第四百五十五話 行方知れず
「とりあえずこれで終わりです。嘘偽りなく」
集合住宅を出た一行。
バジーは予定の終了をテレジアに聞こえる様に言った。
「終わりですと〜?! 私はまだヒバリコに会ってません〜!!」
仕方なくマリーが母に突っ込んだ。
「そんな目的で来たんじゃありません!」
「ではどこにいるのですか? 素直に言いなさい!」
「知りません!」
「知ってるでしょ!」
「知らない!」
言い合っている間に馬車にたどり着いていた。
馬車に乗りながらマリーが言い放つ。
「帰りますよ!」
「いいかげん白状しなさい!」
「だからいませんって!」
「このパリにいるはずです!」
「いるわけないでしょ!」
「ではヴェルサイユですか!?」
「もう! 好きにして下さい!!」
「後ろのここにまで聞こえてくる。こんなやかましい会話をヴェルサイユまで聞き続けるのか……」
メルシー伯はため息をついた。
一緒に馬車に乗るカークとビスケは最早我関せずの態度だ。
「私共は護衛の仕事を全うするのみですよ。主がどう騒ごうと関係なく」
割り切ったカークの言葉にメルシーは肩をすくめた。
「私もそれでいこう」
ヴェルサイユに戻ったマリーは食い下がるテレジアをなんとか振り切って国王の元へ戻ってきた。
「ふう、国王様、ただ今帰りました」
「おかえり、ずいぶん疲れているみたいだが」
「はい、お母様のお相手で……」
「君がその様な状態を見せるとは……」
「母は偉大なり、ですよ……色んな意味で」
「そ、そうか…………」
それにしても…………
(たしかにお母様の言う通りヒバリコ先生はその気になればいつでも私に会いに行ける……これは的を得た意見だった。なぜ来てくれないのだろう。そう言えば二、三年前目安箱に先生に似た字体の投書があったけど……)
こちらには分からない理由があるのだろうか?
(あったとしても来て欲しい! 今の私があるのはヒバリコ先生のおかげなのだから……)
思いをめぐらすマリーの様子にやはり普段と違うと感じた国王は、彼自身も思いをめぐらす事になった。
(はてどうすればいいか…………?)
「マリー」
「あ、はい!」
「まあ、なんだ……もう夕食だ。ゆっくり食事を取るといい」
「そう言えばお腹が空いていました。お心遣い感謝致します!」
空気がそれなりに和らいだ所で二人は揃って部屋を出て行った。
貴賓室で夕食を取ったテレジアはソファに腰掛けつつ独り言を呟く。
「ヒバリコめ。どこにいる? どう考えても娘に会わない理由が無い。マリアもどうしてああも堂々としらを切る?」
疑惑は深まり迷走する。
「……まさか本当に知らないのか? だったらヒバリコはどこに?」
食後自室に戻るなりマリーは呟いた。
「ヒバリコ先生はどこに?」
「どこに?」
「どこに?」
ヒバリコはどこに?
勿体ぶらずに出てくれば……
出るタイミング失ったのか?
まあ事情はおありと思いますが…………呼ばれてますよ〜!




