全員集合
テッド君…?
「反応したって事はそうなんだろう?安心してくれ。誰にも言わない。ああ。俺は違うぞ?転生者だ。あー。日本語通じて良かった」
「テッド君は、落ち人を見つけてどうするつもりなの?」
「近年は特に多いらしくて、女神に頼まれた。助けてやれって。てか日本語と、いいとこ英語位しか分からないのに、どうやって確認取るっていうんだ」
「助けるって、どうやって?」
「聖魔法のディスペルで、奴隷は解除できるらしいんだ。魔法神の加護はもらえたから習得速度は早いはずだけど、まだ使えない」
「私もまだ使えないな」
「とりあえずへましなきゃ大丈夫だろう?ユーリは。てか俺はまだ子供だから、自由もないし。けど落ち人には家族はいないだろう?」
ここまでわかってるなら、隠す意味はないかな。
「私が落ちてきたのは約三年前。落ちる前は三十路目前だったのに、落ちたら二歳だった。場所も山の向こう側だったから、従魔に助けてもらいながら、やっと山を越えたところだった。家族は、人化を覚えた従魔達」
「あんな最果ての地に落ちたのか。そういう事もあるんだな。てか、魔物って人になれるのか」
「運が悪いのは昔からだから。他の落ち人の事も知ってるの?」
「ああ。噂だけど、王都の貴族が手に入れたらしい。まあ、今の俺にはどうしようもないんだけど」
貴族の息子なら落ち人だと疑われる事もないだろう。
「テッド君の両親は、転生者だって知ってるの?」
「言える訳ないだろ」
「言ってもあの二人なら、受け止めてくれそうだけど」
「そうかもしれないけど、俺だって怖いんだ!」
「へえ。恵まれた環境に転生できたのに、臆病だね」
「うっさい!ばーか。お前なんて嫌いだ!ばーか。さっさと出てけ!」
このお子様は。やっぱり体に精神は引っ張られるものなんだな。
「こらテッド!お部屋にいないと思ったら、ユーリちゃんと喧嘩?」
「べ、別に喧嘩とかしてないし」
「とにかく、もう寝なさい!」
次の日。ギルドにはお子様もついてきた。
「なあにー?ママを取られると思った?」
「なっ、俺は仕事!お前より先輩だからな」
「テッドは、この前五歳になったから、薬草採取のお仕事だけ許してあげたのよ」
「なんだ。ほんの数日の差じゃん。私だってもうすぐ五歳だし」
「なーんだ。俺の方が年上じゃん!どうりでチビだと思った」
「うふふ。仲良しさんね。良かったわね?いい友達ができて」
「友達なんかじゃない!誰がこんなチビと」
「シーナ様、実はテッド君は…」
「わ!このバカ!言ったら承知しないからな!」
「どうしようかなー?」
「くっ…勝負だユーリ!薬草の採取勝負!」
「今日は私、忙しいもん」
「今日って言ってないだろ!明日!逃げるなよ!ユーリ!」
「お坊っちゃまになんか負けないもん!」
「俺だって、将来はエーファ兄さんに負けない冒険者になるんだからな!」
ユーリは、首を傾げる。
「2番目のお兄さんで、エルフなのよ。もう成人してて、そういえばこの前の手紙でBランクに上がったって言ってたわね」
「げ。まじか。ううっ、10年のハンデなんてすぐに乗り越えてやる!」
てか、二番目のお兄さんが成人?…シーナ様って実は結構なお年…
「ユーリちゃん?私はまだ25よ?変な誤解しないでね」
え、笑顔が怖い。この人は怒らせちゃだめな人だ。
「前の奥様はご病気でね。その上にもライアンという騎士をしているお兄さんがいるのよ。実は子供の方が年齢が近いとか、変な夫婦よね」
まあ、エルフは不思議種族だからかな。
シーナさんのお陰で無事素材を売る事ができた。一応、ダンジョン産の素材は売ってない。きれいに形が整っているから即ばれるからね。そして、ダンジョンの場所を聞かれても答えられないし。
なんだかんだで金貨20枚以上手に入れられた。
魔石も売ってくれと頼まれたけど、付与にも魔道具にも使いたい。
それと、忘れずにエメルの従魔登録もした。首が引っ込むから、甲羅に直接穴を開けて、登録用の魔石をつけるらしい。
(痛くない?エメル)
(平気よ。これで堂々とユーリを守れるから、嬉しいわ)
ちなみに、スライムは上位種でも登録は要らないようだ。
テイム出来なくても便利に使われているし、魔法の使える種類以外はたいした危険もないかららしい。
うちのモチは水魔法使えるけど、初期魔法しか使えないから攻撃力はない。
グリーントータスは命令すれば魚をとってくるのでそれなりに人気らしい。
テイマーの命令は、言葉に魔力をのせると従魔は逆らえないらしい。
私はそんな事一度もした事ないけどね。
ギルドカードの職業がテイマーになって、普通は市民カードか、魔道具ギルドが発行するカードが身分証になる。
町に入る時は入街税、そしてギルドに売られたりする素材等に税金がかけられているそうだ。
消費税的な物はないから食料品は安い。小麦も麻袋一つ買って銀貨3枚。
魔道具は、高かった。これは作り手に利益が還元されるからで、だからポーションも高い。登録すれば私もポーション売ったりできるけど、うちの子達が使う分を作るだけで充分かな。
ポーション瓶も専用の物を買わないといけないし、作っているのが子供だと、買い叩かれそうだし。
外で薬草を見たいと言うと、テッド君もいるはずだから、一緒に迎えに行くと言われた。
「ユーリちゃんの持ってるマジックバッグはもう目をつけられていると思うわ。普段使いはやめた方がいいわね」
あー。納得。けど、この一見優しそうなお姉様以外には負ける気がしない。
とにかく外へ。そしてみんなと合流しよう。
「あんまり遠くに行っちゃだめよ?」
草原は、見晴らしが良すぎて隠れられないし、門の上から兵士達も巡回している。
魔物を弾く為の結界障壁は魔術具だけど、不完全なものらしい。
スライムなんかは完全にスルーだし、エメルも大丈夫だったけど…他の子は弾かれたりしないよね?
木の影に隠れたけど、死角にならないな。
(ユーリ、どう?)
(ちょっと待って!向こうの岩影なら!)
テッドが何気にシーナさんの気を引いてくれている。
ちょっと見直した。
「ムーン、モコ、チャチャ」
人化して出てきた三人に、ぎゅっと抱きつく。
「あら?ユーリちゃん、もしかして」
「家族です!お父さんと、お姉ちゃん達」
「だからユーリ、ボクは男の子だよ!」
「娘が世話になった。かたじけない」
かたじけないって、ムーンてばいつの時代なの。もう。多分、敬語と混ざっちゃっているんだと思うけど。
「こちらこそ。息子と仲良くしてもらえて嬉しいわ」
「だから仲良くなんてないってば!…ユーリ、貸し一つな」
うわ。可愛くない!ちょっとでも見直して損した!
まあ。ここは大人の対応だよね。
「本当に、色々お世話になりました。テッド君にも色々と教わって…生後半年で魔法使っちゃうなんて、どんなラノベのヒーロー?」
後半は日本語で言ったので、周りはきょとんとしている。
「この…っ!明日の勝負、忘れるなよ?」
「ふうん。それで薬草を握りしめて、ハンデなしにしたんだ。大人の対応だね」
「あっ…!お前こそ!手伝ってもらうのは無しだからな!」
むしろ私がハンデやらなきゃならない位だと思うけど。採取が雑すぎる。
ムーン達の冒険者登録もして、ムーンは凄腕のハンターだと思われたらしくて、期待の眼差しを向けられた。
シーナさんにお勧めの宿も聞いて、別れた。
危なかった。人化が解ける所だった。
(みんな気をつけて。解けそうになったら無理しないで、影に入ってね!)
「それよりも、ユーリが変な事いうからみんなボクの事、女の子扱いするんだけど!」
「可愛いんだから仕方ないよ。モコ、人生諦めも肝心だよ」
ズボン履いてて髪も肩で揃えてあるのに女の子にしか見えない。
この世界の女の子は髪を伸ばしているのが普通なのに。
チャチャも髪は短いけど、男の子には間違われなかった。無表情でミステリアスだから、みんな注目していた。
ムーンは素で迫力があるから、背中に背負った大剣もあって、引かれていた。
テッド君の家より私の家族の方が謎家族だね。




