第2話 やってしまった――最初の仕事で殺されかけた
やってしまった。
ワタシは、思い切りリーダーを殴っていた。
だが、後悔はしていない。
今日が初めての仕事だった。
冒険者として、初めて組んだパーティー。
魔物討伐の補助――そう聞かされていた。
だが、連れてこられたのは人里離れた山奥の民家だった。
「道に迷ってしまって。水と食料を分けてもらえませんか」
リーダーのチュウエイが、穏やかな声で言う。
ワタシはその横で、違和感を覚えていた。
扉が開く。
現れたのは、目に包帯を巻いた若い女性だった。
「どうぞ。少し待ってくださいね」
その瞬間、チュウエイが笑った。
ぞっとするほど、冷たい笑みだった。
「これは好都合だ」
次の瞬間、ナイフが女性の喉元に突きつけられた。
赤い筋が、ゆっくりと浮かぶ。
「ちょっとあんた、なにやってんの!」
思わず叫んだワタシを、仲間たちが押さえつける。
「黙って見てろ。お前もあとからかわいがってやるから」
チュウエイは、楽しそうに言った。
こいつら、はじめからこれが目的だったのか!
クソ、クソ、クソ!
「水と食料、それから金目のものを全部出せ。
嫌なら――」
ナイフが、さらに彼女の首元に押し込まれた。
ワタシの中で、何かが切れた。
その瞬間、体の感覚が変わった。
重かったはずの手足が、やけに軽い。
息が通り、視界が冴える。
それと同時に――
何かが、聞こえた気がした。
言葉のようで、言葉ではない。
音とも、意味ともつかない、奇妙な響き。
耳ではなく、頭の奥に触れたような感覚。
理由は分からない。
考える前に、体が動いていた。
羽交い締めを振りほどき、チュウエイに殴りかかる。
――次の瞬間。
拳が顔面に叩き込まれ、視界が白く弾けた。
地面に転がるワタシを見下ろして、チュウエイが舌打ちする。
「使えねぇな」
チュウエイは、もうワタシを見ていなかった。
興味を失ったように視線を逸らし、
そのまま、会話の途中で剣を突き立てる。
腹を貫く衝撃。
息が詰まり、声が出ない。
そこで、意識が途切れた。
――終わった。
そう思った。
だが。
目を開けると、天井があった。
柔らかな寝具の感触。
ワタシは生きていた。
傷はない。
腹も、顔も、どこも痛まない。
混乱したまま起き上がると、扉が静かに開いた。
そこに立っていたのは――
確かに、殺されたはずのあの女性だった。
「おはよう」
穏やかな声で、彼女は言った。
「ようやく気がついたか」




