コレドウシヨウ
病室にはだれもおらず、カーテンと足を吊り下げるガーゼが風で揺れていた。
「おや、お花でも摘みに言っているのかな?」
会長、いくら濁した表現を使ってもそれはデリカシー足りませんよ。
しかし、生徒会長の言うとおり部屋を留守にしている理由がそれくらいしか思い当たらない。
なんせ医院長に面談許可を取ったうえでの訪問となったら誰かに連れられて外に出ているとは考えにくい。
「仁也、それはさすがにどうかと」
「冗談だよ。三宅さん曰く外出許可は出ていないらしいし、今日の面会はご両親だけ。それも午前中だったらしいし」
三宅さん・・・というのはきっとこの病院の関係者のことだろう。
「ならご両親が連れだしたという考えは?」
「それもないだろうね。夜中なら無理もないかもしれないけれど、足を怪我した子をだれにも気が付かれないなんて無理だ」
それもそうか。
田舎に近いA市ではあるが、診療所などではなくしっかりとした病院ではある。古いせいか監視カメラもなく、後付けで付けられたナースコールと看護師の見回りだけが頼りだというほどセキュリティーはあまりにも弱い。
しかし、出口はフロントの前を絶対通らなくてはならず、足を怪我しているならなおさらエレベーターを使わなければ4階から移動するのは難しい。
「というかなんで病室が4階?」
1階は診療室などがメインで部屋が少ないけれど、足を怪我しているのだから2階とかもっと優しい場所があったのでは?
「無断外出されないようにだって」
「うわぁ・・・」
あまりの理由につい声が漏れてしまう。
いくらめんどくさいからって簡単には出れない場所に隔離するのってどうなの?
「まぁ、それはともかくとして。誰かが連れ去った可能性は高そうですね」
「というと?」
病院外部にという話であれば先ほど生徒会長が否定したはずだ。
「足を悪くしているのに松葉杖なしで移動することがありますか?」
そういわれてベッドの横に松葉杖が置かれていることに気が付く。
「車いすを使ったのでは?」
今どき松葉杖以外にも移動手段はいくつかある。
「いや、基本この病院では車いすの貸し出しはしてないはずだよ。なんせバリアフリーなんて考えられていないからね」
いや、車椅子くらいあるでしょと思うのは俺だけだろうか?
いくらこの病院の階段意外に手すりが取り付けられておらず、出入り口がスロープすらついていない階段だとしても同じ階を移動するなら車椅子が使えるはずだ。
「それにここのトイレ、個室が狭すぎて車いすだと座れないんだよ」
「それは致命的すぎません?」
ほんとここ不便が多すぎない?
よくこの病院つぶれないね。
「他にもあれ見たらわかるけれど、彼女まだ一人で歩ける状態じゃないはずなんだ」
そう言って指さされた先にあるのは天井から下げられた不自然なガーゼのことだ。
あれ何か気になってたんだけれど聞くに聞けなかったんだよね。
「あれはギブスをする際に固定するやつさ、正式名称はさすがに知らないけどね。あれは一人で外したりつけたりするのが難しいし、なるべく安静にしなきゃいけない状態のはず。看護師の人なしで移動するとは思えない」
「こっちも気になりますね」
風紀委員長がさしたのは床の上に落ちた学校鞄だ。
蓋が開いた状況で落ちたせいか中身が散乱してしまっている。でも、特に不思議ではないのでは?
「単純に落としただけでは?」
「いや、もしそうならあんな離れた位置に落ちたりしない」
言われてみれば鞄の位置がそんなきはする。うっかり落としたにしてはひどい散乱具合だ。
それに、カーテンで見えにくかったけれど花瓶も机の上で倒れている。
「となると・・・もしかしてさらわれた?」
「いや、その結論はいろいろと飛びすぎてるかな?」




