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2-4 テンプレ君ムーランに辿り着く

その後マスターへ連れられ歓楽街を歩いていく、すると一際大きく豪勢な店構えの店へと辿り着いた。


「ようこそおいでくださいました、ここが私が心血注いで作り上げたムーランでございます。」


俺はぁ…ついにぃ…ムーランへとぉ…キタァーーーーー!


そんな心の叫びをグッと堪え案内されるがまま中へと入る、中は確かにこれでもかといった装飾が施され浮世離れしたお城の様な空間なっていた。オーナーはさらに奥へ進み執務室へと通された。


「せっかくお越しいただいたのにこのような無骨な所へのご案内となり申し訳ございません、まずはお掛けください。」


椅子にかけるとオーナーは早速話し始めた。


「私はムーラン・ラクーン・コルネイユという3つの娼館を営んでおりますゲラール商会のレイモン=ゲラールと申します。実はこの度ゲラール商会では新たに新店舗の立ち上げを計画しております、この度お時間を頂戴いたしましたのはこの新店舗についてご相談させていただければとお願い申し上げました。」


「新店舗ですか、それであの話に興味を持たれた訳ですね。」


「はい、非常に興味深いお話しだったもので。私の店はそれぞれにコンセプトを持って営業をさせていただいております。ここムーランならば王様や貴族の様な気分をあじわえる様に高級志向、ラクーンならば様々な種族や体型、髪や肌の色といった多様性を持たせお客様に好みに合わせて女性を選んでいただける多様性。最後にコルネイユは低価格路線に合わせています、その為サービスも女性も相応となります。また店での女性の扱いも相応となりますので他の2店舗で評判の悪いものを回す様にし、あそこには行きたくないという思いを植え付ける様な役割ももたせています。」


「なるほど、よく出来たシステムです。そこまでやり手の方が私の様な者の力など借りずとも充分に素晴らしい店舗をお作りになれるのではありませんか?」


「いえ実はこの新店舗色々と行き詰まっておりまして頭を悩ませていたのです。そのな折に素晴らしいアイディアを伺ったものでつい今回の様な不躾なお願いをしてしまったのです。」


「そうだったのですか、そう言う事ならご相談をお伺いしましょう、ただそれはビジネスのお話になりますね。実は私コンサルタント業務も生業としておりましてその依頼は業務としてお受けする形となりますので。ご挨拶が遅れました、私グランディールという会社を営んでおりますユーゴ=ヨシムラと申します。」


「なるほど、只者ではないと思っておりましたがやはりそういったお仕事をされてらっしゃったのですね。どちらにせよもともと謝礼はお支払いさせていただく予定でしたのでビジネスとしていただいた方がトラブルも少なくスムーズに事が運びますのでこちらとしてはむしろ助かります。では早速相談内容をお話しさせて頂きます。」


あぁ、もう無理だこれ。本気のビジネス話しが始まっちゃったもの、仕事にかこつけて遊びに来た罰だな。せっかくやっとの思いでムーランへ来る事が出来たというのに、辿り着いたのは夢にあふれた楽園では無く現実が凝縮された執務室とは。しかも目の前にいるのは可憐で美しいお姫様じゃなく苦味ばしったダンディなオーナーだし。本当に俺は何時になったら天国の門を拝めるんだ。


そりゃぶっちゃけ商品販売の営業はかけるつもりだったけどまさかコンサルタント業務の方を受ける事になるとは思わなかったよ。

ここまでガッチリビジネスが絡んじゃうともうムーランでは心の底からは楽しめないだろうな、ビジネスが絡んだらどんなに飲んでも騒いでいても心の奥で冷静かつ打算的に考えて行動する癖がすっかりついちゃってるから。こんな事にならない様に早めに楽しみたかったのにこの展開は完全に想定外だわ。もうこうなった以上どう出来るわけでもないんだから気持ちを切り替えて本気でビジネスに取り組もう。


そうしてオーナーの話を聞くと行き詰まってしまった原因というのは以下の通りだった。


現在成長中のハルムートでは慢性的に人材が不足気味になりなかなかクオリティの高い人材が集まらないのだという。その為必然的にそれを準備する為の金額も高騰しており予算が膨れ上がっている。

また、建築費も同様に高騰傾向にありそちらの予算もかなり大きくなってきている。

いくら既存の店舗が好調で大きな利益が出ているとはいえ通常営業のクオリティを下げる訳にはいかない為そこまでの予算は割けない、かと言って値段なりのものを作っても失敗するのは目に見えている。

商業ギルドへ融資を頼めないものかとも考えたが業務内容もあって審査を通す事が難しいらしい。

その為コンセプトすらまとめられず現状計画を進められないでいるとの事だ。


では何をそんなに焦るのかと言えば、この時期は納税時期にあたる為クオリティの高い人材が最も集まる時期でもある。もしこの機会を逃せばまた来年まで計画が塩漬けとなってしまう、ここに来ての計画の塩漬けはそれもまた計画の失敗を意味する事になってしまう為相当頭を悩ませていたとの事だ。


「状況は解りました、それではまず今ご用意出来る予算はどれぐらいなのかお伺い出来ますか?」


「計画当初、予算として余裕を持って100,000Zを考えておりました。しかし現状どれ程の金額となるか予想がつかなくなって来ています、正直用意出来る上限は130,000Zで精一杯でしょう。」


おいおい、100,000Zって1億円?おいおい、1億もあってなんで風俗店の一つも建てられないんだよ。幾ら物価や考え方に違いがあるとは言えどう考えてもおかしいだろ。なんかキナ臭いな、また厄介事の予感しかしない。ただここまで来て断る訳にはいかないだろう。問題が起きたらそれはその時考えよう。


「では予算の設定は当初通り100,000Zとしましょう、それを踏まえて契約内容を詰めましょう。」


「本当に当初予算で計画するつもりですか?流石にそれは難しいのではないでしょうか。」


「先ほど話した私の案をコンセプトとするならば容姿に最高のクオリティを求める必要はありません、基本はハードでは無くソフトでの勝負になりますからね。ただその分ソフトのクオリティを上げる為の教育がかなり大変ですけどね、まぁそこはレイモンさんならお手の物でしょう。それではその予算設定を踏まえて弊社との契約内容を詰めていきましょう。」


そして当社グランディールとの契約内容は以下の通りとなった。


まず着手金として1,000Z。その後の成功報酬は予算通りなら1,000Z、予算オーバーでも上限の130,000Z内なら500Zでそれを越えてしまったら無し。

重要なのは予算内に収まった場合である、予算を下回った額の30%をいただく計画としたのだ。

つまり96,600Z以下で纏めればそこから成功報酬はどんどん増えていくのだ。

着手金も木漏れ日亭はバーゲン価格みたいなものだから比べようがないけどそれでも多めに設定した。木漏れ日亭みたいな継続的な契約では無くプロジェクトのコンサルタントだし事業規模もかなり大きい、さらには今のウチの連中に倫理的にも能力的にも任せらせる仕事じゃないので俺の負担がかなり大きくなる事が予想される為だ。


この契約内容で早速契約書を取り交わし詳細の打ち合わせに入っていく、情報が無いと提案する計画書の作成も出来ない為今晩いくら遅くなろうとも現状を把握しなければならない。


「では現状を明確に把握したいので今の進行状況と予算の流れをお伺いしたいのですが。」


「はい、現在計画は初期段階を終えより具体的な段階へ入ったところでした。初期段階というのは新規事業に伴う許可申請や根回しといった事や新規店舗の営業予定地の確保などです、新規店舗の予定地の確保も済みそれに伴って許可関係も無事認可を得られています。ただ、根回しに関しては未だ現在進行中といった状況です、所属元とは話がつき貴族関係もある程度抑えられました。ただこの街での根回しがまだ完了出来ておりません、それも予算増大に絡んでいるのでは無いかと踏んではいますが。予算はそこまでで全体の約30%の使用に達しておりますが残るは殆ど人件費と建築費と考えておりました、そこで必要予算が想定よりも膨らんでいき計画が頓挫している状況となっております。」


「それでは私共からはお店のコンセプト、それに合わせた人材の選定基準と教育内容。後は建物の雰囲気及び内装のご提案が主だと考えて宜しいですね。」


「はい、それらのご提案をお願いいたします。ただ他の事でも気づいた事やご提案頂ける事があればお願いをしたいです。ご提案いただいた内容いかんによってはインセンティブの増額も考慮に入れておりますので。」


「解りました、善処致します。では早速いただいた情報を元にご提案させていただく計画案をまとめさせていただきます、次回お打ち合わせまでにはご用意いたしますので。次回お打ち合わせの日程は一週間後で如何でしょうか?」


「ええ構いませんよ、ただ時間ですがこういった商売ですのでまた今日のように夜間でお願いしたいのですが宜しいでしょうか?」


「大丈夫です、では一週間後の夜こちらにお伺い致します。どうぞよろしくお願い致します。」


「こちらこそよろしくお願いします、計画案楽しみにしていますよ。」


挨拶を交わし俺はオーナーに見送られムーランを後にする。


恋い焦がれたムーランを出る時にこんな気持ちで外に出る事になるなんて思わなかった。これから俺は何を拠り所に頑張ればいいんだ…そうだ!奴隷を買おう!!もうカッコつけてる場合じゃない、明日にでも奴隷を買いに行こう。


そう心に決め借りた蓄光石の灯りを頼りに木漏れ日亭への帰路に着く。





木漏れ日亭は流石にすっかり暗くなっている、正確な時間はわからないが既に日付は変わっているだろう。鍵かかってたりとかしないよな、心配しながら扉を開くとちゃんと鍵は開いていた。薄暗い中部屋へと向かおうとすると背後から唐突に声がかけられる。


「お帰りなさい、今夜は随分遅かったのですね。」


「ウヒィっ」


突然の声にビクッと大袈裟に驚いてしまい変な声が出た。


「ウフフ、驚かせてしまってごめんなさい。お食事はちゃんと済まされたのですか?」


振り返ると髪を下ろし胸元が大きく広がり乱れたままの寝間着姿で奥さんが立っていた。その姿はゾクゾクするほど妖艶で色気に溢れていた、全身から雌の匂いを放ちうっすらと上気して桜色に染まった頬にトロンとして潤んだ瞳から完全に事後だと伺える。やはり今夜も子作りに励んだようだ、クソっ俺はムーランまで辿り着いたはいいものの完全なる空振りでゴーホームと相成ったというのに。俺の利かん坊はムーランで期待させるだけさせられた挙句お預けをくらって暴れん坊にクラスアップを果たしている。更にまたそんな強烈な挑発をくらったらもはやバーサクモードへの突入は必至。


そんな俺の心境を知ってか知らずか奥さんが近づいてくる。


「お食事まだでしたらご用意致しますよ。でもごめんなさい、主人は先に休ませていただいたので簡単なものしかできないんですけど。」


いかん、それ以上近づかれたらマズイ。近くでそんな姿を見せられたら、そんな匂い嗅がされたら暴れん坊が暴発確定だ。


「エマさんいけません、それ以上近づいたらマズイ。ご自分の格好をよく見てください。」


「え?…きゃっ、ごめんなさい。ちょっと湯浴みをしようかと思った所だったからこんな格好で、物音がしたのでつい。」


「とっ、とにかく食事は大丈夫ですので、そのまま湯浴みをしてきて下さって構いませんから。」


「はっ、はい。本当にごめなさい。」


そう言うと奥さんは慌てて奥へ引っ込んでいった。


危ない危ない、あれで天然だからタチが悪い。2日続けて暴発などと思春期の中学生でもやらん事をしでかすとこだった、しかも奥さんの目の前でバーサク状態突入の上暴発なんてした日にはもうこの宿を出ざるおえない事態だ。


俺も急ぎ部屋に戻り即座に裸族へ転身すると溜まりに溜まった悔しさだけではない色んな感情を爆発させた、それも2発。連射なんて何年ぶりだろう、しかしちっともスッキリしない。これは本格的にマズイ、明日は本当に奴隷GETだぜをしないとお縄GETだぜになってしまう気がする。


そうして今夜も悶々とした気持ちを抱え眠りにつく。

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