足曾木婆ーsid宮崎—15
「あ、え・・・?」
自分の口から間抜けな声が漏れ出る。
突然人形があのババアが姿を変えて襲ってきて、それをかばわれて四方山の足が奪われて・・・。
あまりにも突然なことが多すぎてまったく状況に追いつけていなかった。
そうだ、確かにあの時みゃーちゃんが撃った銃弾が四方山に当たっていたはずだ。
なんで額の穴がふさがってるの?
そもそもなんで額から血を流しているのを平然としていた?
確かにおじいちゃんの話は本当にあった話だ。でも、彼が血を流している姿を見て「そんなこともあるか」と納得してしまった。普通に考えれば頭蓋骨に穴をあけるような大けがしたなら足がなくなったとき並みに驚いてもおかしくないはずだ。
「何もなかったように治ってるでしょ?」
「なん、で?」
「さあわかんない。でも、肋骨が折れても顔に傷がついてもいつの間にか治ってた。こんな『奇跡』が起こったなら夢に出てきた神様は本物だったんじゃないかって思うんだ。俺の体はその日から変わったんだ」
よくよく考えればおかしな噂が多かった。
トラックにはねられて登校して翌日に退院しただの、階段から落ちて平然としていただの、大けがしているはずの内容がかなり多い。
いくら丈夫だからと言っても限度がある。それがもし今回のようにすべて怪我が治っていたとしたら?
本当に彼は人間?
「うん言いたいことはわかるよ、確かに『化け物』みたいだって」
「あ、ごめん・・・」
「いいってなんせ俺はオカルト研究部に入ってるんだ。こんな異常的な奇跡を望んでいたに決まってるじゃん!」
私の疑問が声に出ていたのか、表情に出ていたからなのかもしれない。
自分の胸をたたいて笑ってみせる。
・・・ただ、その笑顔は心なしか無理やり作っているように見えた。
簡単に死ねなくなり、一度だけ死ねなくなった。確かに見方によっては『奇跡』にみえるかもしれない。
でも、そんなのは嘘だ。簡単に死ねず苦しまなくちゃいけないそんなの『奇跡』なんて言えない。
どう考えても『呪』でしかない。
あの作り笑いはきっと自分でも『奇跡』ではないと気が付いているからだ。
彼をそんな風にした『神』とは一体・・・。
「あ・・・」
「?」
不意に四方山が声を上げる。何かを見つけたように私の背後に視線を向ける。
またあのババァがいるのではないか? そう思い恐る恐る振り返ると昼間の停電の影響か街灯の光が明滅する。そんな中一瞬だけ人影のようなものが目に映った気がした。
しばらくすると街灯は復活するが、その光の下に見えた影はなかった。




