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第四百八十八話 マリー反論す


 


 



 「魔〜女、魔〜女、魔〜女……」


 次第に大きくなる魔女の連呼。

 先導しながらフィリップは密かに微笑む。


 (何度も暗殺に失敗し、王妃の得体の知れない力に屈し、暗殺の手段が思いつかなくなっちまった。ならばその得体の知れない力を逆用するしかない! これが俺の逆転の一手だ!!)


 それは依頼者の意に沿うものというより自身の復讐を果たす為のものであった。


 フロンをうっちゃった兵達が観衆達に踏み入った。

 しかしフィリップは最早魔女コールを行っている観衆の一人に過ぎず、しかもその小柄な体を人混みの中に隠してしまっていた。


 「マリー様……」


 ビスケが駆け寄りハンカチーフを取り出した。


 「お顔をお拭き致します」


 「……ありがとう」


 主の頬に付いた血をビスケは綺麗に拭き取る。


 その間も魔女の声は広がっていく。


 ビスケの差し出した手鏡でマリーは血が拭き取られたのを確認する。


 「……よし!」


 

 

 ビロンが号令をかける。


 「観衆を黙らせろ!!」


 「はい」


 「えっ?」


 ビロンは声のした方を見る。

 当然そこには……


 …………前進を開始したマリーの姿があった。


 観衆の真ん前まで歩み寄ったマリーは声を轟かせた。




 「 魔 女 な ど い ま せ ん !! 」


 それはマリー特有の、声の大きさ以上に遠くへ通る声だった。

 一瞬魔女の連呼がかき消された感じになった。


 「この世に魔女も魔法もある訳ないでしょう! 魔女裁判もとうの昔に廃止されています!」


 声はここに集まった観衆の端から端まで届いていた。

 マリー一人の声で魔女コールに張り合っていたのだった。


 「嘘をつけ魔女め!! それじゃどうやって俺を吹っ飛ばしたんだ〜!!」


 カーク達に取り押さえられているフロンが必死にがなりたてた。

 呼応する様にマリーは観衆を見回した。

 

 「知りたいですか?」


 マリーの勿体ぶった態度に観衆の気が引き寄せられる。

 魔女コールがやや弱まった。

 

 「この私の使ったのは…………」


 わざとらしく数秒ためて置いたのちに……



 「幼少より十と八年に渡る厳しい訓練の末に身に付けた、 技 術 です!!」


 え…………?


 観衆の顔が拍子抜けした感じになってる。

 技術という単語が期待感に応えたものとは言えなかったのだろう。


 「そう、合気と呼ばれる格闘技術です!! 長年地道に学んで身に付けた技術を魔法呼ばわりするなど片腹痛い! 私が暴れん坊と呼ばれた理由こそ、この合気という格闘技術のおかげです!!」


 「おかげって……」


 ビスケが思わず突っ込みを口に出してしまった。


 「なんなら! 今その技術を使ってお見せましょうか?」


 「マリー様〜!!」


 カークが拘束したフロンの巨体を引きずりながら駆けつけてきた。


 「ぎええええ!」


 腹を地面に削る様に擦られて悲鳴をあげるフロン。

 構わずカークはマリーに突っ込む。


 「そんな事やってる場合ですか!」


 「あら、ご覧の皆さんを納得させる為に必要と思ったのですが」





 

 魔術じゃなくて技術。

 技能とか奥義とか言わないのね。

 まあ技術ならいかにも人間技という感じがしますが。

 フランスには達人技って概念あるのかな?

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