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第83話 進展

すいません。間が開きました。

色々とゴタゴタしており、右往左往しておりました。

少々間が開いたので前話までの流れのおさらいしときます。


⭐︎


 錬金術師ギルドを出た山水とサリーは鍛冶師ギルドに向かおうと人ごみの中、馬での移動していたところ、変装そしたエルアノーム一行と出会う。エルアノームはどうやら用事があるらしく、山水だけを連れ出かけた。

 向かうは【帰らずのパラダイス】がある森とは反対の方角。長閑な穀倉地帯の中にあった小さな森で先々代王である父と母が亡くなった場所であった。ここには毎年、姉であるエステリーナと命日に来ていたが今年は来れなかったので遅ればせながらと会いに来たのだと。

 そこで親が亡くなった経緯と心情を聞かされた、とここまでが前回までの話。


 話し終えると俯いてしまう。

 その姿を見てあの時のやり取りを思い出す。


 ◇



 あれは城の謁見室でタイマン勝負に負けた後、自室に戻る際にご機嫌なエステリーナから突然「ありがとう」と言われたときのことだ。


『実は今日まで心の片隅に「エルに憎まれているのでは?」という想いがあったんだ」


 える? あ、エルアノームの事か。


 その女王様と会うのは今回を含めて二度目。

 一度目はマカニーの手から奪い返した時で、あの時は衰弱しきっており表情から感情が読めなかった。さらにシルヴィアも身体の状態を調べるのを優先した為、感情や生い立ちまでは調べられなかった。


 そして二度目となる先程の謁見の場。

 下着姿を除けば年相応の普通の女にしか見えない。

 やり取りからは憎悪やら憎しみと言った感情は一切感じられなかった為、一切警戒はしていなかった。

 その緊張感のなさが災いし? シルヴィアとの繋がりが消失? していたようで再度チャンスを逃した。


 俺は(基本的に)他人の過去には興味がないし(俺から)聞こうとは思わない。

 そんな性格の俺を知り尽くしているシルヴィアも何のアドバイスもしていない。

 なので今は聞き役に徹する。


『……理由は?』


 見た感じではエステリーナがかなり気を使っているように見えた。

 何かしら心当たりがあるからそう思うのだろう。


『私が王位に着く前、剣と魔法の腕を磨くため城から出て修業の旅に出たんだ』

『良く許可が出たな?』


 第一王女であるエステリーナ。

 確かアラナート王国は男女にかかわらず第一子が王位を継ぐのが慣わし。なので第一王女であるエステリーナには幼少期から「王になる為の教育」が施されていた筈。

 許可が出たのは「それが済んだ後」だと思うが、常に身の危険が付きまとう危険なダンジョンに行かせる親もどうかと思う。


『父も母も寛容な方だった。私が「ダンジョンで修業をしたい」と言ったら条件付きで許可してくれた』

『条件とは?』

『一つ、決して無茶はしない。一つ、自国・パルミラル王国、そしてもう一か国以外には行かない。一つ、お供の当時国軍の副将軍だった男の指示には従うことの三つ』

『戦い方は誰に習った?』


 親の教育方針よりもそちらが気になった。

 今は騎士団長を務める程の腕前だが、初めから達人の域に達している者はいない。

 ましてや魔獣と人とでは戦い方が多少異なる。直感だけでは生き残れない。

 僅かな期間で達人の域まで育て上げた人物に興味が湧いた。


『副将軍に基礎を教えて貰い、その後は「とある御方」に稽古を付けていただいた』

『魔獣との戦い方も、そのとある御方に?』

『二人から教わった。お陰で強くなるという夢は叶った』

『成程。夢か』


 でそれが恨みにどう繋がる?


『私が我儘を言ったばかりにエルの時間を奪ってしまった』

『時間?』


 それを知ったのはエルアノームが自分に遷位(せんい)を迫った時。その時にやっと気付いたらしい。


『自由と引き換えにエルを縛ってしまった。自分の我儘のせいでエルの時間を奪ってしまった。さらに国王になった後も業務に追われて話も碌にしてあげられなかったのに私を気遣って』


 感謝と労いの言葉を受けた、と。


『だから先程は強く出なかったと?』


『ああ。エルにはすまないことをした。願いは可能な限り叶えてあげたい』


 言いたいことは理解した。ただ一般的には国王なら国の為にも保険は掛けておく。エステリーナ(第一王女)の行動如何に関わらず、時期がきたらエルアノーム(第二王女)にも教育を施していただろう。

 それは王族に産まれた者の定め。つまり早いか遅いかの違いでエステリーナが気に病むことでは無い。

 それは先程の「賭け」の結果からも明白ではないか?


 唯一、分からないのは「自分も混ぜろ」と言ってきたこと。

 この意図だけはその場では分からなかったが。



 ◇


 そして今、確信を持てたが姉に対しての悪感情はエルアノームの中には微塵も無い。唯一血のつながった家族である姉を心の底から大切に思っている。

 姉妹のお互いを思う気持ち、両親を含めた家族愛は本物である。


 ただエルアノームも姉と似た「危うい部分」を見つけた。『自分が我慢すれば』といった自己犠牲の精神。それは尊むべきものだが、言葉で伝わる場面では使い分けた方がいい。


 などと心の中で偉そうに講釈をタレてみたがそれは俺も同様。

 彼女らよりも格段にヘタレな俺にはどう慰めればいいのか思い浮かばない。

 こんな時こそ気の利いた言葉を言うべきなのだが…………良い言葉が思い浮かばない。

 シルヴィア先生も「良い機会だから自分で考えろ」と敢えて口出ししてこない。


 ……ええい、儘(まま)よ!


 覚悟を決め、先ずは行動に移す。

 正面から抱きしめる。すると存外に自然に口から言葉が出ていた。


「(ここまでよく頑張った)」

「…………」

「(家族が増えたんだ。今後は気楽に俺達を頼ってくれ)」


 エステリーナもそうだが二十歳(はたち)前の小娘が国を背負ってきたのだ。境遇を考えれば心細かったに違いない。


 言い終えるとエルアノームの身体が小刻みに震えだす。そして胸元から僅かに聞こえる嗚咽の声。


 泣いている? ど、どうしよう?


 泣くとは思っていなかった。なので動揺をしてしまうが、それを表に出すのはみっともない。

 ここは気持ちの整理がつくまで頭を撫でながら待つことにした。






「さあ次!」


 数分? 意外と早く気持ちの整理が済んだのか俺の胸から離れ明後日の方を向き元気な声で言い放つ。

 この切り替えの早さは姉とは違って心地よい。


 で次、とは?


「今日中に【ロッツァ市】の王墓に行くわよ!」


 俺の腕を引っぱり紅蓮が待つ場所へ。


「墓? 何をしに?」

「婚姻の報告」


 コチラを見ずに街がある方向である西を指差す。

 先程会話に上がったが西の山脈の麓にある王直轄の町の傍に、直系の王族とその配偶者の【魔魂石】が納められている墓があり、今日中に報告をしておきたいと。あと「お姉様の現状の報告」も一緒にしたいらしい。


「今から向かえば陽が落ちる前には着けると思うけど……」


 現在地はちょうど中間地点。

 ここまでそこそこ時間をかけて来たが、紅蓮の体力は保つのか? と聞かれる。


「アイツ、タフだから」


 多分大丈夫。

 カイエンのようなスピードや【荷馬の帝王】らのような力強さ(トルク)や持久力といった尖った能力はない。ないが全ての能力は高いし転機は利くし用心深いし根性は誰よりもある。


「単騎だし【速歩】なら倍の速度が出せる。どこかで水分の補給さえできれば、かなり早く着くと思う」

「補給ポイントならあるわよ」


 徒歩で街道を行き来する者達の為に「野営地」や「休息ポイント」が整備されており、そこには馬だけでなく人用のトイレや給排水設備も整っているのだと。


「まあ水なら持ってるし、空き地があれば簡易な宿泊所も造れる」

「それねマリアンヌ(副宰相)から聞いた。風呂まで作れるっておかしくない?」

「はは、確かに」


 馬車でパルミラル王国に行った時の話を聞いたのだろう。

 気楽な会話をしながら森の外へ。「途中でバテたら在庫の「ポーション」を飲まそう」等と雑談をしながら出口に着くと紅蓮の姿が見当たらない。

 何処に行ったのかと探そうとしたら小川の土手に茶色の物体が。


 ……おいおい、寛ぎすぎだろう。


 神経が図太いのか、それとも怖いもの知らずなのか。

 見通しの良い所といえ馬は草食動物なのだから周囲警戒のため伏せ、耳を動かしいつでも動けるような状態で休むものだが……今は体を横たえ爆睡していた。


「紅蓮」

「…………」


 無反応。耳すら動かさない。

 それより鞍を付けたまま寝てて平気なのかね?


「先に小休止しよう」


【収納】を使ったトイレを造りエルアノームを行かせてから紅蓮に向け軽く殺気を発する。

 すると1度だけ耳をピクリと動かした。


 ……マジで寝てやがった。


「行くぞ」

「…………」


 今度も無反応。


 気配を読む。すると初めて目が合った「あの瞬間」が思い浮かぶ。


 ……何故あの光景が? あの時と同じ感情なのか?


「……大丈夫なの?」


 いつの間にか、トイレから出来て来たエルアノームが呆れた眼差しで俺を見ている。


 ……お、もしや?


「エルが呼んでみて」


「……紅蓮、行くわよ」


 すると今度はのそりと起き上がる。


「…………」


 エルアノームが困惑顔で再度俺を見る。


「まあ……紅蓮、すまん」


 紅蓮に謝る。

 初めてザームと戦った後、(理由は分からないが)奴ではなく俺に付いてきた。この時点で長年付き従ってきたザームではなく俺を選んだ。

 なのに紅蓮(本人)の意向を確かめずに主を変えてしまった。

 コイツからしてみれば『便利な道具じゃねえんだぞ!』と文句の一つも言いたいところだろう。


 だが俺も考えなしに主を変えたわけではない。


「いいか紅蓮。お前の主をエルにした理由。言わなくても分かるよな?」


 あ(・)の(・)状(・)態(・)の(・)ザ(・)ー(・)ム(・)を見捨てずに付き従っていたんだ。忠誠心は高いし用心深いし状況判断も的確。

 だからこそエルアノームを乗せて欲しい。


 ……フン!


 頭部を大きく振りかぶってから俺の胸にぶつけてくる。左足を引き正面から受け止め「スマンスマン」と首を撫でてやる。


「じゃあ頼んだぞ」

「…………」


 ムスッと顔を背けてからエルアノームの前へ。足を畳み乗れと催促してきた。どうやら受け入れてくれたようだ。

 なので早速乗ろうとしたが、


「エル、ちょっと待て」

「?」


 忘れるところだった。

 鞍に弾力のあるマットを敷く。


「何故マットを?」

「速歩だと結構揺れる」


 常歩(なみあし)なら尻を鞍に乗せても然程揺れない。

 だが襲歩(しゅうほ)だと腰を浮かせ膝だけでなく全身で揺れを制御しないと振り落とされる。

 速歩はその中間。座れるが揺れが大きい。慣れていないと酔うし尻腰首にダメージが入る。


「そんなに揺れるの?」

「ああ」


 王が移動をするなら専用の箱馬車を使う。ただ王族なのだから乗馬の訓練くらいはしているだろう。

 実際、合流した際に馬に乗っていたんだし「一応乗れる・操れる程度」の技術は持っているが、一応程度では多分身体が持たない。


「あ、ありがと」


 赤面し罰が悪そうな表情でソッポを向いて礼を言ってきた。


「どういたしまして」

「私に……乗り熟せれるようになれるかな?」

「エルなら大丈夫。そうだ、今度リナに馬の扱い方を習うといい」


 いざという時の為にも。


「…………はぁ~~、分かったわよ」


 え? 何でため息つくの?




 小川の橋を渡り隣の領地へ。

 その小川は進んだ先で再び現れ街道に沿って流れていた。

 左右見栄えの変わらない風景の中を「速歩」で進む。

 途中で「休息エリア」で再度小休止を挟んでロッツァ市の街並みが見えてくる。


 正面の町の先には山脈。その麓に緩やかな傾斜に沿って家々が建ち並んでいた。


「ここの街壁も高いんだな」


 王都の街壁は20m以上はあったがここもそれに近い高さがある。


「王墓があるから?」

「墓だけだったら「住人」はいらないでしょ?」


 そう言われればそうだ。せいぜい数人の警備兵を置けばいい。


「ここはね採掘と加工、さらに研究を行う施設があるのよ」


 採掘? 研究?


「魔鉱石関連」


 なるほど。国の基幹事業がここにあると。


「とはいっても採掘は1日おき。今日はまだ掘ってるのかな?」


 今は夕暮れ時。王都と同じく魔道具による灯りで通りは明るいが、あちらと違って人影は疎ら。

 勝手なイメージだが、炭鉱の街なら仕事上がりで一杯呑みに行く時間帯の気がするが、それらしい者は一人もいない。

 エルアノームも細かいところは担当に任せているので知らないとのこと。


 で間も無く門に辿り着く。

 そこにいたのは門の先の内側にいる門兵のみ。通過する人影はなし。

 というかだいぶ日が傾いてきた。

 入ったら先ずは宿(寝床)の確保をしなければ。


「あーその心配はいらない。それより参拝を済ませちゃいましょう」


 と話しながら頭を下げる門兵を素通りして中へ。

 大き目の門を通り抜けた瞬間「透明なフワッとした何かの膜?」を突き抜けた感覚が。


「それ防壁」


 魔術による防壁が施されており「招かれざる者」は見えない防壁に触れると麻痺して動けなくなるらしい。


「選別基準は?」

「国家機密」


 何気なく聞いてみたらそっけなく返された。教えてはくれないらしい。


「外壁の内(・)側(・)に(・)沿(・)っ(・)て(・)張られているの。因みに覗き見対策も万全」


 魔法防壁の効果を高めるため、街壁見た目普通の灰色石壁にしてカモフラージュしているらしい。


「着いたわよ」

「案外質素なんだな」

「魔魂石しか置いてないもの」


 町の奥まった場所に高さ3m程の壁に囲まれた衛兵付きの門に着いた。


「これは陛下、本日はお忍びで?」


 扉の前には衛兵が二人、こちらに敬礼をしている。その二人のうち、年配の男が一歩前に出て出迎えてくれた。


「そう。父様と母様にご挨拶を」

「承知しました。おい」

「は!」


 若い男の衛兵に声を掛ける。その衛兵が重圧な木製の扉を開ける。


「この子を預かってて」


 とその場で下馬して紅蓮の手綱を手渡す。


「了解しました」


 紅蓮と衛兵は外で待つらしく扉の外へ。そしてそのまま扉は閉じられた。


「さあ、行くわよ」


 然程広くない敷地の中央には大理石で組まれた古代の墓といった神殿様式の建物が一つ。大きくも無く小さくもない窓も無く、同じ色の大理石の重圧な扉? が一つあるだけの質素な墓所。例えるなら……巨大な豆腐?

 その墓の扉へ向かう。


「ん? 取っ手が無いぞ?」


 取っ手がない。位置的に入口と思われる扉は一枚の大理石。その扉の中央、胸の高さの位置に長方形の黒い石板があるだけ。


「こうやって開けるの」


 その石板をてのひらで触れる。

 すると扉の中央に垂直の黒い線が一本浮かび上がる。その線はブーンとの低音と共に左右に太くなると30秒後には左右の壁に到達。大理石の扉は完全に無くなった。


「……幻影?」


 大理石が左右に動いた、のではなく中央から消えていったように見えたが。


「気にしない」


 そう言って俺と手を繋ぐと真っ暗な室内に進みゆく。

 そして俺が中に入り切った瞬間、扉が復活。外の明かりを遮断、室内が闇に戻った。

 だが直ぐに室内に明かりが灯る。


 中も外と同じく全面白色大理石。壁には魔道具による炎と同じ明かりととても質素な空間であった。

 そして十数メートル先は行き止まりとなっており小さく区切られた棚があった。そこへ足音を響かせながら向かう。


 棚の前まで来た。

 棚全体は約横4m×高さ3m程で、中央の棚以外は20cm×20cmの大きさで細かく区切られた小棚であり、その小棚の上段から中段にかけ【魔魂石】が三色のクッションの上に置かれてあった。


「左上から順に歴代の王とその配偶者を並べているの」


 青色のクッションは直系王族。家から出なかった子、つまり未婚でなくなった子も同色らしい。

 この青色はエステリーナやエルアノームが普段から来ている色と同色である。


 そして残りの二色も青色だが若干濃さが異なっている。

 正妻は一段明るい青色で、さらに薄い青色は側室とのこと。


「中央の【魔魂石】は?」


 二つ分の広さに直系の色と正妻の色のクッションが一つずつ。その上に【魔魂石】が置かれてある。


「これがお父様とお母様」


 瞬(・)き(・)せ(・)ず(・)に(・)二(・)つ(・)の(・)魔(・)魂(・)石(・)を(・)眺(・)め(・)て(・)い(・)る(・)。その状態で俺を見ずに教えてくれる。

 どうやら次(・)代(・)が(・)置(・)か(・)れ(・)る(・)ま(・)で(・)は夫婦揃って並べるのが仕来たりで、その時が来るまでは正妻・側室問わずにまとめて置かれるそうだ。


「纏めて、か。ってことは先々代は側室を」

「お母様、お一人」

「そうか」


 それ以上、聞くのを止める。なんか藪蛇になりそうだから。


「直系ってことはリナは?」

「侯爵家を興したからここには入れない」


 自分の家の墓を新たに造らなければならない。


「……俺は?」


 どうなるんだ?


「貴方は魔力が無いから多分……身体は残るだろうけど魔魂石にはならない」


 だろうな。


「なら俺が死んだ場合は「火葬」にしてくれ」

「かそう?」


 説明をする。


「骨だけ残すの?」


 日本では火葬か土葬だった。たまに放置されいる者もいたが。


「残った骨の一部を魔魂石と同じ大きさに切り分け、ここと侯爵家と俺の家にそれぞれ置く」


 気休めだがそれでそれぞれが淋しい思いをしなくて済む。


「どこの骨を使うかはみんなで話し合ってくれ。あと不要な部分はすり潰し、畑か海にでも撒いてくれ。埋葬しなくていい」


「……いいの? それで?」


 上目遣いに聞いてくる。


「その方がより長く、皆と一緒に居れるだろう?」


 骨も俺が生きた証に違いない。


「……うん」


 ……え?


 瞳から一筋の涙が零れた。


「ど、どうしたんだ⁈ 何で泣くんだ⁇」


「ううん、何でもない」


 涙を拭いながらも笑顔を見せる。

 その時、どうやら条(・)件(・)を(・)満(・)た(・)し(・)た(・)らしく……エルアノームの気(・)配(・)が(・)ハ(・)ッ(・)キ(・)リ(・)と(・)認(・)識(・)できるように。


 ……偶然の産物?


<満点とは言えませんが、間(・)違(・)え(・)ず(・)に(・)言(・)え(・)ま(・)し(・)た(・)ね>

<……どういたしまして。で?>


 何がどうして条件を満たしたんだ?


<その辺りはご自分で想像してみてください。お優しい貴方様なら正解に辿り着けるかと>

<……リ(・)ナ(・)を(・)思(・)っ(・)て(・)の(・)事(・)か(・)?>

<表(・)向(・)き(・)は(・)>

<? 違うのか>

<ふふふ>

<…………>


 この世界では死んだ後は魂は天に召され、皆の魂と一つになると思われている。

 ただし生きた証として【魔魂石】が残ってしまうので、遺族はその証を故人と思って大切に保管するのだが、大抵は家族単位で一か所に纏めておくらしい。

 その風習に従った場合、俺が死んだ場合は自分の家である「大公家」に入るのが筋で侯(・)爵(・)家(・)や(・)王(・)家(・)の(・)墓(・)に(・)は(・)入(・)れ(・)な(・)い(・)。俺に爵位を与えた段階で共に保管されることは無くなったのだ。


 その辺りをエステリーナは気にしていない、いやエルアノームの様子から今は気付いていないと断言できる。

 だがいずれはその辺りに気付くだろう。エステリーナならその時は何も言わずに我慢する。

 姉想いのエルアノームにはそんな光景が見えていたのだろう。


<……だから俺を婿に迎えたんだろ?>


 同じ境遇なのだと慰められると。


<どうでしょうかね?>


 今日はやたらとはぐらかすな~、考え過ぎか?


 でも今(・)の(・)エ(・)ル(・)ア(・)ノ(・)ー(・)ム(・)の(・)様(・)子(・)からしたら……


<シルヴィアさんや。実際は魂ってどうなるんだ?>


 魂と呼ばれているモノの正体。


<それについては主神様にお聞きください>


 もう会うことも無かろうと言っていたが、そんあ機会はあるのだろうか?

 というか魂の存在は否定しないのね。この調子じゃパイモンに聞いても無駄だろう。

 まあ全ての世界は主神が拵えた。だからと言って全てが同じとは限らない。この世界にはこの世界のルールがあるのかもしれないし。


 ……想像するだけ無駄か。


 俺がどうこう出来るものでもない。


<そんなことより今はエルアノームさんに声をかけ、仲を深めて下さい>


 はいごめんなさい。

 ん? 仲を深める?


「どうしたの? 黙り込んで」

「決めた」

「?」


 先ずはスキンシップから始めようと抱き抱えてみた。


「な、なによいきなり??」

「ん? エルにはまだしてなかったなーて」

「‼︎ だ、だから……ってここで──⁈」


 エルアノームも思い出したらしい。自分が『お姫様抱っこされたい!』と叫んでいた場面を。


「いいだろ? 報告は済んだんだし遠慮は要らないだろ? 誰も見ていないし」


 覗き見対策はバッチリと言ってたしな。


「見てるわよ! お父様達が!」


 指摘され両親の魔魂石に目を向ける。


「……なら丁度いい」


 身体を魔魂石に向けてから、これでもかと密着してみせる。


「エルは俺が貰うぞ」


 両親に向け宣言する。


「う────」


 真っ赤になって俯いてしまったが抵抗はしなかった。


 並んで置かれている両親の魔魂石を眺めていたから「もしかしたらあの時の発言はエステリーナの為だけでなく自分の願望も混じっていたのでは?」と思い試してみたが……正解だったようだ。


 可愛いらしい面もあるじゃないかと思いつつ門の手前まで、シルヴィアの満足げな気配を感じながらその状態で移動した。


*過去・・現在にも影響が及んでいる過去の事象は別。例えとしてはエステリーナの身体への呪い(手遅れ)とエルアノームへの呪い(まだ間に合う/現在進行中)の違い。


*小休止・・言葉通りの小休止。以前、エステリーナと二人でキャンプ(野営)をした際に造った物を用意した(使用後は撤去)


*休息エリア・・現代の日本でいえば自販機とトイレだけの高速PA。井戸(手押しポンプ)とトイレ、馬用の飲み水台(井戸から汲んで入れる丸太をくり抜いた構造物)



 残るはルーシア。彼女と気持ちが打ち解けるのは領地開発編のあとのダンジョン編にて。

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