で強化されているね。あれなら並みの武器やスキルでは歯が立たないだろうね。」


「ヴァナルガンド⁉あの伝説の魔獣ですか!なんと、ビーカーズはとんでもない装備をしていたようだあ!」


実況がヒートアップ。


「ククク!実況を聞いたか?そうさ、俺たちはウルファーJr.様から頂いた、あの神獣フェンリルとも呼ばれるヴァナルガンドの装備をまとっている。お前のスキルが如何に強かろうと、砕けん!」


ビーカがヴァナルガンドの剣を構え、ほえる。


そして内心、美しいビゼンの四肢をみて下劣な想像をする。


(ダークエルフの女戦士か、やったことがねえ。ククク)


ビーカは自分の勝利を確信していた。





その様子を美女を侍らしながら貴賓席から見ている2人の人物がいた。


1人はウルファーJr.である。


「どうだい?旦那?あれでも、うちのビーカーズが負けるとでも?」


ウルファーJr.はとなりのソファーに座る一人の美女に目をやる。


旦那とよばれた人物は意外にも長い黒髪の美女。


両手に美女を抱えている。


「あの子は私も知ってる子でね。Jr.君も久しぶりにでる準備をしたほうがいいよ。」


そういって、こっちを馬鹿にした目つきでみつめる。


アオと同じく、四神の一人、玄武竜クロである。


「この試合だけなく、次のビゼンと君との試合でもあの子にかけさせてもらうけどね。」


そう言ってクロは美しく、しかし、人を小ばかにした微笑みをする。


(クソ、なんだ、なんなんだこのクロってやつは!親父は絶対に逆らうなとか言っているから、相手してやっているが、どこかの貴族なのか。)


実際、金と暇を持て余した貴族の子供は自分のまわりにもいる。


しかし、このクロだけはわからない。


女好きでたびたび父のところにやってきては、父もなぜかへりくだっていた。


(親父だけじゃない。他のギャングのボスの多くもこいつに気をつかっている。)


(なんどもこいつの正体を親父にきいたが、教えてくれなかった。)


しかし、この賭けで勝ったら正体を教えてくれるという約束で、勝負をしていたのだ。





「なるほど、少しあなどっていた。素手では少し厳しいか。」


そういうと、ビゼンは天空を指差す!


「来い!青竜冷艶鋸!」


すると、天空より降ってきた薙刀、青竜冷艶鋸がビゼンの足元の大地に突き刺さる!


「あーっと!なにがおこったのでしょうか!天空より薙刀が現れましたあああ!」


「「おおおおお!」」


「「すげええええ!」」


会場が沸き立つ。


「なんだ、あのスキル!」


観戦していたヨクトもおもわずおどろく。


「フッフッフー。かっこいいでしょう。ビゼンが呼ぶと何処からでも現れるという機能をつけたんだよ。」


アオがニンマリ笑って自慢する。


(なんでもありか!この人は。)


ツッコミを我慢するヨクト。


「虚仮威しだ!」


そういうと防御役のタンクがヴァナルガンドの盾を突き出す。


しかし・・・


「我が青竜冷艶鋸に断てぬものなどない!」


ビゼンが薙刀を一閃すると、腕もろともヴァナルガンドの盾が紙切れのように切断される。


「ぐわああああ!」


腕を切り落とされ、のたうち回る戦士ダム。


「え?」


一瞬事態が飲み込めなくなる、ビーカーズの戦士たち。


自分たちの装備は無敵ではなかったのか。


そんなことを考えるまもなく、ビゼンが舞うたびに自慢の装備は切り裂かれ、血しぶきが舞う。


もはや、ヴァナルガンドの防具など布切れと何ら変わりがなかった。


そして、瞬く間に戦士はビーカ一人となる。


「なんということでしょう!最強のはずのヴァナルガンドの装備をもつはずの戦士たちが瞬く間に切り裂かれましたあああ!これはどういうことですか?解説のプリンセスマスクさん!」


「どうもこうもない、相手の武器が上回っていただけだろう。しかし、のたうち回る人間を見るのは楽しいねえ。フフフフフ」


プリンセスマスクは本当に楽しそうに笑う。



「たしか、負けたほうが勝った方のいうことを聞くんだったな。」


ビゼンが薙刀をつきつける。


「ひいいいいい」


ビーカはもはや戦意を喪失していた。


頼みの綱のヴァナルガンドの装備はビゼンの前にはなんの役にも立たなかったのだ。


「そうだな。死ね。といったら、死ぬのか?貴様。」


ビゼンは冷たく言いながら、薙刀を軽くおすだけで転がっている兜を豆腐を切るように真っ二つにする。


「ゆ、ゆるして、く、ださい・・・」


両手を組み祈るように命乞いをするビーカ。


「だめだな。では今、死ね。」


ビゼンは薙刀を上段に構える。


その瞬間、ビーカは失禁したまま意識を失った。


「フ、どうやら殺す価値もないらしい。」


ビゼンはそういうとソウの方を向き、ニヤリとわらい拳を突き出した。


「姉貴」


それをみたソウは涙ぐんで思わず、手に祈りのポーズをとった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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