足曾木婆ーsid早川ー4
シュールギャグが書きたかったのになんでホラーなんて書いてるんだろ…
管狐が目を覚まし、部品探しを再開する。
先ほどから尻尾をある方角に指示しているから多分あっちなのだろうけれど、さっきまでぐっすり眠っていたくせに「あっちいけ」と言わんばかりに指示しながらあくびをする姿を見て無性に腹が立つのは私だけ?
こいつ、振り落としてやろうか。
それにしてもさっきはかなり痛いことを言ってしまった。
何が人を救う仕事をしているだ。そんなたいそうなことでもなく、秘密主義な面倒ごとでしかないのに格好をつけて言ってしまったが、思い返してみればかなり恥ずかしい。
そんなことを考えているとセブントゥエンティの前まで到着した。四方山がよく通っているらしく、全国シェアNo.2のコンビニで、「弁当がボリューム詐欺だが、スイーツとチキンが美味しい」とよく言っている。
でもここは・・・
「ねぇ、ここさっき探さなかった?」
「やっぱり?」
宮崎さんも疑問に思ったらしい。ここに来たのは市内にある6店舗中5店舗目、つまりさっきい場所の前に探索した場所のはずだ。その時は何も見つからなかったわけだが、ここにあるのだろうか?
そう思っていると今度はコンビニの裏手にある駐車場のほうを指示す。
もしかして裏手に何かいる?そう思いコンビニの角からのぞき込んでみると・・・。
「・・・」
「なにもなくない?」
「そうね・・・」
四方山の話によると別の場所では上顎から上がない女性に襲われたと言っていた。その話を聞いててっきりこっくりさんのような化け物がいるのかと思った。
それなのに人どころか車すら止まっておらず、何かが潜んでいる気配がするわけでもない。
一体ここに何があるというのだろうか?
恐る恐ると駐車場に出てみると管狐は駐車場ではなく、コンビニ裏に設置されているゴミ箱を指していることが分かった。
ゴミ箱と言っても客が使うものではなく、コンビニ側が廃棄弁当や梱包などを捨てる鍵のかけられるもの。
確認してみると南京錠でしっかりと施錠されており、開けることはできない。
見る限りつい最近取り換えられたのか大した傷やぐらつきなどもなく、しっかりとしている。
もっとも、どこでも見るような金色でメッキの施された安物なので、動画サイトを見れば簡単に壊し方は出てくるし、専用の弾しか入っていないとはいえ銃で一発だ。
防犯としてはあまりにも貧弱に見えるが、鍵を壊してまで開けたいものでもないので「面倒くさい」と思わせることができれば十分なのだろう。
「え、これの中?」
「みたいね」
宮崎さんが「うへぇ・・・」といやそうな声を上げる。私も同意見だ。
何がうれしくてゴミ箱の中をあさらなくちゃいけないのだろうか。いくらゴミ袋に詰められて捨ててあるにしても、虫や匂いについてはどうにもならない。
「やるしかないわよね…」
宮崎さんも決したかのようにうなずく。
とはいえ鍵を持っているわけでもなく、ピッキングなんてやったこともない。
やはり壊すしかないのだろうか?
そう考えていると、首に巻き付いていた管狐が蛇のようにシュルシュルと腕までやってくると、南京錠を咥えた。
まさかと思い、咄嗟に手を放し、もう片方の手でかをかばうが、破片が飛び散るようなことはなく、カランと金属が落ちるような音だけが鳴り、「ひぇ・・・」と短い声が聞こえた。
どうなったのかと見てみると、南京錠は無残にも噛み千切られていたのだ。それも無理やりかみ砕いたのではなく、穴を複数開けて無理やり切り落としたような跡。
改めて自分に巻き付いていたこれが化け物だと実感させられた。