秋の日の1日
宮城先輩はコーヒーに目がないらしく、隠れ家的なカフェやらを探す趣味があるのだが、見つけたら1人で楽しむ訳でもなく、親しい仲間内に教えてくれるのは本当にありがたいと思う。
結構愛実先輩とのデートにも使わせて貰っているからなー。
そして、つい最近また新たに雰囲気もよくコーヒーとデザートの美味しいカフェを見つけたようで、一緒に行かないか? とお声が掛かる。
丁度秋の季節物の限定デザートもあるようで、愛実先輩も興味を惹かれたとくれば断る理由等ない。
お誘いに乗り、他のメンバーを聞けばいつも一緒にいるメンバーの名前が上がり、気楽に楽しめるなと思ってみたり。
前に聞きそびれた時に、矢部先輩以外は見知らぬ女子の先輩方が沢山ってのが1度あったからなー。
それで何もなければ構わなかったのだけど、盛大に愛実先輩がからかわれて恥ずかしがっていたので、一応その場合のお誘いは断るようにしている。
無論、先輩が行きたがったらその限りではないのだけど。
ともかく、先輩の可愛らしい姿を見せる事に嫉妬しなくとも済む相手ばかりだし、俺としてもかなり安心だ。
他の野郎が来る場合もあるのだが、それは先輩が多少行きたがっても断るからな。
誰が見せるかってーの。
当日は、集合がお昼からと言うのもあり、午前中は愛実先輩と映画を見に行って楽しんだ後集合場所へ向かう。
そこには、既に親友の健と愛実先輩の親友の明美先輩と……その2人を引っ掻き回している間宮が来ていた。
あららー。間宮はまだまだ場の空気を読むって事が苦手だからなー。
明美先輩的には色々言いたい事はあるだろうけど……でも、嬉しそうに腕に組み付かれれば何だかんだ愛実先輩同様お人好しなあの人の事だ、また何も言えなかったのだろうな。
で、半ば放置状態の健がシュールすぎる。
チラチラ明美先輩がお前を気にしているのに、なんで気付かずに黄昏てんのさ?
と、何気に少し遅れて、それを理由に皆に奢ったりする宮城先輩はともかく、時間にうるさい矢部先輩まで来ていない事が不思議でキョロキョロと辺りを見渡せば……あー、自販機の影から楽しそうに宮城先輩が健達3人のやり取りを見ていて、その後ろから矢部先輩が宮城先輩を呆れた様子で眺めてらぁ。
もう約束の5分前くらいだし、ぼちぼち矢部先輩が宮城先輩を引きずって合流するかな?
「あっ、愛実お姉ちゃん!」
明美先輩にまとわりつくのに必死だったようで、一番遅れて俺達に気付いた間宮がこちらに突進してくる。
ので、抱き付く前に額を押さえて突進を止めた。
ははん、俺が隣にいるのに誰が大人しく抱きつかせるかってんだ。
そんな羨ましい事大人しくさせる訳がねーだろ。
「はいー、いい加減落ち着こうな」
「むー、お兄ちゃんの意地悪ー」
俺と間宮を見て苦笑いを浮かべる面々。
って、それは心外だなぁ。
折角間宮の暴走止めたって言うのに。
「さ、後は矢部君と宮城君を待つだけだね」
お、平静を装いながらさり気に健に近づく明美先輩。
なのに、このにぶちんはすっと離れつつ辺りをうかがう。
「ですねー。っと、先輩方何しているんです?」
おい、お前は矢部先輩達に気付く前にしょんぼりしている明美先輩に気付こうな。
って、しまったー!
「おい、お前ずるいぞ!」
「へへーん、油断しているお兄ちゃんが悪いんだもん」
「えっと、2人とも仲良くね」
いつの間にか愛実先輩の右腕にくっついていた間宮に憤慨しつつ、困ったように微笑む先輩に少しだけ申し訳なく思いつつも、左腕に腕を絡める。
「大丈夫です。単に僕らが先輩を好きすぎるだけです」
「そうそう、愛実お姉ちゃん大好きー」
にこやかに言う俺達に、恥ずかしさの限界点を超えたのか恥ずかしそうに俯く愛実先輩。
可愛い。
「うわぁー、相変わらずカオスだなー。
たっのしー」
「うわー、宮城君相変わらず真っ黒だね」
と、僕らをニヤニヤと見ながら口にしている宮城先輩に、どこか呆れた様子の明美先輩。
別に痛くも痒くもないので俺は構わないですけど、愛実先輩が恥ずかしがっているので程々にして下さいね、宮城先輩。
「そこは宮城先輩ですからね!」
「……健、後でお前説教な」
「えー! なんでー!?
矢部先輩、助けて下さい」
「うーん、助けてやりたいが……まぁ、頑張れ」
「な、なんで!?」
あ、なんかあっちも面白そうな状況になっているなー。
いや、それよりもこっちが重要だ。
間宮に話しかけられて愛実先輩がそちらに集中しちゃってるし、俺も構ってもらいたい!
何だかんだ賑やかにカフェに辿り着いたのだけど、なるほど落ち着いた雰囲気で素敵なカフェだな。
夫婦っぽい若い男女とどちらかの父親なのかダンディーな人がマスターで3人で切り盛りしているようだけど、人柄がとても素敵な印象を受けて尚更いい。
「いやー、宮城先輩って本当にこう言う場所見つけるの得意ですよね」
「そりゃぁ、そんだけの数回っているからなー。
言い方は悪いが、俺にとっては外れって場合も多いんだぜ?」
肩をすくませる先輩に、なるほど好きだからこそかと思う。
俺も愛実先輩の為の労力は寧ろ喜びを感じるのだし、そう言う事なのだろう。
少しニュアンスは違うかもしれないけど。
その後、1番大きなテーブル席へと案内され、宮城先輩からお勧めを聞きつつ思い思いに注文する。
ありがたいような、席は分けてくれた方が愛実先輩と2人きりになれてそっちが良かったような。
まぁこれはこれでありだろう。
愛実先輩とは今度2人で来ればいいだけだし。
「ふむ、これは美味しいな。
これも甘すぎず、俺は好きだ」
宮城先輩ほどじゃないにしろ、それなりにコーヒー通な矢部先輩がそう口にする。
矢部先輩はどちらかと言えば紅茶派だったそうなのだけど、宮城先輩の影響からかどちらも同じくらい嗜むようになったとか。
本当にこの2人仲が良いな。
そりゃぁ一部の先輩方がある種のネタで楽しむのも頷けてしまうと言うものだ。
「だっろー。
これは女性陣や田中には甘味が足りないように感じるかもだけど、そっちのモンブランは甘ったるいから丁度良いんじゃない?」
ドヤ顔な宮城先輩だが、こんなにいい店見つけてくるなら素直に受け入れられるな。
そして、実は相当甘党の俺。
そのへんまで配慮して貰ったようで、素直にありがたくて頭を下げる。
実際このモンブランすげー美味いし、ブラックコーヒーとも合う。
「うん、物凄い美味しい。
紅茶だって美味しいし、凄く合うよ」
「ほぅ、それでは今度はコーヒーではなくて紅茶を楽しみに来ないとな」
愛実先輩の言葉に矢部先輩が興味津々に口にする。
ふと見れば、健はうめーうめーと零しながら夢中でコーヒーを挟みながらデザートを食っているし、明美先輩は何が楽しいのやらニコニコ微笑んでそれを眺めているし。
間宮は……どんだけ猫舌なのか、未だに紅茶をふーふーと息を吹きかけて冷ますのに夢中な模様。
まっ、わーい、来たー! とか言って猫舌なのにすぐ口を付けて火傷してたみたいだし、うん、少しは学習した方が良いと思うぞ。
お前毎回こう言う時舌を火傷してんだからさ。
思い思いに食べて飲んで雑談してと楽しむ俺達。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎていくのだった。
「今日は楽しかったね!」
気付けば日が短くなったのも手伝い、すっかり夕暮れ時となった為解散した俺達。
いつものように愛実先輩を送りつつ、会話を楽しむ。
健は矢部先輩と宮城先輩が上手く誘導して明美先輩を送っていったようだ。
けど、あの2人はまた何もないんだろうなー。
間宮は矢部先輩と宮城先輩と一緒に帰っていった模様。
子守お疲れ様です。
「ええ、また皆で遊びに行きたいですね。
勿論、先ずは愛実先輩とデートで使いたいですけど」
そう口にすると、嬉しそうに頷いてくれる。
いやー、本当に幸せだな。
繋いだ手の温かみを確かに感じながら、更に話は弾んで行くのだった。
以上その後の日常回でした。
予定では会長視点を書くはずでしたが、ついこちらが思い浮かんでしまったので先にこちらを書いてしまいました。
こんな感じで番外編は続編までのデート話や日常回、他のキャラ視点なんかちょくちょく上げて行ければと思っています。
以下、少しばかり宣伝をば。
この作品の続編を執筆し始めました!
宜しければこちらもどうぞ!
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続いて、この作品のIFのお話。
こちらは色々世界が広がってしまいましたので、こちらは乙女ゲーのみで収束させる予定です。
並びに楽しんで頂ければ幸いです。
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最後に、なんでこんな時期外れの? とお思いかもしれませんが。
節分並びにバレンタインの短編も既に執筆済みだったりします。
が、企画物として参加させて頂きましたので、こちらでは載せない予定です。
気になる方は↓のURLから読んでみて頂ければと思います。
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なお、バレンタイン物の方はバレンタイン当日に更新されるようですので、当日までのお楽しみと言う事で。
それでは長々と失礼致しました!
またこちらでも宜しくして頂ければと思います。