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41 その瞳に映るものは

 猿神との戦いを終えた後、俺たちは鏡見の実家に戻った。

 門の前では、鏡見の父と母、そして使用人たちが総出で出迎えてくれた。


「やっぱり、茜のいなり寿司は最高じゃな!」


「まことにの。旅で食したどのいなりより美味じゃ!」


 鈴と結が、まるで子どものように嬉しそうに頬張っている。

 鏡見は疲れているというのに、俺たちのためにいなり寿司を作ってくれた。


「うん、うまい!」


「おいしいね!」


「うまいクワッ!」


 今夜の食卓には、鏡見母と使用人たちが総出で用意した、机を埋め尽くすほどの豪華な料理が並び、俺たちも腹いっぱい食べ、笑いながらその夜を過ごした。


 ――翌朝。


 俺たちは早めに帰ることにした。

 鏡見は「もっとゆっくりしていって」と言ってくれたが、鏡見家も当分は忙しくなるだろうし、今の京都を観光するのも気が引ける。

 鏡見家の人たちに丁重に礼をいい、屋敷をあとにした。



 ◇◆◇



「それでは、我らは一度“大社”に戻るゆえ、ここまでじゃ」


「ああ、元気でな。こっちに戻ってきたら連絡をくれよ」


「うむ、世話になったの」


 そう言って、鈴と結の二匹は並んで歩き出す。

 その後ろ姿を見送りながら、俺は小さく手を振った。


 去り際、結がふと振り向き――。


「……して、先ほどから気になっておったのじゃが、あやつは何をしておるのだ?」


「あいつのことは気にしないでくれ、ただの病気(SNSオタク)だ……」


「……あのカッパ、俗世にまみれすぎておるな……」


 結は、スマホを構えて辺りを夢中で撮影しているブッチを見て、しみじみとそう呟いた。



 ◇◆◇



 後日、ROOTSによる調査で、山にあった猿神の祠は、鈴と結の連携攻撃で完全に破壊されていて、猿神像も粉々になって力を失っていたことが確認された。


 京都の町は、混乱の爪痕を残しつつも、ようやく落ち着きを取り戻しはじめていた。

 SNSでは「某国の極秘兵器実験だ!」「宇宙人による侵略の前触れだ!」など、根拠のない噂が飛び交い、ネット民たちは今日も元気に考察合戦を繰り広げている。


 そして、プロデューサーの欲沼は、タレントや関係者によって被害を訴えられ、ワイドショーを賑わせている。結果、番組“ヤバすぎオカルト伝説”も御蔵入りとなった。

 藤宮は残念がっていたが、すぐに新番組が始まると発表され喜んでいる。


 ……一方ブッチはというと、戦闘中にこっそり写真を撮っていたらしい。

 「これ、絶対バズるクワッ!」とSNSに投稿しようと企てたが、幸い未然に防がれた。

 罰として、データをすべて没収されて項垂れていたが、まぁ、自業自得だ。




[調査報告書・抜粋]

 ――――――――――――――――

 Case 06《Idol’s Vision》


|結 論

 ・人気アイドル鏡見 茜に対するストーカー被害相談を契機に、複数の怪異現象を確認。

 ・調査の結果、“死猿”と呼称される霊的存在の活動を確認。背後に“猿神”と名乗る上位存在の関与が判明。

 ・死猿たちは、鏡見 茜の持つ“宝珠”の霊力を利用しようと暗躍していたことが判明。

 ・鏡見家および守護獣“鈴”“結”の協力により、封印地にて死猿を鎮圧。

 ・戦闘中、鏡見 茜を媒介として“宇迦之御魂大神”の降臨を確認。

 ・当該神格存在により、猿神は完全消滅。

 ・京都市内で発生した異常震動および停電現象は、各地の結界が“共振”したことによる副次的影響と推定。

 ・ROOTSによる調査により、猿神の祠および関連遺構は全て破壊と確認。

 ・民間では一連の現象が「局地的地震」によるものとして報道されている。


 ・Sweepには報告済み。


 以上をもって、本事案の一次調査を終了する。


 記録者:ROOTS 捜査員 H.K/M.F

 ――――――――――――――――



 ◇◆◇



 ――某高層ビル最上階。


 外界を遮断するように、窓ひとつない会議室。


「また――あの子たちに、邪魔されちゃったわね」


「べつにいいさ。こっちはサルどもに、少し“知恵”を貸しただけだしね。それに――“こちら側の神”が出てきちゃったしさ」


「“宝珠”はまた今度かしらね。今、あそことやり合うわけにはいかないもの」


「ああ、あまり事が大きくなると、“やつら”に気づかれる恐れがあるしね」


「でも、あの子面白いわね。“巻き込まれ体質”だっけ? あんな奴らまで引き寄せちゃうなんて」


 女はワイングラスを揺らし、赤い液面に灯りを映す。


「……それで、そっちはどうするんだい?」


「こっちも、ちょうどいい駒(欲沼P)が捕まっちゃったし。そろそろ“遊び”はおしまいね」


「それじゃあ、“南”はフェンリルに任せてあるし、……きみには“例の場所”をお願いしようかな」


「やっと見つかったの?」


「ああ。微弱だけど、確かに“反応”があった」


 美零は、赤い唇に笑みを浮かべる。


「――わかったわ、あそこには因縁もあるし。任せておいてロキ」


「よろしく頼むよ、“ヘル”」


 赤い液面に浮かんだ二つの影は、やがてひとつに溶けた――世の理が、音もなく軋みはじめていた。

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