領主の館で
スマホ機種変更して、無事IDも引き継げました。
よかったー!!
フレイはずっと影に入っている。
(エルフには私の姿が見えるかもしれないと思ったので、隠れてましゅ)
(鑑定したら精霊視っていうのがあったから、それでよかったと思う)
(ユーリしゃん?人に対する鑑定は危険でしゅ。同じく鑑定を持っている人や、勘のいい人には気付かれてしまいましゅ)
(そうなんだ。じゃあ私も鑑定かけられたら分かる?)
(一応、偽装も持ってましゅから。でも、弾く事もできましゅ)
それは相手もできるって思った方がいいよね?
城壁に囲まれた町?が見えてきた。
「身分証は持っているかな?」
「これですか?」
「あー。ステータスボードじゃなくて…まあそれでもいいか」
5歳からは入街税を取られるらしいけど、私はまだ4歳だ。
「あの、私、町に着いたら冒険者になるつもりだったんです」
「まあ、もう時間も遅いから、それは後にしよう。町並みに見覚えは?」
「ないです」
町というよりは村かな。田んぼや畑がある。敷地は広大だけど、塀があるから自分用の土地を得るのは難しいかもしれない。
(この町には結界障壁が張ってあるみたいでしゅね)
(うーんと、ある程度の魔物は侵入できないっていう?)
(そうでしゅね。エメルしゃんも弾かれるかと思ったのでしゅが、レベルが高いせいか大丈夫でしたね)
入り口にほど近い所に兵士の詰め所と領主の館があった。
とはいえ、こちらはメインの入り口から反対側だ。
「あの、本当にいいんですか?」
「とりあえず悪人でない事は確かだし、教会で孤児と同じ扱いは嫌だろう?」
どんな扱いなのかは分からないけど、良くはないんだろうな。
「家族が見つかる数日間位は構わないよ」
出迎えてくれた奥さんは、人族みたいだ。それと生意気そうな同じ歳位の男の子は、私を見て鑑定をかけてきた。
嫌な感じがしたから弾いたけど、男の子はびっくりしていた。
「テッド、この子はユーリ。家族とはぐれてしまったんだ。仲良くしてあげて」
「父さんはお人好しだな」
「こら、テッド」
「反抗期なのかしらね?私はシーナ。元冒険者だから、そう畏まらないで」
栗色の髪の、ふわふわとした印象の人だ。二十歳位に見えるけど、末息子って言ってたから、上にも子供はいるんだろうけど、とてもそんな風には見えない。
見かけは二十歳位のエルフの人と並んでも、似合いの若夫婦にしか見えない。
夕ご飯を、エメルの分まで貰ってしまった。
モチには、私の水魔法だ。
「あら。スライム。上位種かしら?」
「はい。進化しました」
「それよりもグリーントータスの方だよ。ちゃんと登録しないと、違法になるからね」
「それも含めて冒険者ギルドに行きたかったんです」
「まあ、年齢制限はないけど、普通4歳では登録しないかな…」
「あの、家族と会えたらこの町で暮らしたいんですけど、住むのに手続きはいりますか?」
「うん?手続き?ああ。家が欲しいなら、不動産で相談してもらえばいいけど?」
ちょっと違うけど、まあいいか。税金とかってどうなっているんだろう。
「あら。冒険者になりたいのね!ならお姉さんが明日連れて行ってあげるわ!」
「シーナ、君が行ったらおおごとになるだろう?」
「別に仕事はしないわよ。一応引退って言ってあるし。それに小さい子を一人で行かせる訳にいかないじゃない」
「素材を売って、当面の生活費が欲しいんですよね」
「あら。どんな物があるの?」
「これとかどうですかね?」
マジックバッグから取り出すふりをして、収納庫からタイガーベアの皮を出す。
「げっ…まさかあの山で?」
「違う場所ですけど、前に父が狩ったんです」
「はあ…良かった。それならかなり高く売れるはずだよ。金貨10枚は下らないと思う。そのバッグは、もしかしてマジックバッグかい?」
「家族の物ですけど」
「ほら。やっぱり私がいた方がいいわ。ユーリちゃんだけでこんなの売ろうとしたら、絶対絡まれるもの」
「ご迷惑になるんじゃ?」
「うふふ。大丈夫よぉ。これでも私、暗黒の魔女って呼ばれていたのよ?私に絡むと呪われちゃうんだから」
うわ…ゆるふわなイメージに思いっ切り反しているな。
申し訳ないけど、お願いした方がいいな。
「さて。もう遅いから休もう。テッドの奴、君がユーリにばかり話しかけてたから、やきもちでもやいたかな?」
そういえば、いつの間にかいなくなってたな。
メイドさんに客間に案内されて、明日には宿屋に移ろうと心に決める。
一般的市民の感覚として、誰かに世話されてばかりでは恐縮しきりだ。
(みんなごめんなさい。なるべく早く出してあげるから)
(気にするな。無理して疑われたら元も子もない)
さて。もう寝よう。
ベッドに入るも、気配を殺して近づく気配に気付き、そっとベッドを抜け出す。
小さく叩かれる扉。ユーリは警戒しつつもそっと扉を開けた。
テッド君?…鑑定を弾いたから、怪しまれたかな?
「あんたもしかして、落ち人ってやつ?」
「…!」
テッドは、日本語でそう言った。




