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9話 禁忌を侵し者と奮起するツミキと再度巻き込まれる悪魔

ツミキがツミキの親父を横にすると、爆発の発生源に向けて走り出した。


ギリギリで何とか肩に掴まれた……あぶねぇ……このパペットの体は移動面に関しては最低も良い所だからな。


……おい、ちょっ、待て!


「へぶっ?!」


ツミキのヤツ……振り落とした上に俺を気にも止めずに走り去って行きやがった。


仕方ない、瞬間移動の魔法でツミキを追い掛けるか。




ツミキが発生源に辿り着いた。俺は瞬間移動の魔法で先回りしたものの、戦力になるか怪しいから瓦礫の影からツミキをそっと覗く。


「……凄い、素晴らしい、悪魔とは……これほどの力を持っていたのか!」


元は執務室だったはずの瓦礫の山。そこにはツミキの兄と……悪魔がいた。


……成程な……禁忌ってのは悪魔の召喚のことか。当然だな。俺含め、悪魔は絶大な力を持つ。封印された今の俺は有り得ねぇくらい弱いが。


げふんげふん……悪魔とは、人間には到達できないほどの魔法と力を保持する存在。


「これほどなら、こんなチンケな一族の当主にならずとも……この私が!世界の王になることすら可能だ!素晴らしいぞ!」


そして別界から召喚された悪魔は、気紛れに召喚した人間の願いを叶え、その残虐にその代価を持って行く。


「ぐはっ?!」


そう、気紛れに。


おっと、かなり派手に飛ばされたな。あの悪魔の手の甲を当てられて、辛うじて残った屋敷の壁を幾つも破って。


魔法使いならギリギリ死にはしないだろう。下手したら死ぬだろうが。


あのツミキの兄……恐らくツミキの親父の勘当に逆ギレして悪魔を召喚したな。まぁ、因果応報とはこのことだ。


俺としては逆に処分されなかったのが不思議だが……その点は親の愛ってことだな。


「……何者だ。この悪魔ルーザーシストに歯向かおうとする者は」


「……」


ツミキはただ無言に悪魔を見つめ……いや違う。人形がいない。と言うことは……いた。悪魔から隠れるように全方位から悪魔を取り囲んでいる。


動いた!人形達が音を立てず悪魔に迫って拳を振りかぶった。だが……


「ふんぬ!」


「くっ……!……強い」


……人形が、全て悪魔から放たれた爆風と共に吹き飛ばされた。


やっぱりそうなったか……余りにも無防備だったが、誘ってやがったな。


「……あの方向か」


「……?」

……?あの悪魔……どこを見て……って翼を広げやがった。まさかあのまま人口密集地に行くつもりか!


「業火よ、奮起せよ!」


悪魔がある方向を向き翼を広げた瞬間、何をしようとしているのかを察したツミキが、俺すらジリジリと焼けそうなほどの炎を生み出し目の前の悪魔に浴びせ掛けた。


「この我がムシケラ風情を見逃してやろうとしているのに……身の程知らずが。しかしぬるいな。はあっ!」


うわー?!吹き飛ばされるー!さっきよりも数段も強い爆風に吹き飛ばされるー!


…………やっぱり不便だ、この体は。


「愚かな。命亡きデクをその身で守るとは……我には理解できんものだ」


何を言って……って、ツ、ツミキ!あのバカ!どんなに人形が好きだったとしても、爆風で跳ね返った炎から人形を守るなんてことはしないだろ!


……キッチリ、ツミキが守った人形以外はちゃんと物陰に隠れている……あの人形だけが逃げれる場所が無かったのか。


背中が焼けてやがる……ツミキの魔法の才なら致命傷にまでは至らないだろが……だが、気を失っているな。無理も無い。


「邪魔は消えたか」


悪魔は人間を暇潰し程度の道具にしか考えていない。その点については俺が良く知っている。そして、悪魔は人間を軽く見てはいない。油断すれば足元をすくわれることは理解している。


だからこそ……


「おーい!ちょっと待ってくれ!そこにいるのは同族だろ!?なら封印を解いてくれないか!」


俺があの悪魔のに近付きながら現れると、悪魔の意識が完全に俺に向かった。そして拾い上げられた。


「ふむ。この中に同族が封印されているのか。やはり人間は油断ならないな。ぬ?……中々に頑強な封印。だが、だが!」


人形から俺という存在が引き剝がされ、封印される前の俺の姿に戻った。


「おお!助かった。まさか封印されるとは思いもしなかったからな」


やはり封印解除に頼るべきは同族だ。


「さあ、久しき自由はどうだ?我は今から人間の街で混乱に打ちひしがれた人間を食しに行こうとしているが、其方はどうする?」

「そうだな。封印の復讐もある。俺も行かせてくれ」


油断し背を向けて、再度翼を広げた。仕掛けるなら、今しか無い!


「オラァ!『ビキビキバギャァ!!』フハハハハッ!バカめ!同じ悪魔だとしても観は違うんだよ!」


意識が完全に逸れたから、その隙に翼を引き千切ってやった!これでもう飛べない。航空能力は地に落ちたと同義!


「キ、キキ、キサマ!この、この異端者が!!」


「ああそうさ!俺は異端者だ。だがそれがどうした!!」


不意打ちが決まった。さぁこれで、後には引けねぇぞ……俺!




かつて、昔々俺は人間の生活に興味を持って、悪魔が住む世界を抜けてこの世界に来た。


こんなことをしたのは、悪魔の歴史上俺だけだ。召喚では無く、自らの足でこの世界に来たのは。


俺の野望は、今や2つ達成された。残された最後の俺の野望は……人間と共に、日常と呼べる生活を送ること。ずっと、俺はそれに憧れていた。


今までの生活は、俺だけじゃ何もできないツミキありきの日常だった。料理ができてもあんな姿じゃ料理ロボットと相違ない。


そして今は、ツミキは日常を送れていない。ツミキが望む毎日を……手に入れられていない。


かつて力加減を間違えて山を消し飛ばした時も、かつて俺が気に入った人間を護る為に、その力を使った。


後悔はある。やり過ぎたことへの後悔と、助けてやったことへの感謝を貰えずに封印されてしまったことへの……感謝を伝えられなかったことへの、後悔。


「はぁぁ……!」


……ったく、何でかなぁ……柄でも無ぇのに、何で異端者って言葉だけで過去を思い出すんだろうなぁ……昔を思い出しても、今は変わらないだろうが。


昔気に入っていた人間とツミキは天と地ほど違う。正直ツミキの度を超えた人形好きは俺には理解できないし、ツミキが日常生活ですら全く魔法を使わないことも理解できない。


だが、一つだけ共通点がある。それは……あっ。


完全に意識を失ったと思っていたツミキが、立ち上がった。いや、意識は辛うじてあったみたいだな。俺が余りにも重傷で決め付けていただけか。治癒魔法で怪我は大体治ったようだ。


となると、封印から解き放たれた俺の姿は分かっているか。良かった。説明するのが面倒だったから良かった。


「……ぜぇ、ぜぇ…………行くよ、デーモ!」

「あぁ!」


……それは……俺が気に入った。ツミキを、俺は気に入っている。不思議だ。何で俺はこんな変人を気に入ったのか、分からない。


だが、一つだけ分かっていることがある。


過去の俺はいない、今の俺がいるだけだと。

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