閑話 恭也たちから見た優臣
「ねぇ、もう少し早く作れないかしら?」
「無理だ」
「そう……」
地下の研究室でポーションを作っているとマヤ姉がそんなことを言ってきた。確かに作れないこともないが、今日は気分がのらないからやはり無理だろう。
「それにしてもマヤ姉は相変わらず安定してるな」
机の上に並べられたたくさんのポーションを見ながらそんな感想を漏らす。
マヤ姉はいつでも一定のペースで、それもそこそこの速さでポーションを作っている。それに品質も良く安定しているので仕事の面だけ見れば完璧だ。……人に無理やり姉と呼ぶように言い、言われたら言われたで嬉しさのあまり恍惚とした表情を浮かべたり喜びの声をあげたりする性格でそれは相殺されてしまうが。
「当然よ、ミラ姉の弟子なんですもの。それより同じ弟子なのにばらつきが出るあなたの方が私はすごいと思うわよ? ミラ姉の指導は完ぺきなはずなのに」
「そんな褒めても作る速さは変わらないぞ?」
「褒めてないわよ……」
マヤ姉にため息をつかれてしまう。確かにミラ姉の弟子は他にも数人いるがどいつも安定して同じ品質のものを作っていた。
それに対して俺は気分で大きく変わってしまう。ミラ姉によれば称号による影響だろうとのことだが……だが悪い時でもよくあるポーションの品質と同じだし、逆に良い時はずば抜けて効果が高いものを作るからそれでチャラということにしておいてほしい。
「むっ、今は忙しかったか?」
「あれー? ほんとっすね。というか自分、恭也がまじめに仕事をしてるの久しぶりに見たかもっす」
なんてやり取りをしているとエクスとミーナがやって来た。
「おいおい、俺はいつだってまじめだろ」
「あはは、おもしろい冗談っすね」
「あら、いらっしゃい。いえ、ちょうどいいタイミングだから私たちも休憩しましょう、恭也」
「それにしても今回は作る量が多いな?」
マヤ姉がいれたお茶を飲みながらエクスが尋ねてくる。
「最近外にも出す量を少し増やしたからな」
「そうね、それとギルド内にも一人消費量が激しい人が増えたからかしらね」
マヤ姉のその言葉に一人の男の顔が思い浮かぶ。
「優臣っすね」
「だな」
「正解だ」
やはりみんなあいつのことだとすぐに分かったらしい。だがそれも当然だろう。なぜならあいつが大量にポーションを買って苦い顔をしたり金欠だと嘆いている姿はもはや日常の一コマと言えるほどになってきているからだ。
「あいつはまだ魔力の調整が上手くいかないのか?」
「毎日特訓してるんすけどね」
そんな優臣にこいつらはそのような感想を抱いたらしい。だが同じ異人である俺からしてみればああなるのは仕方がないと思う。
「それは仕方ないだろ」
というわけであいつのフォローをしてやることにする。
「むっ?」
「お前らは最初から魔力があるから扱いに慣れてるけど、俺ら異人は違うからな。俺も魔力量が多いとは言えないけどそれでも時間はかなりかかったんだ。それがあいつほどの魔力量となると……な?」
「そういえばそうだったっすね」
「たしかに……私たちには魔力がある生活が当たり前すぎて忘れてしまっていたわね」
どうやら分かってくれたようだ。このギルドの奴らはすぐに異人について理解してくれるから本当に助かる。
「それにしてもあいつも大変だよな。魔力の制御がなかなかできない上になにやら特殊なドッペルと闘わなければならないんだからな」
「そうだな、吾輩らも手伝えるところは積極的に手伝うか」
「そうっすね!」
「そうねぇ、お姉ちゃんと呼んでくれる一人だもの」
「とりあえずまずはあいつがドッペルに勝てるように、これからも特訓に協力してやるぞ!」
「「「おー!」」」




