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2-5 テンプレ君と性病患者

前話、「テンプレ君ムーランに辿り着く」を少し修正致しました。

「おいユーゴ、起きろ!お前に客だぞ!」


まだ陽が昇って間もないような時間に主人の怒鳴り声で目覚めた、最悪の気分だ。いや主人の事は嫌いじゃない、むしろ好感を持っている。しかし野郎の怒鳴り声で起こされて気分のいい男がいるわけが無い、勘ぐるな他意は無い。主人ばっかり幸せになりやがってなどと思っていない…はずが無い。ダメだ、自分がどんどん嫌な奴になっていってるのが解る。解るからこそ辛い、幸せな友人を祝えない奴なんて最低決まってる。


しかし誰だこんな朝っぱらから、昨日はかなり遅かったから少しでもゆっくり寝たいのに。イライラしながら無理やり起きて食堂へ降りる。


「ユーゴ、昨日は大分遅かったなってオイ!お前大丈夫か?酷い顔してるぞ、具合が悪いのか!?」


やっぱ主人いい奴だよな、俺の事本気でこんな心配してくれてる。


ちょっとウルっときた自分に危機感を感じる、ヤバイかなりの末期だ。情緒不安定になってる、目覚めた直後の頭の回転の鈍さを差し引いてもかなりヤバイな。これは相当気を引き締めないと本当にお縄GETだぜになっちまう。


「ユーゴ!おいユーゴ、大丈夫なのか?」


「ああ、大丈夫です。昨夜大分仕事が押してしまったので寝不足でボーっとしてました。体調は大丈夫ですよ、寝起きなんていつもこんな顔です。お客さんって誰ですか?」


「そうかならいいんだが、あんま無理すんじゃねえぞ。ヨアンとかいう冒険者だ、なんか獣人の娘と一緒来てるぞ。お前が呼んだんじゃないのか?」


なんだ、あいつか。完全に忘れてた、確かに来いとは言ったがこんな朝の小っ早い時間に来るなんて何考えてんだ。そう思いながら食堂へ降りた。


食堂へ降りると昨日の冒険者の髭もじゃと猫娘が待っていた。


「おいおい、午前中とは言ったがこんな早くにやって来るなんて何考えてんだ。」


「いやっ!すまん。本当にこの病気が治るのかと気が気でなくて、それに昨日の件もすまなかった。」


ハア、藁にもすがる思いってやつか。まあ仕方ないか、ロータスじゃ命にまで関わる問題だろうからな。


「まあ気にするな、俺もこんな格好だが失礼させてもらうぞ。所で二人共飯は食ったのか?こんな朝早かったらまだなんじゃないか?一緒に食ってけ。」


「いやっ、飯はまだだがそんなの申し訳ねえよ。それに正直飯なんて喉が通らねえ。」


「いいから食っとけ、この宿の主人の料理は絶品だ。それにお前ら体が資本だろうが、話し終わった後でもいいから。」


そう言うと主人に二人の追加分の朝食も用意してくれるよう頼む。


「んで、そんなに焦ってるってことは自分がどんな病気かは知っているんだな?」


「ああ、こいつで死んだやつも知ってるし医者もそうだと言っていた…梅毒だろ。」


「じゃあ再発するかもしれないが治るって話しだろう?」


「いや、こいつは治らねえ。こいつにかかった奴は例外なく再発して悲惨な死を遂げている、見てくれた医者もそう言ってたしな。あんたこの病気の事治せんじゃねえのか?そんな事も知らねえのに本当に治せんのか?」


「落ち着け、そこまで知ってれば充分だ。こいつのタチが悪いのは潜伏期間があるって事だ、潜伏期間は治ったように見えて実は治っている訳じゃないからあれは再発なんかじゃない。それで、どこでこんな厄介なもん貰ってきたんだ?」


「半年くらい前、護衛依頼で行った街の宿で女将に迫ららてな。その女将はやけに色っぽくて俺だってそう言うこたぁ嫌いじゃねえし一晩共にしたんだ。考えてみればあの女将街中じゃあもう知られちまって相手がいないもんだから流れの客捕まえて抱かれてたのかもな。」


「じゃあお前の症状は今どの辺まできてるんだ?」


「アレに出来物が出て爛れてきて身体中に赤いブツブツが出てる。時折身体が怠くなって関節が痛む事もある。」


「んで、そっちの娘さんは?」


「なっ?あんたなんでそれを?」


「そんな事はまあいいだろう、症状はどうなんだ?」


「こいつは口の中に出来物が出て爛れちまって上手く声が出せねえ、あそこにも出来物が出てきて身体にもブツブツが出はじめた。俺の時よりもずっと進行が早い。」


「お前が移したんだろ、身体を重ねれば移るのはわかっていただろうに。話を聞くと発病前に移してしまった訳でも無いみたいだし。」


「いや、俺が移したのは間違いないんだろうけど何で移しちまったのか全然わからねえんだ。そもそも街を出てその依頼が終わった頃症状が出はじめた。はじめの頃は出来物が出てそいつが潰れてグズグズになった。取り敢えずポーションをかけて誤魔化してたが、症状が症状だからヤバイと思って調べてみたら案の定だ。俺もまだその頃は治ると思ってそんなに焦っちゃいなかった、ポーションで誤魔化してバレねえようにしときゃあいいだろってな。ただその後も気にはなったんで色々話を聞くとそんな甘いもんじゃねえ事が分かってきた、こいつは死病だってな。それから少しづつ荒れだした、こんな病気だから誰にも相談なんて出来ねぇし一人じゃどうしたらいいか解らなくて誰彼構わず荒れていた。パーティのみんなとも溝が出来て孤立しちまってなおさらな。そんな時こいつが部屋に来てな、解ってるから一人で悩むなって。何でも獣人は鼻が利くから臭いで何となく解ってたらしい、それからこいつは夜な夜な俺を慰めてくれたんだ。」


「わからねえなんていってちゃんとわかってるじゃねえか。獣人だからって移らねえ筈がねえだろう、それとも獣人には移したって構わないってか?」


主人がうっすら怒気をはらませ話しに混ざってきた。成る程、この国での獣族の扱いはこんなもんか。だから街では殆ど見かけないのか。


「そうじゃねえ、確かに俺も獣人を下に見てた口だ。だからと言って移していいなんて思っちゃいねえ、慰めるって言ったって身体を重ねた訳じゃねえんだ。話聞いてもらったり相談したりだったんだ。こいつは俺がどんなになっても側にいてくれるって言うんだよ、俺もこいつの為に最後まで頑張ろうと思えた。その内お互いの事をもっと分かり合って感じ合いたくなって身体は重ねられねえけど可能な限りでお互いを確かめ合ってたんだよ。次第に俺は落ち着いて来て周りともまた前みたいに上手くやれるようになっんだ。そんな時だった、こいつが発病した。俺たちは決して身体は重ねちゃいない、何でこいつが発病するんだ。なんだか信じてたものが壊れちまったような気がしてな、また荒れはじめちまった。こいつが他所でもらってくるはずが無いんだ、だけど身体は重ねてない。だからどこかで疑っちまう、その疑いがモヤモヤしてずっと晴れないんだ。そしたらこいつの病気の進行がやけに早くて、俺より先に死んじまうんじゃないかって焦った。こいつには幸せになってもらいたかったのにこんな事になっちまうし、かと言ってモヤモヤは消えないしどうしたらいいか解らなくなってつい大切な奴なのにあたっちまった。それでも病気を移されてんのに文句も言わず側にいてまだ俺の事慰めてくれるんだよ。だからまた甘えちまってあたっちまう。なあ頼む、なんとかこいつだけでも助けてやってくれないか?俺が差し出せるものは何でも渡す、死ねっていうならすぐに死ぬ。だからこいつだけは何とかしてくれ!」


男は泣き出し床に跪いて懇願してきた。


「俺はないかなる理由があろうとも自分より弱い女子供に対する暴力が大嫌いだ。どんなに辛くて苦しくなっても二度と手を上げないって事を約束できるか?」


「ああ、命にかえて約束する。」


「そうか、なら治療してやる。ただな、薬の作り方は知ってるがまだ出来ていない。それに体質的に使えない事がごく稀にだがある、それをは理解してくれ。」


「わかった、そん時は諦めるしかねえだろう。」


「まあそんなに心配するな、駄目だったことなんて殆ど聞いたことがない。万に一つのケースだよ、それじゃあ君達には材料を集めてきてもらおうか。腐ったオレンジとブルーチーズ、それから解体直後の動物の骨にトウモロコシと芋に米も沢山集めてくれ。」


「そんなもんでいいのか?わかったすぐに集めるよ。」


「あと慰め合いも治療が終わるまで禁止な。たくっ、梅毒は身体を重ねなくたって口からでも移るんだ馬鹿者。なんで移ったか解らないじゃないよまったく。」


「そっ、そうなのか?じゃあやっぱりこいつは…」


「モヤモヤは晴れたか?そしたら飯食って材料集めてこい。俺は出かけてるかもしれないがその時は宿に置いていってくれ、そしたら作っておくから。そうだな作るのに大体1週間ってとこか?それぐらいしたらまた来ればいい。」


二人はしきりにお礼を言いながら食事をしその味にひとしきり感動したのち仲良く街へと出て行った。


「デボラ、ずっと見てたんだろ?もう出て来ても大丈夫だぞ。」


俺がそう声を掛けると影から目を真っ赤に泣き腫らしたデボラとそれに付き添って二人が出てきた。


「いい勉強になったな、こんな経験はそうそう出来るもんじゃない。あの二人には感謝しないとな。」


「グスッ…あい…グスッ、わかいまひた。」


「そんなに泣くな、今の想いを忘れないようにな。いやしかし腹減ったなあ、ガストンさん食事お願います。」


「ああわかった、今持ってくるよ。」


そりゃ腹も減るわな、昨夜は結局食事ができなかった。ムーランでは急遽仕事になるし帰ったら帰ったで奥さんとあんな事になっちゃったし、そう言えば奥さんはどうしたんだろう。


「時にガストンさん、今日はエマさんはどうかされたんですか?」


「ああ、今日は嫁に買出しを頼んだんだ。客はお前さん達しかいないから買わなきゃならない物もそんなにないしな、それにあんな時間から客があったろう?なかなか腕が立ちそうな奴だったからお前に何かあったらマズイと思って用心の為にな。」


「気を使わせちゃったみたいで、本当申し訳ありません。」


「だからそんなに畏まんなって、うちにとってもユーゴは頼りの綱なんだからその辺気にすんのは当然だろう」


そんな話しをしてると丁度奥さんが帰ってきた。


「ただいま、あら皆さんおそろいで今から食事?、私も一緒にいただいちゃおうかしら。」


「おう、おかえり。そうだなみんなで一緒に食っちまおう。」


「あっ、ユーゴさん…。昨夜はごめんなさいね、恥ずかしい姿見せちゃって。」


奥さん、なんでみんなの前で顔赤くしながらそんな事言っちゃうかなぁ。ほらみんな変な目で見てる、天然さんはこれだから困る。


「おかえりなさい、大丈夫ですよ暗かったですし見えるような状況じゃなかったじゃないですか。さあさあエマさんも座って早くいただきましょう。」


ほらすごい不自然、誤魔化しきれる訳もないからもう勢いで乗り切ろう。


「さあみんな、しっかり食べて今日一日頑張ろう。いただきます。」

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