第九話 戦闘訓練? いいえ、ただの喧嘩です(前)
「おぉ、すごい! 私にもできましたよ!!」
そう叫びながら嬉しそうに水球を浮かべているのは飛行機の副操縦士だった佐々木市之丞だ。優之介と斬波を見て他の七人も真似て試行錯誤していると二時間経った頃には皆水を出す、風を吹かせる、土の塊を生成する等、簡単な魔法ができるようになっていた。
「流石は勇者殿、飲み込みが早いようだ。しかし、気怠さや疲れを感じたら魔法を使うのはやめてくれ、それは体内の魔力が枯渇している症状だからな」
クラウディアが忠告した丁度良いタイミングで優之介は若干の倦怠感を覚えたので魔法の使用を中断して休憩に入る。周りを見回すと他の人達も魔力を使い果たしたらしく、皆膝や地面に手をついていた。
「ふふふっ、イメージが具現化出来るなんて最高じゃないか! 分かるぞ、毛細血管の中を血液が流れるように魔力が体内を駆け回っていることが! そして体内の魔力は心臓付近に一度集まりそこから身体の各パーツに送り込まれる事が! すごいぞ、これはもっと調べねば!!」
狂気のマッドサイエンティストになりかけている斬波以外の八人は。
(あ、あかんやつだ……。斬波さんが職人魂に火を付けおった!)
斬波は研究職の職業柄、一度気になったことは必ず一つの答えが出るまで追求しつつ、答えが出たら出たでまた新たな可能性を探そうとする性格と、元技能職の職業柄、物作りに対する品質や生産効率を最大限に上げようとする職人魂の両方を兼ね備えてる、言わばかなりめんどくさい人である。
「斬波殿、その辺でよせ! それ以上続けるとこの後の戦闘訓練に響くぞ!!」
「構 わ ん !」
クラウディアが止めに入るが斬波は魔力を制御、維持する事を止めなかったので、彼は魔力枯渇状態になって倒れてしまった。
「斬波さぁ~~ん!!」
「あぁ、意識が持って行かれそうだが死にそうにはならないなぁ……」
「言わんこっちゃない、誰か魔力回復ポーションを持ってきてくれ」
クラウディアがそう言うと奥からメイドが現れ、魔力回復ポーションを斬波に飲ませた。
戦闘訓練に移りたいが斬波が仰向けに大の字で転がっているので優之介が仕方なく斬波を引きずって端に置いておいたところで訓練が再開した。
「よし、それでは戦闘訓練だ、各自に木剣を渡す。これから君達には一対一で私と手合わせしてもらう、私が女だからと言って手加減は不要だ。まぁ男女比で女性が多いから要らぬ心配だと思うが、とにかく遠慮はいらない。かかって来なさい!」
クラウディアがそういうので優之介達は顔を見合わせ、誰が一番最初に行くかアイコンタクトを取った結果……。
「私が一番手で行きます!」
市之丞が先手を名乗り出た。市之丞がクラウディアの前に立つと直様模擬戦が始まった。
クラウディアは市之丞に先手を譲り、市之丞がクラウディアに斬りかかった。クラウディアは市之丞の構えや剣筋を見極める、最初は避けたり木剣で受け流したりしていたクラウディアだったが、彼女が相手の力量を測り終えるとカウンターを入れて反撃に出た。
「ぐはぁっ!?」
「大振りだな、それに踏み込みも浅い。剣は素人か?」
「は、はい……」
「焦ることはない、また明日から訓練すれば強くなれる」
「ありがとうございます……」
市之丞との模擬戦が終わってもクラウディアは休憩を挟まずそのまま模擬戦を続けた。
直子、理音、優里音、春香、咲良、の順に果敢に攻め込んだが市之丞と同じような結果となってしまった。しかし、彼女は違う結果となった。
「アオイと言ったか、なかなかやるな……」
「えぇ、そちらこそ……。と、言いたいけど持久戦になったら私の負けね、現役の軍人さんの体力には勝てないわ」
葵はクラウディア相手に善戦していた。十分経っても決着が付かず、葵の力量を測れたタイミングでクラウディアが「これ以上はいいだろう」と模擬戦を中断した。結果はドローとなった。
皆が待機してる場所に葵が戻ると葵はちやほやされていたが彼女は気恥ずかしそうだった。これで模擬戦を控えてるのは優之介と斬波だけとなった。しかし、斬波はまだだるそうなので優之介が行く事にした。
「よろしくお願いします!」
「あぁよろしく、ソフィーのお気に入りがどのくらいやれるか見せてもらおう」
「え……」
「私とソフィーとタマキは幼馴染でな、彼女の事は大体理解できる。君はソフィーが好きそうなタイプだしな、顔も可愛いし♪」
「昨日の夜、言われました……」
「ヒュ~♪ 大胆になったわねぇあの子も」
クラウディアが口笛を吹いて茶化す。
「あの、さっさと始めませんか? どうして俺の時だけ無駄話を……」
「私とシバ殿の回復時間稼ぎさ……。さぁ、君の実力を見せてくれ!」
「ちょっ!?」
クラウディアがそう言うと同時に優之介に斬りかかって来た。優之介は不意を突かれながらもギリギリで躱す事ができた。
「はぁ、はぁ……。いきなり斬りかかってくる事ないじゃないですか!」
「殺気を感じ取れぬようではまだまだだな、そのようでは直ぐに死ぬのがオチだぞ!」
「……っ!!」
相手によって力量を測り、それに合わせて手加減をしつつ戦い方を教えるクラウディアだったが、優之介が相手の時はまるで敵を見つけたかのように果敢に攻めていく。
優之介はクラウディアの猛攻を避けつつ抵抗するが虚しく、模擬戦が始まって五分程度経ったところでクラウディアから渾身の一撃をもらった優之介は軽々と吹っ飛ばされ、練兵場の壁に激突しそうになるが……。
―ガシッ!
誰かが優之介を受け止めた。
(後)に続きます。
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