第五百八話 一旦引き取る
「そこまで!」
国王がやっと声を発した。
「我が妻がやっと意識を取り戻したばかりだ。今日はゆっくりと休養を取らせたい。もちろん君達も同様だ。中には頭を冷やす必要のある者もいるだろう」
ぎろっ
もちろんテレジアの視線。
「……だ、だから一旦引き取ってもらう。明日朝食後またここで会おう。おお、それから、みんな…………」
国王は一呼吸開けてから。
「今日ここでの話は誰にも口外しないように言明しておく。これは先にここにいた四人は後から入って来た者達に対しても何も口外しない、という意味でもある。それが賢明だろう」
すかさずヒバリコが平身低頭の姿勢をとる。
「御心くばり感謝致します!」
軽く頷き国王は言葉を続ける。
「それから、そうだな。昼二時からは今日の事件の対策会議を執り行うとしよう。ビロン殿、悪いが関係者一同に明日の対策会議の日時を伝えておいてくれ」
「はっ」
一礼するとビロンは部屋を出て行った。
バジーが一瞥する。
(明日朝食後か。俺は来ていいかな?)
「ヒ〜バ〜リ〜コ〜」
テレジアの声が相変わらずおどろおどろしい。
「明日まで首を洗って待ってなさいよ〜!!」
「はい、明日またお会い致しましょう」
「ふんっ!!」
テレジアはメルシー伯を連れどすどすと出て行った。
「それでは……先生!」
「はい、王妃様」
「あ、いえラソンヌ先生ではなくこっちの先生です」
「はあ……この御婦人も医者ですか?」
「え……」
「その、私が来るまでに王妃様を診ていたのがこの女性で……かなり手慣れた感じでしたよ」
「まあ! 先生ありがとうございます!」
かしこまって礼を言うマリーにヒバリコは手と首を横に振る。
「いえ、ただの応急処置です。姫様にも教えた簡単なものですよ」
「ああ、瞳孔を確認する……」
「何、そんな確認法があるのか!?」
ラソンヌが食い付いてきた。
彼はそこまでは目撃していない。
ヒバリコとマリーは顔を見合わせた。
この時代にはまだ無い診療と気付いたのだ。
「先生、どうします?」
「……ええい、もう広めちゃいます! ラソンヌ先生、これはです……」
説明開始する師を見てマリーは思う。
(結構茶目っ気のある人でしたのね。今まで気付いてなかった……)
こうして歴史はまた一つ変わった。
結局ラソンヌはヒバリコを医者と思い込んだまま帰って行った。
そしてマリーは。
「先生!」
「はい、姫様」
「今日は私の部屋にお泊り下さい。三人のお弟子さんも」
マリーは嬉々として言葉を続ける。
「募る話を目一杯語らいましょう!」
ヒバリコも微笑む。
「お手柔らかに」
とりあえず解散。
と言ってもマリーとヒバリコは一緒にいるのだからまだ色々起きそうです。
どんな会話になるのやら。




