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1-5 テンプレ君商業ギルドを訪れる

 市場調査を切り上げ商業区での予定の最後に商業ギルドへ向かった。


 生産・商業チートを目指すなら商業ギルドに入らなければならないだろう。商業ギルドへ入ると何処か役所の様な雰囲気だ、早速受付へ向かう。


「すみません、登録をお願いしたいのですが。」


「登録ですね、所属する商店の紹介状と登録料の100Z、年会費の30Zをご用意ください。」


「紹介状ですか、現在無所属なのですがどうしても必要なのですか?」


「えっ? 当たり前じゃないですか。無所属って万が一の際誰があなたの身元を保証するのですか? それに無所属じゃあ商業権が無いのでそもそも商売すらできませんよね。」


 受付の若い女性に何言ってんのコイツ的な目で見られる、残念ながら俺には其方の属性は無いためご褒美にはならない。ここは恥を忍んでいろいろ話しを聞いてみる。


 何でもこの国では商売をするのに国が発行する商業権が必要なのだとか。


 その商業権を取るには絶大な信用と多額の資金が必要な上、かなり面倒な手続きの末に審査が行われる。それを受けて許可の可否を国が行うため時間も相当かかる。実際既存の商業権を持っているのは貴族のみ、新規の商業権の発行もほとんどされていないというのが現状の様だ。

 そのため、その貴族がやっている大商店に所属させてもらい売上の一部と引き替えに商業権の一部を使わせてもらうのが一般的との事。旅をして歩く行商人などはさらにその商業権を借りている店と契約をして、その店の店員として商売をして歩くとの事。

 ちなみに商業権が無い状態での商売は総じて闇取引扱いで違法となる。


 それでは商業ギルドの役割は何なのか、商売上のトラブルの仲裁や違法の取り締まり、その他商売のサポートを行うとの事だ。その一環として商業ギルドは銀行業務の様な事を行っている、つまり預金と投資である。商業ギルドへ預けた貨幣はどこの街の商業ギルドでも引き落としが可能、そのため移動の旅の際 多額の貨幣を持ち歩かなくてもよくなるため安全性が確保できる。また設備投資や新規事業に際して審査を受け、それが通れば金を借りる事もできるとの事。ほかにもギルド証の提示により国内の街の入街税の無償化などもあるとの事。


 という事で現状俺は商売をする事も商業ギルドへの加入も不可能という事だ。


 なんてこった、貴族だとかどこかの商店とのツテをつくらない限りどうにもならないじゃないか。俺は落胆したまま説明してくれた受付嬢に礼を言い商業ギルドを後にした。





 商業ギルドを出た俺はトボトボと歩き出す。なんかこの世界、設定はどこまでもテンプレファンタジーなのに細かい所が現実的で不自由だよな。結局は偉い奴等に頭を下げてそのおこぼれに預かるしかないのか。まあ物語の世界じゃなく現実だから仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど。能力があっても成り上がりなんて夢のまた夢って事か。


 気落ちしていてもしょうがない、まだ神の手がどんな物かも分かってないし生産チートに一縷の望みをつなぐしかない。


 気を取り直し生産区画に向かうが朝から歩きっぱなしで大分疲れたし腹も空いてきたので食事にしよう。そう思い生産区画に入る前ぐらいで食堂を探す。この辺はちょうど飲食店街になっており店は豊富だ。どこに入るか迷っているとひときわ賑わう一軒の店が目に入る。賑わうって事は味に間違いはないだろう。少し待たされたが席に着くと店員が注文を取りに来た。


「注文は?」


 おお、随分と横柄だな。客商売とは思えない接客だ。


「お勧めは?」


「兄ちゃん、忙しいんだ。そんなもん待ってる間に決めとけよ。」


 イラッとくるな、何だコイツ。こっちは商業ギルドの事もあって機嫌悪いんだ、ふざけた態度かましてんじゃねえよ。


「じゃあこの店で一番高いの持ってこいよ。」


 苛立ったまま俺は挑発的な態度で注文する。


「はあっ? 兄ちゃん見たとこ金持ってる様にゃあ見えねえがちゃんと金払えんのかよ。食い逃げされちゃあたまんねぇからよ。」


 何だと……。いやキレてない、キレてないですよ。俺キレさしたら大したモンだ。


「つべこべ言ってねえでさっさと持ってこいやぁ。」


 俺はエスペランサーよろしくでテーブルに金貨を2〜3枚叩きつける、結局キレてんじゃねえかなんてツッコミはノーサンキューだ。金がある事を見せつけられた店員はブツブツ言いながら注文を伝えに厨房へ下がっていった。


 しかし一体何様なんだこの店は、客が入る理由が分からん。


 そう思い周りを見渡すと、こちらをニヤニヤと賤しい目をしたいかにも冒険者風のヤカラ共が見ていた。そういう事か、此処は冒険者御用達の店か。商業区画と生産区画の境目には冒険者ギルドがある。必然的に冒険者達もこの界隈に集まって来て御用達の店もできる。そしてそんな店じゃあ装備の良し悪しでその人となりが判断されるって寸法か。今の俺はどう見ても普通の一般人で武器すら携帯していない、舐められるのも仕方ないという訳だ。そんな場所でそんな場違いな人間が金貨を見せびらかせば後はお察しだろう。さすがに店内で絡もうなんていうほどの馬鹿はいない様だが外に出たらどうなるか分からんな。


「ほらよ!」


 どうやら料理ができたらしい、見てみるとレッドベアーなるモンスターのステーキだ。なかなかに美味そうじゃないか。店内はとりあえずまだ安全なのだから緊張していても疲れるだけだ、まずはしっかり飯を食おう。そうして食べてみるとこれが美味い! 熊肉と言えば筋張っていて臭いというイメージだったがこれは違う。肉の旨味が凝縮されておりさらには程よい柔らかさ、噛むたびに旨味が溢れてくる。さすがに店で一番高いだけの事はある、接客は最悪だが味は間違いなかったな。


 ひととおり食べ終え満足した俺は会計を済ませ店を再び眺める、最終的に妥当なのかボラれているのかは分らんが3Z程度だった。まあモンスター肉だったし美味かったから気にしない。しかし3Zが一番高い程度の店という事は値段の割に味が良くボリューミーな大衆食堂って位置づけかな、それで場所柄の関係で客筋は昭和のやっちゃばの食堂とかトラック運転手の巣のドライブインみたいになったと。客の民度が低いため接客が最悪になるのも頷ける。


 俺は身体に魔力を循環させ手の中にあらかじめ結界を用意して店を出る。案の定4〜5人のゴロツキが後を追う様について来た。何時までもついてこられたら迷惑なので少し歩いて路地裏に入るとリーダー格と思しき男が声を掛けてきた。


「お兄ちゃん随分羽振りがいいね、俺たちにも少し分けてくんねぇかい?」


 いや時代劇の中でしか聞いた事無いからそんなセリフ。しかもこの雑魚キャラ臭全開の面子が堪らんね。実際鑑定して見ても俺以下の雑魚である、テンプレ怖いわ〜。とりあえず触れるとダメージが入る結界を強めに自身の周囲に張っておく。あっちょっと魔力が減って軽い倦怠感が来た、イラっと来るね。


「アレェ、ビビっちゃって声も出ない感じ?」


 そんな事をのたまいながら近づいて来たリーダーは結界に触れるとバチッという音とともにすさまじい勢いで吹っ飛んだ。


「「「「「えっ?」」」」」


 俺を含め絡んで来たゴロツキ一同呆然とする。何これ、なんでこんなに強力なの? そんなに強い結界張れないんじゃなかったの? 一人ビビってると他のゴロツキもお決まりのセリフとともに武器を構えてかかってきた。


「この野郎! 何しやがった!」


 そして一様に音とともに盛大に吹っ飛んだ。辺りにはピクリとも動かないゴロツキ共、その中心に俺というカオスな状況になった。ゴロツキの中心で俺に何を叫ばせたいんだ! って言うか死んじゃってないよね? 


 俺は慌てて結界を消すとゴロツキ共の安否を確認する。全員取り敢えず生きてはいる様なので一安心、無事かどうかは知らん。意識が無く怪我もしているみたいだが大量に出血している訳じゃあないし気にしないでおこう。さすがに持ち物を奪っちゃうのは犯罪になるけど冒険者のギルドカードだけ没シュート。後日冒険者ギルドには行ってみたいしその時ギルドへ返却しておけばいいだろう。


 結界創造半端ないわぁ、襲った奴等が雑魚過ぎただけかな? もう一回強度とか威力を検証しないと駄目だなこれ。倒れているゴロツキはほっといて俺はその場を後にする。

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