ア、マズイ
しばらく待合室で待っていると生徒会長がやってくる。
医院長にリアが呼ばれていったのだからてっきり入れ替わるようにすぐやってくると思ったけれど結構時間がかかった。
「やあ、四方山さんまった?」
「いえ、いま来たところです・・・ってこのやり取りさっきもしませんでしたか?」
「それ以前にその返しをこのタイミングでするほうが間違っている気がするのだが・・・」
流石にバレるか。さっきも聞いた言葉だったからデジャブ風にしたかったんだけどね。
それにしてもなんか少しやつれているように見える。
医院長にひどくからまれたからなのか、途中別の誰かに邪魔をされたのか・・・。
うーんとこういうときは・・・。
「おつかれさま」
生徒会長の手を両手で握り顔を見上げながら優しく微笑んで見せる。
これで少しは元気が出てくれるといいなと思ってやったのだけれど予想外に少し顔を赤くする。
あ、これクリティカル入った。
てっきりいつものように「誘ってるのかい?」とか冗談を言ってくるのかなと思ったけれど、やっちゃったか?
手を放すとその手を逆に握ってくる。
どうしたものかと作った微笑みのまま首を揺らしていると横からわざとらしい咳払いが聞こえ、正気に戻ったのか手を放してくれる。
「ちゃんと許可は取って来たのか?」
「ああ、ちゃんと取れたさ。404号室だそうだよ」
「演技悪・・・」
404号室はなぜか縁起が悪い部屋とか言われたりすることが多い。
というのも四という文字が「し」とも読むせいで死を連想されるとかなんとか。
それが二つも並んでいるのだからとても縁起が悪く、マンションや病院によってはその部屋番号がない場合があるらしい。
とはいうものの、そういう場所に全くお目にかかるようなことはなく、現にこの病院ではあるわけなので迷信だとは思う。
というかうちのマンションも404号室があってそこに早川が住んでるしね・・・。本人ぴんぴんしてるから大丈夫でしょ。
ただまぁ、マンションだと売れ残ることが多いみたいで安く貸し出してることが多いから余計うわさが広がってるみたいだけど。
・・・
・・
・
とりあえず部屋がわかったので移動することになった。
いまさらなのだけれどこのイケメンコンビはともかく、俺が行っても大丈夫なのだろうか?
一部女子からすごく嫌われているし、もしかするとアンチの一人かもしれない。
まぁ、からかい半分で二人の言葉に乗って悪ふざけしてるのも悪いんだけどね。
「・・・」
三人でエレベーターに乗り込んだわけなんだけれど、二人ともなぜか隣にぴったりとくっついている。
いや、手とか繋いでたりしてないよさすがに。
このエレベーター骨董品と思えるくらい古い物ではあるけれどなんとか車いすと一人がのれる程度の大きさではある。
とはいえ4人は普通に乗れる大きさなので、今みたいな横一列に並ぶというあほなことをしなければ十分な広さはある。
初めに乗ったのが運の尽きだったか。微妙に二人が斜め前にいるせいで壁に追い詰められている。
「そういえばリタさんとなに話していたんだい?」
そう風紀委員長が訪ねてくると俺より先に生徒会長が反応を見せる。
「え、あれの言葉わかるの?」
あれってなんだあれって。相手が女性だからってさすがにひどい反応過ぎない?
「あはは・・・あ、そろそろつきますよ」
何語なのかとか、どこで勉強したのか聞かれるのも面倒なうえに呪いについて話してましたなんて言えるわけもなく、適当にはぐらかして二人の手を握って早歩きで引っ張っていく。
うん、「大胆だね」とかいう声は聞こえない。
病室の前までつくと、二人の手を放し軽く二回ほどノックする。
「四方山さん。二回はトイレの時のノックだよ」
「・・・」
追加でもう一回戸を叩いた。
しかし、中からは反応はない。
寝ているのかな? そう思ってドアを開けると。
病室の中にはだれもおらず、開きっぱなしの窓でカーテンが風で揺れているだけだった。