Ep.1 ドッペルゲンガー 〜 0
この子は、誰にでも気さくで、誰にでも優しい女の子だった。
頭も良くて、リーダーシップも持っていた。
―――なりたい。
俺と違って、彼女は学校内の人気者だった。
俺は、そんな風にはなれなかったから。
―――なりたい。
薄暗い路地裏。
悲鳴でうるさかったこの場所も、すっかり夜の静けさを取り戻している。
……よく見ると、本当に可愛い女の子だ。
痣が残って、両目が上を向いたままでも、そう思えた。
この子を選んで正解だったな。
―――なりたい。
興奮してきた。
重たくなった彼女の身体を起こす。
地面の水溜まりに自分の姿が映りこむ。
黒いタンクトップを着た、筋肉質でガタイのいい男。
これが今の俺だった。もうしばらくは、使わないだろうが。
―――はやく、なりたい。
僕は、息をしていない彼女を見つめる。
汗ばんだ筋肉が贅肉に、タンクトップがTシャツに変化する。
そのまま身体の肉が縮んで、衣服がブレザー服に変わった。
―――はやく、なれ。
死体から手を放して立ち上がる。
僕の意識が、彼女のものになっていく。
流れていく高揚感を噛みしめて、スキップをしながら路地を出て―――。
「……あれ? あたし、こんなところで何してたんだっけ?」
いつの間にか、あたしは見慣れない住宅街に迷いこんでいた。
――― Ep.1 ドッペルゲンガー




