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コレジャモノタリナイ?

助け出した女子はやっと呼吸ができるようになったからかせき込み、彼女の背中を宮崎さんがさすっている。

実際のところ彼女を救えたのはあまりにも都合がよすぎる展開だと思っている。

まず、鏡の向こうとこっち側をつなげる方法が合わせ鏡であること。

合わせ鏡は0時に覗けば守護霊が見えたり、時間によって自分の過去や未来の姿も見えると言われていたりいろいろと都市伝説は多い。

その中にこの世ではない場所につながるという都市伝説があった。

合わせ鏡は霊界につながるとされており、このトイレでも別空間が向こう側には映し出されていた。

4枚の鏡があわされればさらにとんでもないことが起こるとされているが、今は関係が無いのでおいておこう。


鏡の中に入れると思ったのは鏡の向こうに自分が映っていなかったからだ。

昨日の男子トイレでも同じような状況になり、鏡から無数の白い腕が伸びて引き込もうとしてきたわけだが、その時は自分ははっきりと映りこんでいた。

それなのに、今回は全く自分の姿が映し出されていなかった。だから向こうに入れると思ったから鏡に頭を突っ込んでみたわけだ。その後早川が入れなかったのは彼女の姿が鏡の向こう側に映し出されていたからで、鏡だから入れなかったのか鏡の向こう側の自分とぶつかったから入れなかったのかなど考察し甲斐はある。

最も鏡の中の光景からして自分が対処できる状況でもなく、早々に退散したわけだけれど居場所が予想から確信に変わっただけでもかなりの収穫だったと思う。


で、鏡の向こう側にいた彼女を救い出す方法なのだがいくつか条件があった。

まず特定の場所に霊道を作り出す方法。

これはあの少女と首を吊った女子生徒を避けながら彼女を救い出す方法が必要だったからだ。

金髪の少女に関しては公衆電話の怪異を止めてくれたり、車に引かれそうになったりしたところを助けてくれたりと味方になってくれた場面もあれば、男子トイレの時なように向こう側に引き込もうとしたり、声からしてポストの時にやり直しさせてきたのも彼女だと思うので、あまりにもやっていることがちぐはぐで目的がつかめないから信用しきれない。

首を吊っていた女子生徒もあれが何なのか判断するのが難しい。

幽霊ならば十字架ブレードや銀の銃をぶっ放すいかにも悪魔祓いですと言いたげな早川に任せれば何とかなるかもしれないが、都市伝説ならば専門外。昨日の足曾木婆みたいな怪異だった場合、完全な消滅は無理どころかまったく意味がなかったから倒すのが不可能。そうなればお手上げだ。

そうなれば敵対した場合まったく情報がないから負けるのは確定している。

ただ、霊道の作り方に関してはもうそこに答えがあったわけだ。

今回は合わせ鏡、鏡に映っていない場所からこっちにちょっかいを出される心配はあったけれど、昨日わざわざ鏡から腕を伸ばしてきたのは合わせ鏡以外からこっちに出入りできなかったことを指している。

あとは移動させて彼女らが映らない位置で合わせ鏡を作ればいいだけだ。


次に鞄女子(仮)を救出する方法。

鏡に映ったとはいえ、向こう側に入り込んでホースを切るのは難しい状況だった。

なにせ、向こうに入れる俺が腕を伸ばしてカッターなどで切ろうとしてもホースはかなり丈夫に作られていてハサミやカッターでは簡単に切れない。そんな状況で向こうっつながっていた場合向こうの二人につかまっていた可能性は

大いにある。

偶然にも一回目はうまく合わせ鏡になっていなかったことが幸いし、早川が映りこんだ。そして向こう側にいた鞄女子の姿が偶然にも鏡に映ったこと。

そのコンボが成立したおかげでうまいこと鏡の向こう側に映った早川がホースを切ってくれた。

あとは合わせ鏡が成功すれば俺が彼女を引っ張り出せたわけだ。


実は不謹慎にもつまらないと思ってしまった。

彼女の命がかかっていたのに何を言っているんだと言われても仕方がないことだけれど、ゲームとかだったらもっと事前情報で相手の情報と重要アイテムなどを集めて攻略するようなそんな前準備が必要だ。

それがこうも幸運だけで切り抜けれていたらあまりにも味気が無い。



「大丈夫柄本さん」


「ご、めん。ありが・・・とう」


ところどころ咳をしながら声を出す彼女。

そんな彼女は俺の姿を見ると引きつった表情をするのだった。

まぁそりゃ女子トイレに男子がいる現状がやばいよね。なんて思っていたら。


「うえ、四方山さん?」


どうやら自分がいじめている相手(こっちは自覚なかった)が目の前にいる現状の嫌悪感による表情だった。


「その・・・助けてくれてありがとうござ・・・ありがとう」


「え、ああ。どういたしまして?」


ありゃ? 思ったのと違って礼儀正しい感じ?

てっきり嫌味でも言ってきたり、こっちを無視して二人にだけ礼を言うと思ってた。


「あの、鞄の場所聞きに来たんですよね」


「ああ、うんそうだね。鞄がなんとかできればそれも何とかなるから」


そう言って彼女のスカートから漏れ出続ける水を差すと勢いに負けて膨れ上がっていたスカートを抑えて少し赤面する。


「えっと隠した場所は校舎裏のため池の中です」


うえ、あそこか。

校舎裏は全く整備されていないせいで無駄に広いのに植物が生い茂っている。

そこにある池も当然濁りきっていてごみとかも捨てられている。

これ、帰ったら鞄洗濯しないとな・・・。


「その、ごめんなさい」


「う、うん。教えてくれてありがと」


ほんとに申し訳なさそうにする彼女を見てなんだかこっちが悪いことをしたみたいでちょっと調子が狂うな。本当にこの子がやったのだろうか?

早々にこの場を退散したく早々に女子トイレを後にする。


・・・

・・


side-宮崎-


早々にトイレを出て行った四方山とその後をついて行ったみゃーちゃんがいなくなったのを見送って柄本さんへと視線を向ける。

自分からだばだばと出続ける水を見ながら少し不思議そうにしている彼女を見ながらその姿に違和感を覚える。

いつも通りの少しでっぷりとした体格にぼさぼさのまったく手入れされていない髪は彼女そのものだ。

でも彼女は自分の境遇を他人や自分の環境のせいにするような性格で、謝ったりなんて絶対にしない。そうしないはずだ。


「ねぇ、柄本さん」


「ふぇ!? え、なに?」


「・・・ううん、助けてもらってよかったねって思って」


「あはは・・・ほんとにね。だから先生にも愛されるのかな」


その言葉に少し同意する。好奇心旺盛で、何もかも積極的。いやなことや敵対してる相手でも助けてくれて中身だけでもかなりいい。

確かに同意できるけどそのしゃべり方と言葉から確信に変わった。


ねぇ、アナタハイッタイダレ?


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