安心して
どうやって小春ちゃんの彼氏を排除しようか考えていたある日。
「ねぇ光希、最近誰かに見られてる気がするの」
「ストーカーとか?」
「でもっ、もしかしたら気のせいかもだし、あんまり気にしなくても……」
「ううん、少しくらいは警戒した方が良いよ。何があるか分からないし」
「うん……」
「僕が調べてみるから、安心して」
もし本当にストーカーが存在するなら好都合だ。あの男と同時に排除できるかもしれないし。
それから僕はストーカーの正体について調べてみると、思っていたより簡単に見つかった。隣のクラスの……名前忘れちゃった。まぁ良いか。
何はともあれ、小春ちゃんの隣にいる人物は、僕一人で充分なんだから。
それから数日後。小春ちゃんの彼氏が事故に遭った。学校では、例のストーカー野郎が自転車で轢き逃げしたという話題で持ちきりだった。
「ストーカー……やっぱりいたんだ……どうしよう光希……!」
「落ち着いて、小春ちゃん」
僕はそっと小春ちゃんを抱きしめた。優しく背中もさすってあげる。
「大丈夫。警察に捕まったらしいからさ、安心して」
「でも……」
「また自分のせいで、彼氏くんが狙われちゃうって思ってる?」
小春ちゃんは小さく頷いた。
僕は口元が緩みそうになるのを抑えるのに必死で、それ以上の言葉はかけられなかった。
放課後、小春ちゃんの彼氏が入院している場所に向かった。正直行きたくなかったが、小春ちゃんがどうしてもと言うから一緒に行った。
二人っきりにさせるわけには、いかないからね。
「大丈夫かな……」
病院へ向かう途中、小春ちゃんはずっと不安そうに俯いていた。
「命に別状はないって聞いたし、きっと平気だよ」
そう声をかけると、小春ちゃんは小さく「うん……」と返した。
けれど、その表情は全然安心していない。
僕は震えている小春ちゃんの手をそっと握った。
すると小春ちゃんの震えが少し収まっていった。
そして病室に着くと、小春ちゃんを見た彼氏くんは、
「どちら様ですか?」
記憶喪失になっていた。
「私は……日向原小春って言います……」
それから小春ちゃんは、恋人だったことを隠し、友達として軽く話し、病室を後にした。
「彼女だって言わなくて良かったの?」
「うん。だって、私のせいで彼が傷つくのは嫌だし」
「そっか……優しいね」
病院を出たあと、小春ちゃんはしばらく黙ったままだった。
「忘れられちゃったなぁ……」
ぽつりと零れた声は、今にも消えてしまいそうなくらい小さかった。
僕はそんな小春ちゃんの頭を優しく撫でた。
「でも、彼氏くんが無事で良かったじゃん」
「うん……そうだね」
小春ちゃんの表情は無理やり笑っているように見えた。
本当に優しい子だと思う。
自分が傷ついてる時ですら、相手のことばかり考えてるんだから。
優しくて何も知らない無垢な女の子。それで良いんだ。
それにしても記憶喪失か。
頭を狙って正解だったな。




