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帰ってきてもファンタジー!?  作者: 月見ココア
修学旅行編 第二章「彼が行く先はこうなる」
288/290

その、出会い(再会とは呼べない)8

変なところで終わっているが、仕様です







もう会うはずのない人達が、


いるはずのない場所で、


やらなくていい激闘をしていた。



──これホントどういう状況?



マスカレイドは全てを理解して割り込んだ訳ではない。

そもカレがここにやってきたのはムジカにつけた触覚力場(黒針)の消滅が起因だ。

即応できたのはステラが危惧していた鉄火場とは縁遠い、大統領との密談前の

空いた一日であったおかげ。しかも時間は夕方だ。その空きを埋めていた用事、

あるいはようやく出来た時間を使っての弟子(トモエ)との魔力・霊力談議という名の

久しぶりの鍛錬が終わった後の出来事であったのもちょうど(・・・・)良かった(・・・・)

実に彼らしい『都合が良い巡り合わせ』であろう。

尤も当人は朝方に視点が違う(・・・・・)悪夢(・・)で目覚めたのも合わせ、自分の知らない所で

だが自分に関係する厄介事が進行中なのを半ば確信していた所にそれだ。


「昨日の今日でこれとは働き者なことで」


誰にともなく嫌味もこぼすというものだろう。

それで済ませて迷いなく動こうとする自身への皮肉かもしれないが。

触覚(黒針)の消滅察知から彼が回収できた情報はおよそ三点。

付着させていた男性の生命の無事(それ以外は無事なのかが不明)。

原因が莫大なフォトンによる摩耗(どこから、何故、どのように、は不鮮明)。

触覚が消えた場所の位置情報(表面上異常が感知されてない居住区の一角)。

つまりはナニカは確実にあったが詳細も被害規模もよく分からないという話。

行かない訳にはいかなかった。ゆえに人目が多くあった場合と自分(シンイチ)の関与を

隠す意味で仮面を被り、マスカレイドとして転移魔法で駆けつけたのである。


早々に見つけたのはある意味で予想通りの二名。

公園で休まされているひどく消耗した様子のムジカと

彼を見守りながらも都市警察への通報をしていたリディカだ。

無事な様子に安堵はしたが近くに広々と展開されているファランディア式の

人払い結界の存在に頭痛を覚えたのもまた事実であった。


『……大統領へのお土産話が増えそうだな、こんちくしょうめ』


いいかげんにしろと憤慨しながらも選択は冷静に。

まずは彼ら一般人が優先だと通報を盗み聞きして事態と状況を把握。

即座にきちんと対応するよう仮面の名で方々に“お願い”をしたのはこれが

自分が関わる事件のどれかとの繋がりを予感したからだが、やらかして横たわる

少年がどうにも他人に思えなかったのもあった。


『へ?』


そして、さて次は結界内で誰が何をして、と意識を向けた瞬間。

内部から銀色の魔力光が立ち上ったのを目撃する。それは『銀翼』特有の輝きと

波動で、そこにかすかに混ざっていつかの贈り物(リボン)の気配もあって、つい

間の抜けた声を漏らしていた。

だって。

なんで。

そんなわけが。


『な、なんでお前がいるんだよ!?』


全力の困惑を全力で放り投げるように叫びながら慌てて結界に飛び込んだ。

光の下へ急行してみれば触れた物すべて消し飛ばすという『銀翼』と

あらゆる攻撃を防ぐ概念を持つという神装霊機の『盾』と

(ことわり)に干渉できるという理力を大量に込められた『剣』。

それらが正にいま激突しようという場面だった。


──ここら更地にでもする気かっ!?!


矛盾の逸話その再現、どころの話では済まない。

三つが同時且つ全力で衝突した場合の結果は邪神の知識をもっても予測不可能。

全員の目と意識を浚うために蛇腹剣で割り込んだのがカレ視点の事の顛末だ。


『────この場は私が預かる!』


だから、じつの、ところ。

その場にいる全員を把握したのはこの宣言時。

仮面を中心に15m程の距離感はどちらに誰がいるかを見やすくしていた。

左手側に個人かアースガント勢というべきかステラがただ一人。

右手側に教会勢力たるリーモア騎士『盾』のメリルと『弓』のケヤル。

さらに聖女シンシアとその側仕え二名(・・)

微かな動揺も表に出さなかったのは内側の努力か仮面の能力か。

ともかくカレは中立者として双方の間に立ち、双方に睨みを効かせた。


「は、ははっ……すごいなラナ。こういうのビンゴって言うんだっけ?」


「待って、これはさすがに一度も言ってない!

 なんなのよ今日は! 次から次へと、しかもここで本命だなんて!?」


右手側。

極度の緊張ゆえか思わぬ僥倖ゆえか。あるいは全て含めた不運にか。

軽口と愚痴を叩きあう男女を余所に巨躯の女性(メリル)が前に出る。


「……預かる、とはいうがなマスカレイド。

 悪いがこっちは応戦してただけで、治める気ならまずそっちの…」


「委細承知いたしました」


「は?」


「こちらに異論はありません」


その反対側から被せる形ですらすらと淀みなく了承を示したのはステラ。

証明とばかりに銀翼を解除し、斧槍を衣服に仕込んである魔法収納に仕舞う。

そして両手を前で組み、背筋を伸ばし、まるで─本業だが─使用人かのように

気配を薄めてすっと一歩下がる。

カレからすれば見慣れた所作。

戦意は無いとの表明だ。

しかし。


「…はああぁぁっっ!?!」

「え、ええぇ、マジぃ!?」


何故か教会側、特にリーモア騎士二名は愕然とした顔で固まっている。

ステラの反応があまりに予想外だったと言わんばかりのそれに思わず視線を

向ければ彼女は落ち着いた表情で何も語らず、動揺も見られない。

あくまで表面上は。

そう、カレにはしっかり見抜かれていた。

あれは『言い訳はあるが、多分に自分が悪い』時の顔だと。

そのため直接聞かれるまで黙っている気なのであろう。

よしんばそれで乗り切ろうという魂胆も感じる。

──こいつ意外に小狡い所あるんだよな


「俺らが何を言っても無反応だったのに!」


「まったくだよ! マスカレイドが出てきた途端に!

 楽しんでた私が言えた口じゃないが、なんだ、って…急、に……っっ!?!」


あとですべてを詳らかに聞き出すと決めたカレは視線を教会側に向ける。

仮面として強引に割り込んだ手前ステラ側にだけ肩入れするのも親し気に声を

かけるのも避けるべきだったからだが、そこで妙な様子のメリルと目が合った。

それはどこか感情を無くしたような、一瞬前までの愕然を超えた愕然の色を

持った目であった。


『どうしたのかね『盾』のメリル殿?

 この場の停戦に異議があるのなら私の耳は開いているぞ』


いかにも自分の思い付きに驚いた、という顔にあえて外れた指摘をぶつける。

見当違いか真相に迫る気付きかは別としてその思索は邪魔しておくべきと

判断したが、少し遅かったか。


「……ははぁ、いいや不満はないよ。こっちは自衛してただけだしね」


表情を切り替え、されどどこか機嫌良さげな表情は本心が読めない。

しかしマスカレイド預かりには言葉通り不満は無いのか。正当防衛の末と

主張しつつも彼女はあっさりと『盾』を仕舞い、視線で隣の男に指示を出せば

彼もまた『弓』を仕舞った。神装霊機は担い手と半ば一体化しているため、

手元にあれば意思一つで体内へ吸収されるように仕舞える(消せる)のだ。

それは逆を言えば意思一つで取り出せるという話だが、そのひと手間はステラの

魔法収納と同じ。等しく武器を収めたといえる段階にはなった。

だからカレも蜷局を巻いて待機させていた蛇腹剣をフォスタに仕舞う。

これにて建前として全員が武装を解除したといえるだろう。

尤もこの場における最大の問題点は別にあった。

ただひとり呆けた顔をしている誰か、だ。


「おっと、一ついいかい?」


『何だ?』


「私らにこれ以上の戦闘の意思はない……無いけども、だ。

 幸か不幸か私達はこれまで誰もマスカレイドと遭遇した経験が無いのさ。

 異郷の地とはいえ一応立場ある身だ。退くには確信が欲しい」


『……自分(わたし)マスカレイド(わたし)である証拠を出せ、か……哲学だな』


仮面は皮肉げに笑ってみせるが彼女は「話が早くて助かる」と変わらず

機嫌良く笑っている。まるでいないはずの影を見ているかのような。


「なに、私も本気で疑ってるわけじゃない。

 見る限りマスカレイドだろうなと思ってるが、一点だけ逸話ハズレあってね」


『ほう、どこかな? 次から気を付けよう』


「一言でいえば……威圧感が無い」


『は?』


「目撃者達が等しく震えあがり、時には現れただけで大地や建物が崩れたとも

 聞く圧力が全く感じられないし周囲も平和そのものだ……どうしてだい?」


一方で視線や声からは何かを探ろうという意図は感じられない。

純粋な疑問のそれは目の前にいる影人形が本当にマスカレイドなのか。

それを確定させたい意思だけを感じる。この場を収める理由付けとして

仮面との突発的遭遇は周囲を最も納得させやすいからだろう。

ファランディア人にとっては特に。

だが、それは少々迂闊な問いでもあった。


『…………平和、といったか。いま、ここを』


「あ、ああ?」


初心者ゆえ仕方がない対応・反応ではある。

あるいは彼女達にすればいつものことではあったのだろう。

今の発言も仮面がもたらした被害が無いという意味ではあろう。

カレ自身も過去に色々とやらかした側だ。本来は偉そうには語れる立場にない。

されど彼女達が未だこの地に留まるつもりなら自覚させなければならない。

ここがファランディアではないということを。

知識ではなく、感覚・本能ともいうべき部分で。


『お前達─────ここをいったい(・・・・・・・)、どこだと(・・・・・)思っている?(・・・・・・)


視線に、気配に、言葉に、加えていた『抑え』をほんの少し緩めた。


「っ、ぐっ!?」

「姉御!?」


全て彼女一人に集中させれば鍛え上げた巨躯もぐらつかせられたのは面目躍如か。

軽挙妄動、ではないと思いたい。もう一騒動確定なのは内心ため息であったが

口から出た言葉にはその辟易とした感情は滲まない。


『ガレストというファランディアを一切知らない異世界。

 その首都であるカラガルの一般市民たちが住む居住区域。

 結界のおかげで人的被害はゼロだが……見ろ、なんだこの惨状は?』


都市大地は砕け、罅割れ、ところどころ焦げている。

ビル壁面は裂け、穴が開き、そしてやはり焦げている。

そういった場所が両手の指では数え切れないほど、ある。


『こうしないように私は抑えていたのだがな……』


「………」


「あ……はは、あはは…」


身に覚えがあり過ぎるのだろう。

ステラは沈黙しつつも冷や汗を流し、メリルは乾いた声で苦笑いするしかない。


『いったい誰が直すのだろうな?

 どこから予算が出るのだろうな?

 誰が責任を取らされるのだろうな?』


お前達ではないのは確実だな、お前達の仕業なのに。

裏の嫌味を聞き取ってか双方揃って青い顔で頭を下げた。


「大変申し訳ありませんでしたっ」


「す、すまない! あとのことまで考えてなかった…」


話せば、指摘すれば、理解してくれるだけ上等なのだろうと頭の片隅で

思いながらもここで釘を刺しておかなければならなかった事実に頭痛を覚える。

今まではそれぞれの所属組織ないし国家が事後処理をしていた。出来ていた。

ファランディア最大の宗教組織にして大半の国を動かせるリーモア教会と

魔法の最先端技術や特許権を山ほど保有する大国にして強国アースガント。

彼らの影響力が皆無となる場所などあの世界では魔族の国ぐらいしかない。

それがなくとも高名であったり、一財産や特殊技能を持つ者たちである。

ある程度の被害なら個人での補填も、自らでの修復も可能だ。

ここがファランディアであれば、だが。

そんな注釈を骨身に染みこませられるならこの行動はメリットの方が多い。

唯一のデメリットはさる爆弾の導火線に火をつけた点だが。


『分かればよろしい。

 とりあえず、ここの処理は私が…』


「───随分と口の回るお方ですね」


どうやら、思ったよりは余裕(長さ)はあったらしい。

そんな感想がまず浮かぶ自分は果たして彼女ほど余裕があるのか無いのか。

全員の視線が集まっていた。奇妙なほど沈黙を続けていた唯一の女性へ。


「これまで私は数多くの悪しき魂の者達を処断してきましたが、誰も彼も

 小賢しい物言いで話をすり替え、自らの罪から逃れようとしていましたよ」


「おい聖女さん何を?」


「シンシア、さま……?」


あたかも「お前もその類だ」といわんばかりの敵意ある言葉に彼女以外が困惑と

動揺で中途半端に声をかける以上の行動に移れなくなっていた。

────とりあえずお前(ステラ)は落ち着け。

気配を殺すな。目の光を消すな。あとその手の()(鋼鉄)を仕舞え!


これではどちらが暗殺者なのか。

一瞬だけ視線を向けて彼女の殺気なき殺意を抑え込む。

不満げな空気が返ってくるが仮面は無視を決め込んだ。

一方でその僅かな間を続きを促す沈黙と受け取ったのか。

シンシアは止まらない。


「ええ、被害の責任や賠償。ご指摘ごもっとも。

 そこは私達も話し合ってどう行動すべきか考えなければなりません。

 しかしあなたが力を抑えていた本当の理由は私に視せないためでは?

 私の眼で視てしまえばその正体が露見すると恐れてっ!」


語気を強めた糾弾の口調。

緊張を孕んだ厳しい顔つき。

わざわざ光宿さぬ瞳を見開いて仮面を睨みつけるシンシア。

漏れ出たのか意図的に放出したのか濃密な理力がカレを威嚇する。

『銀翼』を前にしても落ち着いていた横顔に冷や汗さえ流しながら。


『……ふ、ははっ』


それらがもたらす緊張感を破ったのは仮面から漏れ出た失笑。

しかも分かりやすいほどに「思わず笑ってしまった」という声。

だってそれはあまりにも。


「な、なにがおかしいのです!?」


『いや、すまない。

 てっきり即座に襲い掛かって来るものと思っていたのでな。

 まさかそんな可愛らしい反応をしてくれるとは思わず……くくっ』


「は? か、かわいい? バカにしているのですか!?」


『まさか、言葉通りの意味だが……ふむ、疑われているな』


「当然です!

 正体不明の人物を易々と信じるほど私は子供ではありません!」


『信じてもらえないとはじつに悲しい。

 私は本気で可愛いと思っているというのに』


「う、嘘に決まってます!

 本気ならどうしてそんなに声が楽しそうなんですか!?」


『……ははっ、正体不明に、声が、か……なるほど、なるほど』


「な、なんですかその意味深な…」


『キミ─────私の魂が(・・・・)視えていない(・・・・・・)な?』


「うえぇっ!? な、なんでそれをっ!?!」


何故見抜かれたとただ一人愕然とするシンシアであったが、彼女以外こそが

「おいおい」「マジで?」「素直か!」「嘘だろ?」と愕然としているのに

気付かない。例外は沈黙するメイドと噴き出した仮面だけ。


『何故って……ふふっ。

 視えてるなら私の感情は分かるはずじゃないか、聖女さま?』


「……あぁっ!?!」


聖女の眼がナニを視抜けるのかはわりと知られていた。

大まかには『魂の正邪、その割合』『力の種類と位置』『相手の感情』の三つ。

であるならば、カレは誰よりも自身の本音を知るがゆえにこれまで見せた彼女の

反応の意味を理解できる。


的外れの咎めは真意が読めない暗示でしかない。

意図を読み間違えた疑問は感情が視えていない証である。

だからこその疑いから紡がれた仮面の─初歩的な─誘導尋問に引っ掛かった。

これを『可愛いらしい』と言わずになんという。

そう、本当にそこは本音であったのだ。

指摘されるまで気付かず吠えていた姿はさながら小動物の威嚇。

気付かされて顔が真っ赤になっている姿は愛らしいの一言。

そんな内心など視えない方が彼女の精神衛生上は良かったかもしれない。


『くくっ、本当に可愛らしい反応だ。なあ、メリル殿?』


そうだと分かっていて再度念押しする辺りがカレのろくでもなさだが。

私服のメイドが白い目をしているのを分かっていてこれである。


「ぁ……そ、そうでした…み、みなさん、の前でわたし……ゃぁぁ!!」


「私を出しにしないでほしいねぇ……あぁ、やだやだこのノリ」


可哀想にそこで周囲の顔ぶれを思い出し、より顔を赤くするシンシア。

横目でそれを呆れ顔で流すメリルだが、言葉に比べその声は柔らかい。

ただその奥には懐かしむ色もあって、戻らない過去を見ているかのよう。


「───とはいえ、だ」


だが一瞬でそれを引っ込めたのは経験値からだろう。

眼が通じないと抜けてる疑惑が出てきた聖女のカバーかもしれないが。


「この聖女さんが敵視した事実は立場上見逃せなくてね───何を視た?」


目線も顔もカレから離さず、武装()も出さず。

されど体はいつでも動かせる状態にしながらメリルは背後の彼女へ問いかける。

まだ羞恥の赤が収まらないシンシアは、だがそれを振り切るように僅かに震える

声を張り上げた。


「っっ、おぞましいまでの邪気です!

 それもっ、今まで視てきた数多の黒が霞んでしまうほどの濃さっ!

 邪教の残党達が振るうあの悪しき力が搾りかすに思えるほどの!

 あぁ、信じられない、そんなものを使ってどうしてそんな平然とっ!」


「邪神の信者どもより上位の邪気? いや待ってくれ。

 私だって教会騎士の端くれだ。気付かない訳が……」


『いや、メリル殿が判らなかったのは気配や影響力は打ち消して使ったからだ』


「は?」


視えているだけの彼女では正確な説明が難しいだろうと補足すれば、

慣れたステラ以外が信じられないモノでも見るような顔を向ける。

暗殺者を名乗るも守護者の側面を持つマスカレイドが邪悪な力を振るっていると

自ら認めたのだから。

尤もカレ自身は微塵も気にせず話を続けた。


『イメージとしては魔力をそのままではなく風魔法にでもした感じか。

 ……やはり外に出すとどう変換しても視抜けるわけだな』


「やけにあっさりと……いや、その言い方。

 マスカレイド、あんたそこを確認するためにわざとやったね?」


「え?」


クスリと微かながら皆に聞こえる笑い声を流し、仮面はさも得意げに語り出す。


『先程の彼女(キミ)の推測は半分ほど当たっていたよ。

 ただ理由は異なる……力を抑えていたのは仮面の隠蔽能力と聖女の眼。

 隠す力と視抜く力という反対の能力がぶつかった時にどちらが上回るのか。

 この際ついでに確かめておこうという考えもあったのさ』


「なっ!?」


一番の理由がこれ以上被害を出さないためなのは変わらないが、これまで

意図的に避けていた聖女一行と突発的に、異世界(ガレスト)で遭遇してしまった今後の

面倒さを考えればそれぐらいの情報のリターンが無ければやってられない、

という心情もあった。勿論つり合いは取れていないが足りない分は。


『結果をどうやって聞き出すかは悩んでいたが、とても素直で助かったよ。

 まさか態度で全部教えてくれるとは……いやぁ本当に可愛らしいお嬢さんだ』


「へ、え……で、ではここまでのは、全、部っ……~~~~っっ!?!」


いい反応をしてくれる娘を弄ぶことで補おう。

羞恥のぶり返しから薄くなっていた赤に巻き返された表情は実に美味であった。

先程の醜態以前に力を視せた所から相手の手の平の上であり、相手の思惑以上の

反応で答えを示してしまったと教えられた(・・・・・)のだ。加えてお嬢さん(こども)扱い。

失態の恥ずかしさと転がされた情けなさと侮られた怒りで耳まで真っ赤。

白き面の下で三日月が笑う。


「う、うぅっ……けど、ならっ、やっぱりバカにしてるじゃないですか!!」


もうっ、と地団太でも踏むようにしながら彼女は吠えた。

多分に正当性はありながらも子供の癇癪のような感情の爆発。

普通ならそれは負け犬の遠吠えか仮面が語る可愛らしさそのものでしかない。

だがここでは、彼女の場合は、明確な形となってその場を縛り付ける。


『おやおや』


銀色の光で構築された細長い四角柱が、ゆうに数十本。

理力による拘束の象徴が黒靄の人影を囲むように貫いていた。


「お、おいこら聖女! 気持ちはわかるがこの場はっ!」


「話に聞くその白き仮面! 叩き割ってその枠だけの魂、その正邪!

 細部まで検分してみせます! 覚悟しなさい!!」


高まる怒気。放たれる理力。叩きつけてくる戦意。

もはや一触即発という空気に、だからこそ悪癖が出るのがカレだった。


『ふむ、つまり……この仮面も、魂の色も、今は視えていないと』


「……あ」


『しかもこの拘束、ずいぶんとまあ広く囲ったものだ。

 肉体は枠のような形で視えていると聞くが……なるほど。

 当たった術と外れた術の位置で私の体格を把握しようと、賢いな』


「お前はお前でこれ以上挑発するな!!」


調停に来たんじゃないのかと言いたげなメリルの叫びは、しかしもう遅い。


「~~~っっ、またバカにしてぇっ!!!」

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます シンイチ絶好調ですね。とても楽しく読ませていただいてます
更新ありがとうございます。 マスカレイド、相変わらず多忙すぎる...って同情してたらこの男、まーた女の子で遊んでる...
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 まぁ、異世界に対する認識が足りてないし、それはどうにかしないとですね。 それはそれとして、どう収めるんやろ?
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