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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
刻印受呪~刻印~編

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第28話 過去を少し話す

 アマンからの連絡を待つ間、ヨクトから意外な頼みを受けた。


「資材の仕入れ先が、ワタシに会いたい?」


 ヨクトの話を、ビゼンと一緒にランチを食べながら聞く。


「俺たち革命軍の協力者でな。アビ、お前に会いたいらしい」


「なんでまた」


「正直よくわからん。ただ、俺たちにとっても重要な取引先でな。無下にできないんだ。それに——やつは俺たちの部隊が悪魔に襲撃されたことを知っていた」


「……そこまで知ってるの」


「詳しくはわからん。だが、知っていた」


 嫌な予感が、背筋をなでる。


「どんな人なの、その協力者」


「この王都でかなり大きな商売をしている。革命軍への物資を融通してくれるくらいだからな」


「……どうしても会わないとだめ?」


「頼むよ。あの女、へそを曲げると面倒くさいんだ。あとどういうわけか嘘やごまかしがあいつには通じねえ」


 ヨクトが情けない顔をする。革命軍の隊長様がこの顔をするのか。


「女性なの、その人」


「ああ。ただ、年齢がまったくわからねえ。外見は若く見えるが、中身はまるでビゼン、お前みたいに落ち着いてる」


「人間ではないということか」


 ビゼンが静かに言う。


「わからん。噂では、例の魔王が生きていた時代から生きてるとも言われてるが」


「……行きましょうか」


 ワタシはため息をついた。嫌な予感は消えなかった。



 ランチのあと、ヨクトに連れられて協力者のもとへ向かった。


「その人の名前は?」


「ジークっていう商人だ。この町では結構有名なやつだよ」


「有名人がよく革命軍とつながってるわね」


「ああ。表向きの商売が商売だからな」


「どういうこと?」


「行けばわかるよ」


 そうして辿り着いたのは——


 遊郭街だった。


 夕暮れには早い時間だというのに、通りはすでに甘い香と低い音楽に満ちていた。

薄布一枚の女性が欄干から身を乗り出し、道行く男たちに流し目を送っている。笑い声、囁き声、誰かが弦を爪弾く音。


 ワタシは思わず足が止まった。


「……こんなところにいるわけ?」


「官軍の連中も、いろいろ知られたくないことを知られてるってことだ」


 ヨクトはさらりと言って歩き続ける。


(こいつ、慣れてるのか?)


 ワタシは後ろからジト目でヨクトをみる。


 ビゼンは仮面をつけたまま、無言でついてくる。その横顔が何を考えているのか、まったく読めない。


 ワタシは自分の顔が熱いのを自覚しながら、二人の後を追った。


 仮面をつけてくればよかった。


 ヨクトが一つの遊郭の前で立ち止まる。他より少し格が高い。扉の前に立つ女性の着物の柄が、通りの他の店とは明らかに違った。


「ジークはいるか?」


「お待ちしておりました」


 女性が深く頭を下げ、奥へと案内する。


 廊下を進むにつれ、外の喧騒が遠のいていく。代わりに、濃い白檀の香りが鼻をくすぐった。


 奥の部屋の襖が、静かに開く。


 煙だった。


 薄く漂うキセルの煙の向こうに、女が座っていた。


 オレンジがかった長髪が、行灯の光を受けて鈍く輝いている。薄い着物の合わせ目から、白い鎖骨が見えた。年齢が読めない。若く見えるが、その目だけが違う。何十年、あるいは何百年分かの時間を見てきたような、深くて静かな目だ。


 キセルをゆっくりと口から離し、煙を細く吐き出しながら——女はこちらを見た。


「お嬢ちゃん」


 声が、低くて艶やかだった。


「アンタが、ヨクトに金を貸したという物好きか」


 その目が、ワタシの全部を値踏みするように細くなる。


 その瞬間——


【真実を見る眼】相手の嘘やごまかしを見破ることができる。


 ワタシの【翻訳者】が反応した。


(スキルでこちらを測ってる……食えない女だ)


「あなたに嘘は通じないってことね」


 ワタシは動じないように、真っ直ぐ相手の目を見て答えた。


「アビよ。よろしく」


「フフフ」


 ジークが、初めて笑った。


「なかなか面白そうな子じゃないか」


 煙がゆっくりと天井へ消えていく。


「私のことは聞いているだろ。ジークだ」



「さて、アビ」


 ジークがキセルをゆっくりとふかす。


「聞いたところによると、あんた、ダークエルフを助けて、おまけにヨクトに大金まで貸し付けたそうじゃないか。なぜそんなことを?」


 こいつには嘘が通じない。


 なら、こちらからカマをかけるか。


「あなた、『魔勇者』という言葉を知ってる?」


 ジークの動きが、止まった。


 キセルを持つ手が、ほんの一瞬だけ。


「やっぱり知ってるのね」


「フフフフフ」


 ジークが品定めするように笑う。


「どういうことだ?」


 ヨクトとビゼンが顔を見合わせる。


「ヨクト、この人、人間じゃない。多分魔王の関係者。」


 言った瞬間、ジークの姿が変わった。


「クククク…」


 白目が黒く染まり、瞳が金色に輝き、肌が陶器のように白く変色する。


 ヨクトが構える。ビゼンが薙刀に手をかける。


「まあ、落ち着きな」


 ジークは両手を軽く上げた。キセルを持ったまま、のんびりと。


「腹を割って話そうというだけさ」


「おまえ!魔族だったのか!」


ヨクトがおどろく。


 ジークは異形の姿のまま、また煙を吐く。


「私はね、かつて魔王の配下だった。昔の話だがね」


「……やっぱり」


「で、魔勇者とは何だ」


 ビゼンが静かに問う。


「異世界から人間を召喚して、強い戦士を作ろうとした計画よ」


 ワタシは吐き捨てるように言う。


「召喚された連中はスキルを持ってくる。使えるやつは戦士として育てる。使えないやつは…」


「魂を抜かれ、生贄されるか、生贄にすらならないやつは売りとばされる。私らみたいなところに。」


 ジークが続けた。


「やってたやつらは『勇者ガチャ』なんてよんでいたよ。当たりは勇者。外れは素材。それが魔勇者計画だよ 」


 ジークは静かに答える。


「そういうこと」


ワタシが相槌をうつ。


「なんだよそりゃ」


 ヨクトが顔をしかめる。


「ワタシはその失敗作よ。使えないと判断される前に逃げた」


「まあ当然だね。」


 ジークがうなずく。


「修行して仲間の魂を食らってるやつもいたけどね。私みたいに逃げたやつもおおい。」


「簡単に逃げられたのか?」


ヨクトが当然の質問をする。


「ええ、意外なほどあっさり。私は弱いけどスキルをもってたから生き延びられたけど、ほんとになにもない人は魔獣か野盗に殺されるしね。」


この国に来るのも大変だった。


「でも、わけのわからない理由で、生贄になるのも誰かを生贄にするもの、売り飛ばされるのもごめんだわ。」


「ビゼンを助けたいのも同じ理由か。怒りが動機か」


ジークは声を低くしてきく


「……そう。ここに来るまでもワタシもいろんな人に助けられたしね」


 ワタシはあっさり答えた。


 なかにはチュウエイみたいなやつもいたけど。


「目の前で理不尽なことが起きたから、ワタシは手を差し伸べた。」


 ジークがキセルを置いた。


 長い沈黙の後——


「アビ」


「なに」


「お前、魔王になる気はないか」


「はあ?」


「冗談ではないよ。お前には資格がある」


「なんでよ?」


 わけがわからない。


「もともと魔勇者プロジェクトは新たな魔王を育成するプロジェクトなんだよ。あの討伐された魔王、本来の名前はヴィクトリー、も魔勇者だった。」


「ないない。ビゼンの仲間を助けたら、冒険者に戻ってモンスターハンターでもするよ。それだけよ」


 チュウエイにもいつかはけじめはつけたいと思うが。


 また沈黙。


「さっきもいったが、うちには魔勇者のなりそこないから売り飛ばされた連中もいる。それを聞いて、あんたなにもおもわないかい?」


う…それをいわれるとつらいが。


ジークが、くすりと笑った。


「冗談だよ。しかし、アンタはいずれ魔王になるよ。じゃなきゃ勇者だ。」


「だからなんでよ。倒すべき魔王ももういないんでしょ。」


「アンタ、ほんとに何もしらないんだね。八凶神様に気に入られたやつはだいたい魔王か勇者になる。そうじゃないやつは辺境で悠々自適に生きてるんだよ。」


ジークはもう一度煙をふかす。


「なんでアオのことまで?」


思わずぽつりと声にでる。


「都の近所で華姫カキとかいう厄介な悪魔が暴れるのを感じた。やつの動向はつねに見ているからね。するとそのあと、アオ様の霊力を感じたのさ。」


この人、アオの霊力を感じることができたのか。


そうとうできるな。


ジークはしばらくワタシを見ていた。


それから、キセルを静かに置いた。


「まあ、いい、素性もわかったし、ヨクト、あんたの支援も続ける。仕事の話はおわりだ。今日は私のおごりだ。ゆっくりしていきな。」


そういうと、ジークは仕事にもどっていった。


(思い出したくもない話をしてしまった)


ああ、今日は飲むか。


私は気分をかえ、ジークのやつにたかるこにした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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やるきがでます

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