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19 君を守る盾になろう(アシュリー視点)

「アシュリー、こんばんは。具合はどう?」

「ボチボチですよー」

「それはよかった。……でも、なんで仕事してるのかな。僕、夜はちゃんと休むよう言ったのに」

「俺が目を通さないとどうにもなんない案件もあるし、書類読んでサインぐらいなら傷にも響かないよ。それにこうして、ベッドの上で休み休みだし」

「ほんっと、君って真面目」

「意外性があっていいでしょ?」


 苦笑しつつ、アレクがベッド横の椅子へと腰掛けた。


「あの辺りの山、調べ終えたよ。君が予想したとおり、熊を退治した夜。大勢の人間が一気に入ったせいで、他の獣たちも驚いたみたいだね。昨日までに、他の山へ移動した足跡や痕跡がいくつも見つかった。きっかけはあれでも結果は山狩りになったし、冬眠も始まるだろうしね」

「油断は禁物。引き続き監視させて。今回みたいにいつ出現するか分からないより、ずっといい。全部を殺す必要もないしね」

「それは僕から、君の指示として団員に伝えるよ」


 頷いて書類をめくっていると、アレクがまた余計なことを口にする。


「エマ、毎日看病に来てるんだってね」

「…………お前のでっかいお世話のせいでね」

「前に言ったよね。余計なお世話はするよって」

「言ったけどさー……さすがに勘弁してよ。俺、フラれたんだってば。なのに、自分のせいで怪我させたって負い目を感じてるエマちゃんに看病されても……」

「嬉しくないんだ」

「すっごい甲斐甲斐しく、看病してくれる。俺の髪を梳かしてくれたり、包帯巻き直してくれたり、食事の準備とか……」

「全部、伴侶としてだったら良かった?」

「早く諦めて切り替えないといけないのに、触られるたびに心臓跳ねる。やっぱ好き! って言いたくなる。……困らせちゃうの、もう嫌なのにさ」


 また泣きそうな自分もいて、そういう弱い俺も嫌で、辛いし苦しいし本当に早く終わらせてしまいたい。

 だからって、好きって気持ちを消してしまうのも土台無理な話。だって俺は、エマちゃん以上の子は現れないと自分でも認めてしまった。


(だからこそ、俺も絶対に守るって飛び込めた)


 果敢に熊へ挑んでいる彼女が見えると、正直、何やってんだ馬鹿! って心で叫んだ。

 いくら剣の腕に自信があっても、熊を相手になんて無謀でしかない。騎士は守るべき者のために、自分の命も大事にしなきゃいけないのにさ。

 でも、守るべき者が目の前で危険にさらされているのであれば話は別で。それはきっと、あの場のエマちゃんも同じで。


「俺は彼女の盾なんだ。情けない盾だけどね」

「なんで情けないの? 君は彼女を守ったよ。君がいたから、エマも最後の攻撃に出られた」

「……無傷だったらまだかっこついたのに、気絶とかマジで情けないっ」

「僕は情けないとは思わない。きっと、エマもね」


 俺から書類を取り上げて、アレクは部屋を出て行こうとする。


「おーい、置いてけー」

「だーめ。寝る前はちゃんと頭も休めて」


 閉じたドアを睨んでも、意味ない。

 頭を使わないと、エマちゃんばっかり考えちゃうんだよ。それが嫌なんだよ。


(いくら盾であり続けるって決めても……考えれば考えるほど、好きって答えしか出ないのは嫌だ)


 エマちゃんは、変わらず俺を騎士団長として慕ってくれている。

 むしろ今まで以上だ。

 そりゃそうだよね。一度ならず、二度も命の恩人になったんだ。看病だって親身にもなるよね。


(その親身さが辛いなんて言われても、君は困るよね……)


 でも言わなきゃ。


(明日こそ、もっと本気で言おう)


 もう看病に来てくれるなって。

 ああ、でもさ。辛くなってるの、俺だけで良かったな。

 こんな気持ち、君は知らなくていい。君は変わらず、真っ直ぐな心で騎士団員として突き進んでくれていい。


(頑張ろ……)


 俺は結局、頑張ればいいんだ。

 騎士団長として正しくいられれば、君は俺の後を追い続けてくれるんだからさ。


(……幸せでしょ、それだって)


 君が俺の背を守ってくれているんだ。

 俺も、君の背中を守れるんだ。


 こんな幸せ、きっとないよね――。

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