表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/64

第64話 主神の思惑

 以後、二章終了まで山水君の視点で進めます。その都合上、彼の預かり知らぬ場で起きたことは説明しません(特にシーラ)

 ただそれでは「ご都合主義じゃん」といった批判が起きそうなので前話までに「何をするのか、何が目的なのか」といった「ヒント」は載せておきました(例えばサリーが転移できる理由もそう)


後半は会話だらけです。

「ちょ! ……チッ」


 一瞬で切り替わる風景。

 そして俺が現れたことにより、ダンジョンの前で待機している多数のエルフの驚く表情が目に入るが今は構っている暇は無い。


 ……雷明に乗っ取られてたんじゃなかったのか?


 ルーシアはザームが死ねばシーラも道連れと言っていた。それを回避し尚且つ奴の息の根を止めるためにルーナとのパイプ? を断ち切ると思っていたのだが。


 ……奴は死んでいない。


 召喚されていない、つまり勝敗は決していない。主神が嘘をついていなければ。……いや信じると決めたんだ、疑うのはやめよう。


 ……もう一度、ザームを調べればハッキリする。だが、


<これで時間が稼げる>


 俺がルーナに繋がっていた「有線」を切断したことによりカウントダウンが始まった。

 そのカウントを止めるために【収納】に入れたのに出したら時間が進む。


 猶予がどれだけ残されているか分からない状況では安易に出せない。

 下手をすれば出した途端に息を引き取るかも。そうなればシーラも道連れとなり望まぬ結果になりかねない。


 それを防ぐにはカウントがゼロになる前にシーラが「何か」を成す。すると二人は助かる。


 因みに怪我程度ならシルヴィアが損傷部の組織を()()()くれるが、あくまでも直せるのは物だけで目に見えない類、例えば呪術等は対象外。


 ……では奴はどこだ?


 靄を断ちきった直後、奴の気配は消えた。てっきり死んだと思ったがどうやら生きているようだ。


 ……繋がっていたルーナが怪しい。


<救ってくれる>


 そういえばシーラは回復系魔法は使えないと言っていた。

 どうやって救うんだ?


<上手くいけば>


 回復系魔法が手に入る?

 だがどうやって?

 魔法をコピー、又は使い手を倒して手に入る?


 出来るならとっくにやっている。

 大体()()()()()()()()()()()()()()


 ってことは魔族から入手する? 『我を打ち負かしたら授けよう』とか?

 そもそも勝てないから助っ人を頼んだんだろうに、他力本願で手に入るとは思えない。


 ならば魔族からではなく()()()()()()()()()()手に入れる、又は授かる。


 ……ん? そういえば。


 エルアノームはモノを揃えるだけで済んだがエステリーナは……今では分からない。


 他のヤツらは?

 エルフ、というよりパルミラル王国関連の被害者らは?

 呪術のスペシャリストであるセシリアがいるのに未だに解呪されていないのはなぜなのか?

 揃えるのが困難を極めるモノばかりなので未だに?


 ……いやモノとは限らない。


 シーラとザームの件はもうすぐ解決する? らしい。

 話せないヤーム夫妻は他の制限はないようなので除外。

 残りはサリー。


 そういえば最近簡単な解呪の条件を聞いたな。

 だからルーナを討伐すれば解決する?


 ……いや待て。何で悪魔ではなくルーナなんだ?


 呪いをかけたのが悪魔ならば悪魔を討伐するのが筋。


<トラップ>


 エルアノームの時もそうだったが、トラップというものは嫌がらせというより「多くの絶望を与える」のが目的。なので見破られるのを前提としている。


 悪魔ではなくルーナの死により発動する呪い。

 エルアノームのように正しい手順を踏まないと解呪に至らないような?


 まさかルーナがエルフに呪術をかけた?

 またはルーナを媒体にして行使した?

 まさか……ザームではなくルーナを乗っ取った?


 可能なのか?

 いやアイツには魔族がついている。

 つまり奴の魂はルーナの中にいる。


 ただどんな呪いであったとしても(言い方は悪いが)俺へのダメージは(ミランダやエステリーナに比べたら)少ない。


 ではサリーを媒介とした他者に類が及ぶ呪いとか?

 それなら対象者に直接掛けた方がリスクが少ないような。


 どちらにしてもルーナを消すのが条件。

 そして精霊を消せるのはこの世界では俺だけ。


 そもそも未来を見通せる能力があるルーナに()()()()()()()この状況は回避できた筈。

 それをせずに自分を慕ってくれる者に害が及ぶまで、気まぐれと思える程度の忠告をするだけだった。


 やはりルーナ自身に何か起きた。

 民からは神と崇められるルーナだが実際には力がある精霊でしかないルーナはより「上位の存在」からの干渉には抗えない。


 ……堕ちたとはいえ、主神が生み出した天使。


 成程。(おぼろ)げだが見えてきた。そしてヤームが言ったことも。


<どちらの思惑に乗るか>


 雷明が吐いた言葉を讒言(ざんげん)と思うと、奴の思惑が見えてくる。


 ……雷明が気付いたのは主神の思惑。その思惑は奴にとって受け入れがたい内容だったに違いない。だからこそ主神の想い通りにいかないように俺に佞言を吐いた。


 この時点でハッキリしたのは雷明が思い描く結末と、パートナーである悪魔が考えているストーリの一部が「一致」している点。

 奴は先程「悪魔を問い詰めた」と言っていたがこれは本当の事だろう。

 つまり両者の間には異なる思惑が存在していることになる。


 主神の忠実な(しもべ)でもある悪魔(天使)(あるじ)の意に背く行動をとれるだろうか?


 答えは天使と同格と言えるシルヴィアを見れば分かるだろう。つまり主神を欺くような行為は出来ない。

 つまり悪魔の思惑と主神の思惑とが一致している。


 そこがどうしても理解できない。

 そんな矛盾を無視して先に進まなければならないが、俺には乗り越えなければならない壁がある。


<シルヴィアの友を斬れるのか?>


 いざ斬ろうとしたその時に、また「シルヴィアに止められる」かもしれない。


 ……斬れる、いや斬る。ただ、



 何故今回に限ってこんなにややこしい事態になってるんだ?



 少なくとも俺やシルヴィアの意向ではない。



「山水様、ですよね?」


 名を呼ばれ思慮から現実に戻れた。

 正面には俺よりも若く見えるエルフの女がコップ? を手に立っていた。


「ああ」


「おつかれでしょう?」


 両手で持ったコップを差し出してくる。


「ありがとう。んこれは?」

「『旦那様が来られたらお出しするように』と姫様が置いていかれたものです」


 馬車で飲んだ桃のジュース。


「そうか。馳走になる」


 冷えた液体が喉を潤す。


 ……冷静になろう。


 再度礼を述べグラスを返してから目を閉じ全方位を探る。

 ダンジョンの中は変わらず見通せず。

 それ以外は……大使館で眠る親子の気配は平穏そのもの。


 ……もう少し範囲を広げて。


 パルミラル王国内に不穏な気配なし。

 ここでさらに範囲を広げ……


 戦場である関所が範囲に入る。その関所は……遠過ぎるのと混戦状態らしく個別どころか敵味方の識別すら困難な状況になっていた。


 だだ兵の配置からアラナート王国が戦いを有利に進めているように見えた。

 これ以上は精度が落ちる。不確実な情報は判断の邪魔になるので打ち切る。


 ……やはり奴はダンジョンの中。どんなカラクリなのか。


 もう少し情報が欲しい。特にダンジョンの中の情報。


 ダンジョンの入り口となる開け放たれた門に近づき、もう一歩進めばダンジョンという所で止まる。

 そこで手を伸ばし「規制」の有無を確かめてみる。


「無理か」


 透明な何かが行手を阻む。


「……斬るか?」


 今の俺なら斬れる、そんな気がするが……


「だが斬ってどうする?」


 ヤースはシーラが事を成すため待つようにと言っていた。

 それに魔族討伐はエステリーナの仕事。横取りするような真似はしたくない。


 ……未だに流されている。


 他人の思惑に。


 ……そもそも何故この世界なんだ?


 雷明曰く、この世界に決めたのは悪魔とのこと。その悪魔は最後のステージとして、パートナーである雷明に無断でこの世界を選んだ。


 ……仮に主神と繋がっているのなら俺達の望みも知っている。


【報酬】を得た後、地上世界で静かに暮らすことを望んでいることを。



 ……もしや主神がこの世界に決めた?



 何のために?

 飛躍しすぎた考えだろうか?




<ぶ、ぶ──。それがあながち間違いでもないんだな>




 突然、聞き覚えの無い若そうな女の声が脳内に響く。


 ──だ、誰だ⁈


<僕? 僕はどこにでもいるちょっとだけ可愛らしい女の子。ってゆーかおじさんと同じ日本人だよ>


 ──同じ?


<うん。名前は『平賀みかん』で一応十七歳のピチピチのJK>


 みかん? 何処かで聞き覚えが……たしか勇者の一員で「あの本」の著者だったような?


<苗字が平賀で名が……ってこのやり取りは不要か。で本? あ──あの日記か! って君、読んだの? いや待ちんしゃい! 今どこにあるのだ?>


 ──どこ? どこって隣の王国の宝物庫にあるそうだが?


<……宝物庫?>


 ──見たことはないが、複製なら俺も持ってるぞ。


<ふ、複製? お……おーまいごっと! あんな奴に預けるんじゃなかった!>


 預けた? なんか聞いていた話と微妙なズレが。


<だってJKの日記だよ? めっちゃ恥ずかしいじゃん!>


 先程から言っている「JK」って?


<ま、しゃーない。()()()()()()()()()()全回収ってことで。で日本刀持ってるおじさんはお侍さんだよね?>


 ──そうだ。


<おじさんはいつの時代の人? 元号は覚えてる?>


 ──永禄(永禄)だが。


<ってことは五百年近く前? これはマジモンの侍ちゃいまっか?! 今度サインちてちょ!>


 サイン?


<で与太話はこれくらいにして、おじさんが考えていたことはほぼ正解。あの方はおじさんにある事をして欲しいがためにこんな手の込んだことをしたんだな>


 こんな手の込んだ? それはどこからどこまでを指している?


 ──俺に?


<そう。実際に仕組んだのは大精霊ちゃんだけどね>


 ──ルーナが?


<うん。僕にも要因の一端があるから全容を教えてあげても良いんだけど>


 ──何故今まで、いやあのタイミングで?


<何故って? おじさんがわるいんだよ?>


 ──俺?


<僕は元とはいえ勇者の一員。皆から託されたこの世界が亡ぶのを黙って見過ごせるワケないじゃん! お陰で「結婚式を引っ掻き回そうイベント」がポシャったよ>


 ──……もう一つ聞きたい。


<生きてるよ、動けないけど>


 ──生きている? 不老不死? いや封印でもされているのか?




<それがおじさんを遣わした最大の理由>


 ──主神?


<うん>




 やっと繋がったか。


 ──……優先順位は?


<もうすぐ期限切れ。って言っておじさんの諸々の悩みを解決するくらいの時間的余裕はある。でもね、あんまりのんびりしてたら手遅れになる。それまでには()()()ちょんまげ>


 ──どこにいるんだ?


<えーと【不死の楽園】と呼ばれたダンジョンの()()二十階だにゃ>


 地下? ってことは【帰らずのパラダイス】だよな? それよりも、


 ──二十階? そこまで一人で行ったのか?


勇者パーティー(スーパー戦隊)なら楽勝だったけど解散ちゃったし。僕一人だから失敗しちまったよ。でもおじさんならハーレムメンバーとパーティ―組めば辿り着けるにゃ>


 ──それほど手強いのか?


<うん、単独できたら死ぬからそのつもりで。それと来てくれたらとっておきの報酬を授けよう!>


 ──どんな?


<僕♡>


「…………」


<僕、結婚するなら同じ日本人とって思ってたんだ。……おじさん何故に黙る? もしかしておじさんと呼んでるから? ならお兄さんにする? それともお兄ちゃん? 『みかんをお嫁さんにしてね♡」……うわ──お巡りさんに見つかったらおじさんタイホされちゃうかも!>


 はあ──、主神の意向とはいえ行くのやめようかな。


<中世の人は相変わらずノリが悪いね。なら報酬の前払いでその気を起こさせようかね!>


 ──報酬?



<情報だね。これは君らの戦いとは直接は関係ない話なんだけど>



 ──何だ?


<お兄さんの行動、この世界に来た時から「監視」というかストーカーされてるぞっと。しかも二人から>


 ──俺を誰が? 内一人はお前か?


<僕を入れたら三人になるか。後の二人だけどごめん、今の状況での特定は無理にゃ>


 ──神では?


<魔力の質は人族ってところは分かるけど「かなり遠く」に術者がいるらしくて特定までには至らないんだなこれが>


 誰だ一体? 何の為に監視している?


<北方から覗いている奴は凡そは想像つくけど……知りたい?>


 ──ああ。


<では迎えに来てにゃ!>


 ──引き換えか。


<うん! てなワケで暇つぶしの時間は終了! エルフの姫の作業も佳境に入ったし、そろそろ【加護】が消滅するから突撃準備>


 ──お前は中が見えるのか?


<お前じゃなくてみ・か・ん。一応、勇者だからね、それくらはい容易いぜ♪ んじゃ待ってるから!>


 声が途切れたと同時に不可視な壁が消え去った。



 これで主要キャラは揃った。後は答え合わせのみ。

(公言した30万字。収まるかな?)


 次話から【報酬】を得るまで一気に進めます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ