ダイナシ
停電、だったらどれだけ良かったか。
消えたのは電気の明かりだけではなく夕方の外から差し込む赤の混ざった光もナースコールの場所を教える小さな電球すらも明かりが消え、部屋の中は真っ暗になっている。
部屋の中に吹き込んでいたはずの少し暖かい風までもなくなり、身に覚えのある寒気だけが部屋の中を満たす。
突然回りの様子が変わった、そんなことはどうだっていい。何よりも面倒なのは後ろに現れたあの気配だ。この気配には覚えがある。
俺以外の二人はドアの前に立っており、こちらを見ていた。いや、正しくは見ていたといった方がいいか。
今必然的に後ろにいるあれの姿を直視してしまってる。
風紀委員長は目を見開き、ここから見てもわかるほど震えあがっており、生徒会長はいつでも動けるようにと懐に手を突っ込み構えを取っている。
「う、ぁ・・・」
風紀委員長は耐えられなくなったのか弱弱しくこえを漏らすと腰が抜けたのかその場に尻もちをつく。
「姫、こっちに来てくれ。そして絶対に後ろを振り返るな」
「生徒会長・・・」
生徒会長がいつもになく真剣な声でこちらに警告してくる。後ろのあれがどれだけやばい物なのか本能的に悟ったのだろう。
ただ、一つだけ言わせてほしい。
「誰が姫ですか」
こんな状況ではあるけれどとんでもないことを口走ったあん畜生に文句をつげた。
いや、危機的状況とか焦ってるときとかついいつも心で思っている呼び名が口から出てしまうのはわかるよ?でもなんで寄りにもよって姫なのかな!?
突然の指摘で緊張状態だった生徒会長もあっけにとられ「え、あごめん?」と疑問形で謝る始末。
なんだかそれっぽい空気を壊した俺が悪いのも確かだけれど・・・いや、むしろ今は壊すのが正解だったかな?
俺は後ろにいるそれに向かい合った。
うしろから「あ」と声が聞こえたのは気にしない。
予想通りと言っていいのかそこにいたのは昨日呼び出したあの『こっくりさん』。
実のところ二人が危険だとおびえた様子だったが、俺は全然そういう感情はなく「面倒だな」と少し軽い気持ちでいた。
これを呼んでしまったのは間違いなく俺の失言だと分かっていたからだ。
だってまさかマッチョ先生にビビッて帰っていったんじゃなくって自分にとりついてるとは思わないじゃん。
きっとリアが言っていた憑りついてる気配の片割れというのはこいつのことだったんだろうけれど、ここまでは約フラグ回収するとは思わないじゃん。
ただ、呼んでしまったのならもうそれは仕方がないことで何もなしに代償だけ持ってかれるのもしゃくだ。ならやることは一つ。
「コックリさん、コックリさんあの子はどこに?」
あの子、というのは当然この病室の主のことだ。
もう気が付いているとは思うが彼女の名前がまったく思い出せない。だからすごくざっくりと聞いたわけだけれど通じるかな?
そう思っていると誰も触れていないはずの窓ガラスに赤い文字が書かれ始める。
そこに描かれたのは
死階に降りろ
勇太は基本怖がらないからホラーにならないんだよ




