9 plateau#1 ~停滞前線~
いや、勉強に集中しようと思ったんです……。
でも、先日まで、やっていた菅田将暉さんのラジオの最終回の影響で書いちゃいました。
ついつい、テンションあが上がり、殴り書きならぬ殴り打ちをしてしまってるので、例のごとく伝わりヅラいところや誤字脱字があるかもしれませんが、ちょくちょく修正していきます。
今回は一章のsweet&sourのエピローグ。二章のsweet&saltyのプロローグ的位置づけです。
……なのに、2話構成にしてしまった……。
8 桜の季節までの千里香さんの視点の流れを描いております。
よろしければ、お願いいたします。
9-1 君徒花
午後0時前、いや、午後0時なんて言わないか……駅の北口のバスターミナル。
桜はすっかり散ってしまった。4月29日。昭和の日。
私は、もう少しで来るバスに乗って……また、徐々に元通りの世界に戻る……のか……?
あまり、乗る気ではない……一度離れてしまったから……はっきり言って、恐い……
でも、私は弱い人間なんて……他人からみられたくない。
今日のコーデは桜を意識した。
あと、セイカくんがくれた星のネックレス。人から見て、お洒落なコーデだと思われるだろう。自信があるように……見られる様に……
もし、時間を巻き戻せるなら、どこからやり直したいだろうか……いや、やり直したところで結局は同じ結果だったと思う。
嫌な事を我慢してまでも、自分を犠牲にしたくはない。
ただ、今回は……今回は兄貴に頼まれたから……でも、今の私に何ができるんだ……
というか、あのシスコン……ホント、私の場所をよく見つけだせたよな。
奴は私に……戻って欲しいらしいが……
今日の商談兼仮オーディションでブランドのイメージモデルとして、後々祭り上げられる……面倒くさい……
あぁ、この町とも離れるのか……良い町だった。人も温かいし。施設も揃ってるし、仕事先でも……まぁ、楽しく……
あぁ、彼はどう思うだろうか……誰に対しても優しく、誠実にまじめな……あの子には伝えたかった……
だが……会わない方がいい。彼の泣き顔など見たくはない。いつも、いつも笑っていて欲しいな……
そういえば……どこかで、だれかが言っていた気がする……
『桜が去ると、君は遠くの町に行くのかい……桜のように舞い散るならば、美しいが……やるせない』
だから、手紙をしたためて残してしまったんだろうな……
きっと、永遠なんて本当に無いのだから……
少年と久々に会った、11月終わり……あの日の仕事終わり……兄貴がやってきた。
「見つけたぞ、千里香 」
私は振り返り、息を飲んだ……スーツ姿の183cmくらいある、オールバックにした、明らかにブランドの小物を着けた男。
「えっ、なんで此処だってわかったの……」
「俺を嘗めるな。お前の兄だぞ。全力を出せば直ぐ様見つけ出すことも可能だった。が、しかし、あんな事があったからなぁ……とりあえず、お前にも休養期間が必要だろう。だから、泳がせておいたんだ 」
本当に何時まで経っても、烏滸がましい奴だ。
「んで、今日はどういう案件なの?」
「そろそろ、こんな所で働くのも飽きただろ。というか、お前には接客業など向かんだろうし 」
「いや、私、店長代理やってますけど!」
「どうせ、父さんのコネだろ……というか、店長代理という、あやふやな立場で何を言ってるんだ。どうせ、責任等を負いたくないんだろう 」
「いや……」
何も言えない……
「お前はやはり、華やかな世界な方が似合っているんだよ。地道にコツコツと働いて、誰かのために働くとかは向かない。どうせ、回りの人に合わせられなくて浮いているんだろ 」
「そんなことない! 私は慕われているし、今日も一人のお客さんの為に……力になる努力をした!」
「ふっ、一人のお客さんのためにか……」
兄貴は真剣な私の顔に、急に吹き出し笑う。
「笑えるな。昔は自分のために努力していたら、人が勝手に寄ってきてた人間が、今は他人のためにか……」
本当にこの顔を見てたら腹が立つ……
「あぁ、勘違いしないでくれ、献身的に尽くすお前は素晴らしいと思うが、やっぱり、どんな性格であろうと表の世界で活躍するお前の方が世間的にも価値があるんだよ 」
私は今、自分のやってる事を馬鹿にされてる様な、踏みにじられてる様なそんな気がした。私は怒りを抑えるように鼻から息を抜き、短く息を吸ってから兄貴を見た。
「あっ、気に障ったんならスマンスマン。あぁ、睨むなよ。俺は、お前の将来を真剣に考えているんだよ。だから、ご迷惑お掛けした方々には詫びは入れたし、ある程度のお前の今後の道筋はつけてあるんだ。父さんもその方が喜ぶぞ 」
うっ、父さんを出されると……本当に、このシスコン嫌いだわ。
私が少し狼狽えると兄貴はニヤッと笑い、私の肩を軽く叩き……そしてその日は帰っていった。
そして、それから、一週間に一回……誰もいない時に店に顔を出し……毎度毎度、ムカつくような説得とそれと少しの希望的な言葉や甘い事を言ってくる。
ストーカーとDVの夫を混ぜた様なやり方で……まぁ、少し酷く言い過ぎだが……
それでも、私は……少しずつ、少しずつ……わからなくなってきた……もしかしたら、これが洗脳という奴なのか……
毎日考える……私は本当にこの仕事が合っているのだろうか……本当に兄貴の言う通りにした方がいいんじゃないのか……
最近、真夜中……眠れない……頭の中が冴えたり曇ったり、同じ考えをぐるぐると行ったり来たりして……
たしかに好きだった……前にやっていた事柄。たまにフラッシュバックのように甦る。
でも、昔みたいに……もう……ストイックにはなれない。
あぁ……もう、一年以上になってしまうのか……忘れるならば……忘れたい。
でも、忘れる事などできなかった。これが未練というものなのか……
そんな夜が続いた。
でも……それでも私の救いは、少年や周りの人たちだ。彼らは私の過去を知らない。知らなくて自然と受け入れてくれている。
そして、セイカくんの事があって以来、兄貴は来なかった。
そして、あの日……三月の月末……少年が帰った後……奴は久々にやってきた……
「千里香……」
「何……また来たの……」
「この度……芹沢星海さんの件はお悔やみを申し上げる 」
「何よ。気持ち悪い……セイカくんの件は……」
「いや、お前が本当に人のためにやってるのを見て……感動したんだよ 」
「兄さんらしくないね 」
「うん、まぁ、俺からしたら……意外過ぎたんだよ。今のお前なら……より、元の業界に戻りたいんじゃないのか……」
「えっ、なによ……よりって……それと……だから、毎回言ってるでしょ。私はもう……関係ないんだよ 」
「いや、嘘だ。お前を見てたらわかる。努力はしてないというが、じゃ、なんでスタイルをキープできているんだ 」
「はぁっ、別に私は保ちたくて保ってるわけじゃないんだけど 」
「体に染み付いているんだよ。そして、無意識に戻りたいと……それと、お前は人として前より丸くなった。成長して……色んな人と合わせたり関われる様になっている。そして、星海さんの件で……いい意味でも悪い意味でも人と直接関わる辛さを知っただろ 」
兄貴がセイカくんの名前を気安く、引き合いに出したのが癇に障った……
「辛さ何かじゃない! あの子はただ、あの子自身の事を覚えていて欲しかったんだ!! 知ったように、軽口叩かないで!!」
兄貴はその事に関して、悪いと思ったようで黙った。だが、言い足りない模様で息を漏らした。
「とにかく……何も考えず戻ってこい。心配事は俺が全部取り除く。お前は本当は色んな人々に評価されるべき人間なんだ 」
「そんなの……兄さんの妄想よ……」
兄貴は私の怖じ気づいた感じに、ムッとして言い返してきた。
「千里香! 何でだ! 何でわからない!」
「私はもう、戻る気なんてないの。もう……終わったことなんだよ 」
「いや、俺はぜったい諦めない! 絶対にお前を口説き落とす!」
さっきまでのヒートアップしてたのが少し『口説き落とす』というワードで少し白けた。
「何よ。口説き落とすって……馬鹿じゃないの……」
「言っただろ。俺はお前の道筋を作ったって……まずは日本で……とある海外老舗ブランドのイメージモデルとして契約してもらう。その事に関しては父さんにも許可は得ている。一応オーディション形式だが、向こう方もお前の事を起用したがっている。Win-Winじゃないか 」
「なんなの、それ……私は許可してない……」
私は勝手に物事を決めつけてる、目の前の男に恐怖すら覚えて軽く目眩がしそうだった。
「その後、別の案件で先方に……そう、各所回らなければならないんだ。だから、お前には海外に来て貰う!!」
このままじゃ、コイツの操り人形になってしまう……
「だから、もう!勝手に決めないで!!」
ふと、冷たい風が肌に感じた。どうやら玄関の自動ドアが開けっ放しだということに、気がついた。
私は一度話題をそらすために
「待って! 店のドアが空いてるかもしれないから、この話しは閉めてからする……まぁ、私の気持ちは変わらないけど……」
と言い、ドアを閉めに行った。
ドアを閉めにいくと誰かが急いで去っていく足音が聞こえたが、別に関係ない人だろう。
そして、多少の覚悟をして戻ると、兄貴は資料らしきものを広げていた。いくつか……私の過去の写真だ。
兄貴は似合ない微笑みを浮かべる。
「見ろ。この時のお前はすごく輝いている。」
写真を見ていると、懐かしさを感じた。
「この時のお前はまだ、役者として、まもなかったなぁ。下手だったが他の役者より注目を集めていた。それと、これはあまり有名では無いブランドだったが専属のモデルとして最初の一歩を踏み出した時だ。俺は家族兄弟として……また、一人のお前のファンとして支えたいと思ったんだ 」
「兄さん……」
「だから、お前が上を目指したあの時から、全力でサポートをすると決めたんだ 」
兄さんは真剣な目つきで私に訴えかけた。
「なぁ、千里香……お前はたしかに今は、目の前の数少ない人たちを幸せにする事ができている。だが、お前がその気になれば……まだ、知らない……見知らぬ多くの人たちに夢や希望を与える事ができるんだ。まるで魔法の様に……それは一握りの人間にしかできない事だ。だから……」
兄貴は今の私に力強い言葉を投げ掛け、それから頷き鼻から息を吸う。
「戻ってこい。千里香 」
私は親族ながら、大切なファンの言葉で私の心は少し揺れてしまったようだ……
「少し、考えさせて……」
「今度……さっき言っていたブランドの会食パーティーがある。それに、とりあえず顔を出さないか? 先方もお前の履歴と我々の事に興味を持ってくれている……」
そして、その日はそれで終わった。
私は……どうしたいのだろう……
夜が手を伸ばしそっと引っ張っている。それでも私は目を閉じて逃げる。息苦しい大海原から小さな池に移り変わり……泳ぐように……だが、私は今、どこを泳いでいるのだろう……
一応、前半はこんな感じでした。
次、後半はまた近いうちに投稿しようと思います。




