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2-3 テンプレ君情けをかける

冒険者ギルドに着く頃陽はすっかり暮れてしまい宵の口に入る頃だった、急ぎギルドに入りデボラを探すと騒がしい声が聞こえてきた。


「だからこいつはパーティ内の問題であってテメェにごちゃごちゃ言われる筋合いはねぇんだよ!」


「だからと言ってかような非道は見過ごせぬ!」


クソッ、デボラのボケ初日から面倒くせえ厄介事に首突っ込んでやがる。この時間のない時に何やってんだ。


そう思いながら様子を伺うとガラの悪い髭もじゃとデボラが対峙しその脇で一匹の小動物がオロオロしている。


おっ?あれがもしや獣族か?テンプレ御用達のモフモフケモミミって奴か?そう思い小動物をよく見てみると残念な気持ちが込み上げてくる。確かにモフモフケモミミではあるが…まんま猫やないかい。テンプレだと獣成分は耳と尻尾だけで後は可愛い女の子だろうが!あれじゃあ猫成分が強すぎて俺は男女の区別さえつかねえ、動物に発情するほど俺はダーサイドに落ち切っちゃあいない。


そんな事を考えながらブツブツ呟いているとデボラがこっちに気づいたらしい。


「エディ様ユーゴ殿、丁度良いところに参られた。なんとこの者は公衆の面前でか弱き女子を足蹴にし罵倒を浴びせかけておったのです。この様な所業騎士として断じて許せませぬ!」


「デボラは騎士じゃないだろう、ただの冒険者見習いだ。よそ様の問題に首を突っ込んむ余裕なんてあるのか?それに当事者のその子を見てごらん、逆に困ってしまっているじゃないか。」


「むぅ…、それはそうなのですが。」


「なんだお前は?横からしゃしゃり出てきて偉そうに。」


「ああ、突然申し訳ない。私はこの子の責任者だ、何やらそちらさんのやり取りにちょっかいをかけた様で。」


「責任者だと、躾が足りてねえんじゃねえか?他所のパーティ内のやり取りに口突っ込む様な真似させるなんて。俺が代わりに嬢ちゃんに突っ込みながら躾してやっても構わねえんだぜ。」


相手の髭もじゃがニヤニヤ笑いながら挑発的な態度で下品な事を口走る。


はあ嫌だ嫌だ、いくら何でも品が無いにも程がある。先日のヤカラに引き続き冒険者ってのはこんなんばっかなのかね。


「遠慮しときますよ、うちのデボラはそんなに安くありませんので。まあ頭と一緒で病気で腐りかけたご自慢の逸物がどれ程のものかはわかりませんがね?」


「なっ、なんだと!なんでそれを!?」


周りの人達はそれを聞いてドン引きである。先程とはうって変わって汚物を見る様な目が髭もじゃに向けられる。


ロータスにもやっぱあるんだな性病、鑑定で見た時は目を疑ったよ。江戸じゃ笑い話にもなっていたがここじゃあ汚物扱いか、世知辛いね。俺も気をつけないと、まだ気をつけなきゃいけない様なこと出きてないけどな!


憐れな髭もじゃはパーティメンバーからすら距離を置かれている。その姿が余りにも可哀想な為、風俗王とも冠された俺は先程の暴言は水に流して情けをかけてやる事にした。どうせどこぞで安い女でも買って有難く頂戴して来たのだろう。

俺も若い頃出張先でデリバリーエンジェルに淋しい病をプレゼントされた事があったがあの時のやるせなさは今でも忘れられない。


「何とかしてやろうか?」


小声でそっと囁きかける。


「なんとかって…、何とかなるのか?」


髭もじゃは地獄で蜘蛛の糸を見つけた様な目で俺を見てきた。


「声がデカイ、明日の午前中木漏れ日亭って宿に来い。何とかしてやれるかもしれんから。」


「本当か?本当なのか?」


「まだ判らん、だが試す価値はあるだろ?だからさっさと撤収しろ、俺は忙しいんだ。後な辛いのは解るが余り周りにあたるなよ。」


「わかった、すまねえな。」


髭もじゃはそう言うとパーティメンバーと一緒に撤収して行った。原因となった猫娘もこちらに頭をペコペコ下げながら後をついて行ったようだ。


取り敢えず場が収まったのでデボラを連れてギルドを後にする。

外に出るとデボラが謝ってきた。


「ユーゴ殿、お手を煩わせてしまい申し訳ない。」


「デボラ謝るポイントがずれてないか?私の手なんていくら煩わせたって構わないんだ。何が悪かったのかちゃんと解っているのか?」


「はい…、私は結局のところまた同じ過ちを繰り返してしまいました。自分の考えを感情に任せて相手に押し付けしまいました。」


「うん、すぐに気付けて反省出来てるのならちゃんと成長出来てるね。今回の反省も成長の糧にきっとなるよ。私はデボラの正義感が強くまっすぐな心根は美徳とすべきところだと思う、本当に誇りに思うよ。けどその反面感情のコントロールがまだまだ未熟だという事を自覚してしておいたほうがいいのかもしれない。今はまだ無理にコントロールしようとする必要は無いけどそれをしっかりと自覚しているかいないかは大きな違いとなるはずだからね。」


「はい、わかりました。」


「それじゃあ今日の詳しい報告は明日詳しく聞くからエディ君を連れて木漏れ日亭へ先に戻っていてくれるかな?」


「ユーゴ殿は一緒に帰られないのですか?」


「私はこの後まだ仕事がのこっているんだ。市場調査と商品の営業に行かなければならない。」


「ユーゴ兄さんなんだかずっとソワソワしてたみたいだけど…、どこに行くの?」


「どこって仕事だよ、それこそ仕事が残っていたからそんな風に感じさせてしまったんじゃないかな。」


「こんな時間からまだ仕事があるのですか?もうすっかり陽が暮れて辺りは暗くなってしまいましたが。」


「こんな時間からだろうが暗くなろうが仕事は待ってくれないからな。」


「あんまり無理しないでよ。」


「エディ君大丈夫、全然無理なんてしていないよ。まあそう言う事だから帰りは遅くなると思う。みんなにもその旨伝えておいてくれ。」


「わかりました、では先に失礼いたします。」


全てを仕事のせいにして俺の事を心配してくれる二人を見送る、我ながら嘘八百を並べて女子供をこの暗い中二人だけで帰らせて自分は風俗に向かうとは下衆の極みである…だがそんなの関係ねぇ、まだ見ぬ姫が俺の事をまっているんだ。


はやる気持ちを抑えながら足早に歓楽街へと向かった。





夜の歓楽街は一昨日来た時とはうって変わり、盛り場と呼ぶにふさわしい盛った雄の熱気と夜の蝶達の色気がムンムンと立ち込めていた。その空気感にあてられてさらにテンションの上がった俺は早速先日の立ち飲みBARを訪れる。


「やあマスター、約束通り遊びに来たよ。取り敢えずエールを貰えないか。ただ先日のやつより上等なものはないかな?」


「お待ちしておりました。そうですね、先日のような物だとお客様の様な方ではちょっと物足りないでしょうね。」


そう言うと一度奥に下りジョッキを持ってやってきた。


「あまりこの店では出ないので奥にしまっていたんです。エールの様な日常的な飲み物はものが良くても価格が高いとなかなか捌けがよろしくありませんので。」


「先日伺ったお店とは対極のものですね。」


「フフ、そうですね。非日常の提供を目指したお店ですからね。」


俺は出されたエールを口にする。美味い、濁りの無い澄んだ飲み口のあとに豊かな香りが広がる。炭酸は自然発酵だからそこまで強くないがその分優しい味わいとなっている、なんだちゃんと美味いエールもあるじゃないか。これで冷えてれば言うことはないがそこまで求めるのは酷だろう、別に自分で冷やせばいいし。


「まあ皆が皆、非日常を求めてやってくると言うわけではないんでしょうけど。多忙な暮らしの中で理想とする日常に癒しや救いを求める方も多いですしね、そうこのエールの様に。」


「!?」


「夫婦仲がギクシャクしているストレスや長旅で家族と会えない寂しさ、過酷な冒険者稼業による疲労に独り身の孤独。そうしたものを癒してくれるのは非日常だけではなく現実では得られていない理想の日常をリアルに体感さてせてくれる場所だったりもしますよね。」


美味いエールを久しぶりに飲んだせいか昔を少し思い出した。刺激を求めて新規開拓に勤しむ傍ら癒しを求め馴染みの店に帰りたくなる事が往々にしてある。癒しを普段の生活に求められないのが辛いところではあったのだけれど。


そんなもう帰る事の出来ない店の事を懐かしみながら暫しエールを味わっているとオーナーが意を決したような顔で声をかけてきた。


「お客様少しお時間を頂戴する事は出来ませんでしょうか?」


「え?」


「今のお話を伺って是非とも相談にのって頂きたいのです、何とかお時間を頂戴出来ませんでしょうか?」


「いや今日は…、」


いかん、幾ら何でもこれ以上遅くなるのはマズいだろ。今日こそは何としてもムーランでルージュをする。その想いで様々な厄介ごとに巻き込まれながらも得意の『取り敢えず明日』で躱し、良心の呵責をドブに捨て今日はここまで来たのだ。

ただこれはそのムーランのオーナーからの申し出だ、断るわけには…いかないんだろな。


「少しだけなら…、どういったお話しですか?」


「ありがとうございます、しかしここで話すという訳にもいかないので場所を変えさせていただきたい。私の店へご足労願えませんでしょうか?」


私の店だと、ムーランか?ムーランへ行けるのか?やった、瓢箪から駒とはこのことだ。


「構いません、すぐにいきましょう。」


「えっ?でっではちょっと交代をして来ますので少しお待ちください。」


そう言うとマスターは奥に戻り交代の引き継ぎと幾つか指示らしきものを与え戻ってきた。


「お待たせいたしました、ご案内させて頂きますのでご同行お願いいたします。」

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