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古着屋の小野寺さん  作者: 鎚谷ひろみ
sweet&sour
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13/52

8 桜の季節過ぎたら#3

今回で、いわば第1章が終ります。



一応、1章のフィナーレらしい終わり方だと思います。

是非是非読んで頂けたらうれしいです。


今回も長いのでゆっくり楽しんで頂けたら幸いです。




8-3 はじまりのうた






えっ、今、これ……どういう状況!!


えっ、目の前に少し動揺してる千里香さん……


周りの人に囲まれて、響きわたる拍手………


パトカーのサイレンまで響き渡る……


お巡りさんが近づいてくる……


時間は午後0時。


えっ、何、これ?!


何で……こんな事に……僕はただ……






桜はすっかり散ってしまった(というか、サクラだけ『散る』というイメージが強いから……綺麗だと思うけど、そこまで好きにはなれない)



そんな、今日の朝イチ……昭和の日……


前日にある程度、今日のための服を用意した。


前回買った、WEEKENDの花柄のシャツ。ヌーディージーンズのインディゴのデニム。セイカちゃんから貰ったヒトデのネックレス。



うん、我ながら……とても春らしいコーデだ!! でも、少し可愛すぎるか……

これで大きめのサングラスをかけた日には……『プロフェッショナルに密着する番組』の主題歌の人みたいだ……


まぁ、よし、後はニュートレジャーアイランドが10時オープンだからそれに間に合うように用意して行くだけだ!

待ってろよ!G-SHOCK!!



そんなワクワクしてた、朝7時前……



突如、LINE電話がかかってきた。見てみるとバイト先の店長からで、『まさか……』と思いながら出てみた。


「あっ、おはようございます」

「おっ! おはよう!!」

「えっと……どうされたんですか?」

「実はな……今日のシフトで欠勤が出ちゃってな……悪いが……佐藤! 出てくんないか!?」

「えぇ、でも……」

「頼む!! 他が捕まんないんだ!! 頼れるのはおまえだけなんだ~!!」

「えぇ…………」


僕は一瞬悩んだ……いつもお世話になってるし……バイト入ってから、良くしてもらってるしなぁ……


G-SHOCK……うーん……


だが、この瞬間上司を待たせてる事に申し訳ないと思ったのと持ち前のお人好しが出てしまった……


「わかりました! 出ます!! でも、8時~11時までお願いします。」

「おぉ! ありがとう!! 無理言ってスマンな!!」


ガチャ!!


そんかこんなで押しきられてしまい……出ると言ってしまった……

まぁ、次……僕に困った時があったら、その時は何かしらお願いしよう……


あぁ……愛しのG-SHOCK……



優柔不断な僕はとりあえずバイトに行くことになってしまった。ふと、外に出ると微かに肌寒い……


うーん、とりあえず前に買った、コムサメンのトレンチでも羽織ろう。

あと、やっぱり軽くて歩きやすい、カルフのスニーカー履いていこう~



僕のとりあえず、バイト先に今持てる最高のお洒落な装いで、家を出た。




バイト先に着いくと店長が僕に近づき、笑顔で軽くお辞儀をした。

「今日は、申し訳ない! 無理言って!!」

「いえ!大丈夫です!気にしないでください!」



この笑顔を見てしまうとついつい許してしまう……いい年した昭和のおじさんって感じだがホントいい笑顔、いい人なんだよなぁ……

毎回上手いこと丸め込まれてるような……まぁ、いっか!!


というか、この人……人たらしなのでは……そう思いながら急いで着替えてバイトに入った。





そして、いつも通りなんやかんやバイトを難なくこなし労働が終わった。


店長が

「今日はすまなかったな!! 良かったらこれやるよ!!」

と微糖の缶コーヒーとバームクーヘンをくれた。


「えっ、いいんですか?」

「あぁ、いいよいいよ! いつも頑張ってくれてるし、本当に助かったしな!!」

「では、すいません。遠慮なく頂きます」

「おう! お疲れ様!! なんか、今日はよりお洒落だなぁ。デートか?」

「言え、違います! では、お疲れ様です!」


気がついたら毎回、この人のペースに乗せられてるが……悪い気がしない……強引な所はあるが……所々、年下の僕にも気を使えるすごい人だ。



僕は缶コーヒーとバームクーヘンを受け取り、店を出て飲みながら歩いた。



あれ? なんか忘れてるような…………



あっ! G-SHOCK!!


僕は缶コーヒーを飲み干し、近くの自販機のゴミ箱に捨て、急いでニュートレジャーアイランドへ向かった。



時間は11時28分。果たして、G-SHOCKはあるのか……


かっこいいから、スゴく欲しい! と思いながら店に入り、レジに鈴木さんが居たので小走で近づき真っ先に訊いてしまった。


「あの!! すいません……バイト先の諸事情で来るの遅れてしまって……今日、限定セールのG-SHOCKってありますか?!」


「あぁ、少年くんか! G-SHOCKなぁ……実は……」


また、この人は言うのを溜めている。

鈴木さんはいつもの様に、サングラスをクイッと上げて……


もぅ! 無いんなら無いと言ってくれ!!


彼は小さく息を吐いてから、

「あるんだなぁ~、これが! じゃーん!!」

とG-SHOCKを見せてくれた。

「えっ、あるんですか!!」

「うん、まぁっ。良かったじゃないか!」

「あの……そのG-SHOCK、試着してしてもいいですか?」

「あっ、いいよ! どうぞ!」


鈴木さんからG-SHOCKを受け取り、僕は腕に着けてみた。



黒いフレーム。ぶ厚い。文字盤の所は鮮やかなターコイズブルーのような色。所々にパープルがあり、お洒落かつカッコいい!



「おぉ! だいぶ気に入ってるようだね! そいつはいわば、ベーシックなモデルだ。G-SHOCKといえば、衝撃に強くかつ20気圧の防水もついてるんだ。何よりも男らしいタフなデザインがたまらない 」

「そうですね。良いですね。ちなみにいくらなんですか?」

「えっと、元々コイツは新品だと1万6500円するヤツなんだが……今回はキャンペーンの限定価格で……2000円だ 」

「えっ、いいんですか? というか、よく売れなかったですね……」

「まぁ、他の商品が目的の人もいたし、何個か他のG-SHOCKのモデルがあったから、そっち狙いの人もいたから。運良く最後の1つだよ、おめでとう。少年くん 」

「わぁ!嬉しいです!それじゃ早速、買います!」


僕は時計を着けたまま、財布を取ろうとした。


「お買いあげ、ありがとうございます……っと言いたい所なんだが……実はそれ……店長代理から君にプレゼントだそうだ 」

「えっ、小野寺さんから……」


僕は周りを見て、小野寺さんが近くに居ないことに気付いた。


「あれ? そう言えば……小野寺さんは?」

「実は……さっき出てったんだ 」

「えっ、それってどういう事ですか?」


僕が心配そうな顔をして聞くと、鈴木さんは何て言えば言いか……っという風に顔を曇らせた。


どうせ、またも鈴木さんの悪い冗談だろう。

「あの!! そういうの本当に……笑えないですよ!!」

「いや……時計と別にコレ……渡せって言われて……」


鈴木さんは手紙を取り出し、僕に差し出した。

僕はその少し小さめの優しいピンクに、所々桜のデザインが散らばった手紙を開く……





《少年へ。直接、伝えず申し訳ない……

実は私は日本から離れる事になった。 詳しくは言えないがそうせざるえないんだ。

君と会った、この半年はとても楽しかった。少し私の人生も変わった気がした。

人との関わりが楽しいと感じるって改めて思ったんだ。

ただただ、ありがとうと伝える…………》




僕はその丁寧かつ切ない文章を呆然としながら目で追う。次の紙が折れてる所を開こうとした時、鈴木さんが閉じていた口を開いた。


「店長代理……詳しくは教えてくれないが、最近色々考えてたからな。もしかして将来についてとか……なのかもな……」


僕はその丁寧に綴れた手紙と鈴木さんの言動で、頭が真っ白になり、言葉が思い付かない……

僕は必死に、目を左右に言葉を探す。


「なんで……なんで直接言ってくれなかったんだろ……」

僕のフリーズした頭では、ただシンプルにしか呟けない。


そんな様子の僕を見て、鈴木さんは息を吸い頷いた。

「たぶん、言いづらかったんだろ。仲の良いヤツとの別れって辛いだろ。本人も認めたくなかったんだろ。離れる事に。シュレリンガーの猫と似たようなもんで……言わなきゃ、また、いつか……君が、店長代理に会えるという希望を持てるから……」

「そんなの……そんなの……ズルいじゃないですか 」

鈴木さんはため息をついてから、

「大人は、相手を傷つけない様に努力をする人もいる。あの人もその一人さ 」

目の前の大人は落ち着いたトーンで言う。それはまるで、全てを受け入れたように……




僕はその言葉に何も言い返せなく、ただただ黙るしかない……

「実はね……さっきまで店長代理待ってたんだよ。君に会うために 」

「えっ」

「さっき出て、表通りを歩いていったハズだ。その時は会わなかったのか?」

「いや、実はバイト先から来るとき急いでたので裏道を通って来たんです 」

「時計も直接渡したかっただろうし、直接別れも伝えたかったと思う。ただ、それと同時に……もしかしたら会えないかもしれない、会わない方がいいっと思って、手紙も書いたのかもしれないな 」



僕は何も言えず、立ち尽くした。


頭の中では、彼女が僕に向けて必死に手紙を書いてくれてるのが浮かぶからだ……




あの人はいつも、僕の事を気にしてくれてた……最後の最後まで…………




そんな彼女の事を思うと、僕の視界は膜を張った様に潤み、見えづらくなる。


こんな姿は誰にも見られたくない。ただ……項垂れていった……





「……ょう年くん! 少年くん!!」


いつの間にか横にいた鈴木さんの声、肩を揺らされ我に戻り、とっさに顔を拭った。



「あっ、すいません……」

「店長代理は今頃、駅の北側のバスのターミナルにいるハズ。たぶん12時前のバスで空港までに行く予定だ。」

「でも、今、11時41分……走ってもギリギリ間に合うか……」



僕はうつ向きながら、唇を噛み締めて思考を巡らせた。

僕の頭の中と、心の中の……誰かと誰かが言い合いを始めた。




やっぱり、間に合わないかもしれない……



いや、ホントはあの人は、お前と別れられて清々してるんだ。会わなかったのがその証拠さ。



でも、会おうとしてくれてた。手紙まで残して……



おまえ、建前と本音わかる? Do you under stand?



うるさい! 千里香さんは…………そんな人じゃない!!



でも…………またも、大切な人と急な別れ……また………もう二度と会えない……




鈴木さんは僕の揺らしていた肩に、手で力を込めて、

「少年くん! おい! 諦めるな!男だろ、走れ! 走るんだよ!!」

と僕の目を少しずれたサングラス越しに真っ直ぐ見ながら、訴える。

彼の手を見るとほんの少しだけ震えてる気がした。


おかげで、さっきまでの僕の中での論争が吹き飛び、目が覚めたような気がした。


そうだ……そんなの嫌だ。今度は自分自身で変えれるんだ!!

最後に会うことができるかもしれない。いや、会いたい!!


「ありがとうございます! 鈴木さん! 僕……行ってきます!!」


僕は直ぐ様、店を出ようと走った。



さっきまでの頭と心の中の誰かと誰かとは……別の腹の底にいる誰かが、気合いを入れるために僕の内側を叩く。



そうだ、行かなくちゃ、走らなくちゃ!




「少年くん!!!」

僕はその言葉に振り返る。


いつの間にか出てきてた、田中さんが僕に向かって何かを投げられ、僕はすかさずそれを手に取る。



カエルのキーホルダーが付いた鍵だった。



「その鍵は表に停めてある、自転車の鍵だ! それを使え!」

「えっあっ、おい! 田中! おめえ、それぇ!」

「田中さん! ありがとうございます!! 使わせて頂きます!!」



僕はドアを開け、表に停めてある自転車持ち上げ、店前の階段を駆け上がった。


「おい! 田中! おまえ、ふざけんなよ! あれ、俺の自転車の鍵じゃん!!」

「まぁまぁ、落ち着いて。困ってる少年を助けるのが俺たち大人の役目ですよ 」

「壊されたらどうすんだ!……」

「その時は……どんまいです!……」


2人の言い合う声が聞こえたが……形振り構わない。



僕は……もう、大切な人との急な別れは……嫌なんだ!!



僕は自転車を道路に降ろし鍵を外して、ペダルに足をかけた。ハンドルを強く握り、大きく息を吐いた。


よし!!


思いっきり右足に力を込めた。僕の鼓動は上がっていく。

行ける、行くんだ!



セイカちゃん時にも思ったけど、自転車を飛ばすと決めたとき……中学の時を思い出す。あの頃……いや、今は関係ない!!



駆け出した。ただただ……がむしゃらに……



花屋、スポーツ用品店、ドラッグストアと景色が流れる。


まだまだ行ける! そしてスピードが上がる。

だが、スピードが上がる半ばに声が聞こえる。



「あっ! おい、君!! この前の……」


んっ、なんか、聞こえた……?


後ろから追いかけられてるような気がする……

「今、自転車で爆走してる少年! この前言った、2人乗りで爆走してた人物と同一。至急応援お願いします!!……」

みたいな、事が聞こえたが……

まさか……自転車で爆走してるだけで捕まりはしないだろ……たぶん……


そんな事より、千里香さん。千里香さん……お願いだ。間に合ってくれ!



身体が熱い。息が苦しい。汗も出て、足の筋肉がまるで膨張してる様に感じる……


何でこんな事してるんだ……

でも、ただただ、必死に走った。


あの人に会いたいから……




目の前に北口のバスターミナルが見えた。僕は止まり、周りを見回す。


いない……いない。いない……


お願い居てくれ、お願いです……神様!



ふと、風が吹く。

肌を撫でるように優しく。

僕は吹いた方へ向いた。




いた!




千里香さん……千里香さん……


「ちぃりかさぁぁぁぁぁん!!」


僕は叫んだ。その音は彼女に届くのかわからない……ただ、届いてくれ……僕はそう願った。

残響は虚しくも車や多くの人の話し声で消される。ただ、さっきの声で僕を観ている人もいる……そんなの関係ない。



ふと、彼女は時計を気にしていた。いつもと全然違う、装い。



ゆるふわの優しいピンクのトップス。草色の様なロングカーディガン。デニムのスキニーパンツ。茶色のブーツ。編み込んであるポニーテール……


いつもと違う…………でも、わかる。千里香さんだ。


僕は自転車を漕ぎながら、もう一度叫んだ。


「ちりかさぁぁぁん!」

きっと僕の顔はぐしゃぐしゃになってるだろう。そんなのは関係ない。彼女に彼女に気付いて欲しい。ただそれだけなんだ。


僕の想いが届いたのか……今度こそ、彼女はこちらに気づいた。


「えっ、あっ、少年!?」


彼女はこっちを見て驚いた後、左右を見回した。


ただ、必死な顔をして近寄ってくる男に彼女は何を思うのか……


僕は彼女の近くに近づこうとした時、段差に引っ掛かって自転車ごと転ぶ。彼女は心配して僕に近寄った。


「大丈夫か! 少年!!」


僕は……なんでまた、彼女に心配されているんだ……

そんな情けない自分自身腹が立つ。


「大丈夫か、怪我はないか、痛くないか……」

「千里香さん……」

「ん、なんだい?」


僕はひどい顔をしてると思う。でも……言わなきゃ……伝えなきゃ。


「なんで……なんで……! ちゃんと言ってくれなかったんですか?!」

「えっ、あっえ?!」

彼女は少し動揺していた。


僕は転けた衝撃とさっきまでの感情が混ざって、彼女に対して少しムキになってるのかも……

怒りなのか悲しみなのか……わからなくなっていた。


「直接言うのなら、以前から言えたでしょ! 千里香さんは!! いつもいつも、大切な事ははぐらかして……千里香さんにとって、僕は……何なんですか!! 僕は、僕は……」


僕は少し擦りむいた震える手で彼女の肩に触れた。擦りむいたところから、何かドクドクと感じる。


「少年……あっ少年! 待って、待って! 落ち着いて、周りの人たちが観てる……」

「えっ!」


僕はそれを言われ、漸く我に戻った。


その時一人。また一人と何故か拍手が起きてくる……


見物人のおばあさんに


「ほっほっほ、青春じゃのう!」


と言われ、それにつれられ笑っている人たちも出てくる。

僕は急に恥ずかしくなり、顔が赤くなった。



動揺する千里香さん。

響き渡る拍手。

パトカーのサイレン……

午後0時。


ん、これどういう状況?! えっ! サイレン……?!


「どいてどいて、えぇっと、君だね。さっき、自転車飛ばしてたの……」

「えっ 」

「君……ダメだよ。あまりね、我々も学生さんをしょっぴくのはしたくないんだが……というか……君、やっぱりこの前も女の子と2人乗りして自転車飛ばしてたろ。あのね、安全運転義務違反ってのがあってだね……あと最近、春先になってこの辺でトレンチコートを着た、露出魔が出没しててるから……もしかして、それも君じゃないのかい?」


えっ……あっ!!! あの時のお巡りさん!!


僕は全力で首をふった。


「あっえっあぁぁ……ちがっ」



終わった……僕の人生……終わった。知らない罪まで擦り付けられ……

僕の身体は国家権力の圧で硬直した。


「あれ? 中村さん?」

「えっ……あっ!、古着屋のお姉さんじゃん。どうして、ここに?」

「いや、私は用事で…今からバスに乗る予定だったんだが……この少年に、泣いてせがませれてね 」

「えっ、それはどういう事ですか?」

「まぁ……私の弟とみたいなもので……離れるのが辛いみたいなんだよ 」

「はぁ……なるほど……」

「だから……今回! 今回だけは見逃してもらえないだろうか……」


千里香さんは両手を付けお願いしてくれた。お巡りさんは呆れた様子で息を漏らした。


「まぁ、あんたには……借りがあるからね。今回は、厳重注意と言うことで……相方には俺から事情を説明するので………そして、君……」


お巡りさんはドスを効かせて、僕にボソッと一言。

「三度目はないからね 」

「はっ、はい!!」


大人に、あらゆる現場をこなした大人に怒られる恐怖が身に染みた。


あぁ、もう二度と自転車には乗らないでおこう……僕の硬直した身体はみるみると力が抜ける。


そして、お巡りさんは頭を掻きながら、パトカーに戻っていく。


漸く色々と状態が落ち着いた……でも、周りの人たちが僕たちを観ている。



千里香さんに

「とりあえず、少し移動しよっか 」

と言われ、近くのベンチとかがある広場に移動した。




「ふぅっ、やっぱり地域住民、警察とはある程度仲良くなっておくものだなぁ~……さてと、これはどういう事だね 」

「いや……」

後ろめたく感じ、彼女の眼差しから顔を反らした。だが、元はと言えば早めに説明してくれない彼女が原因……


なんで僕が責められる感じになってるんだ……


「いや、というか! 前から直接伝えれたでしょう! なんで手紙で……別れを告げるなんて!」

「うーん、なんやかん急遽決まったんだよ……あっ、えっ、手紙? 別れを告げる?」

「はい!」

「少年……手紙は全部読んだのかい?」

「えっ、はい! 読みましたよ!」



彼女は少し考えながら……


「全部だよね?」

「だからそうです!」

「持ってる?」

「はい! ポケットに」

と僕は手紙を取り出した。

「ほら!」



《少年へ。直接伝えず申し訳ない……実は私は日本から離れる事になった。

詳しくは言えないがそうせざるえないんだ。君と会った、この半年はとても楽しかった。少し、私の人生も変わった気がした。

人との関わりが楽しいと感じるって改めて思ったんだ。

ただただ、ありがとうと伝える…………》



「ほら、明らかに別れの文章じゃないですか!」

「えっ、だからまだ、これ全部じゃないぞ。下、下」


「えっ 」



僕は改めて、下にの折り畳んであるところに気が付く……


「あっ!」




《……と書くと別れの手紙みたいだなぁ! まぁ、ちょこっと用事を済ましに出ていく予定だ。案ずるな。そのうち戻る!

今からハリウッドに行って映画の撮影をし、そのあとパリコレに出て、日本人名誉賞をとり、世界から『TIRIKA様』と崇められるだろ。

いや、さすが私~!と、作り話に花を咲かせ。私はこれを読み返しては、感動している~(次、ギター伴奏)

[じゃっじゃっじゃっじゃ、じゃぁん。

じゃじゃじゃ、じゃじゃ、じゃーじゃじゃじゃーん×4……]

という事で、お土産楽しみにしてねぇ♥️》


予想もしていない、訳のわからない文章に目を疑った……


「えっ……………ぁっ、なっ、なんじゃっこぉりゃーー!」

「いや~ 手紙って面白い方が良いだろ~」

「いや、ここまで行くと意味がわからないですよ!」

「というか、全部読むと思ってたんだが……」

「いや、途中で鈴木さんに話しかけられて……『最近、店長代理が悩んでたから……』って……あと、セイカちゃんの件もあったし……」

僕はそう言った後、どうしようもなく下を向く。


千里香さんは大きなため息をついて

「まったく、あいつも余計な事を……」

と彼女には珍しく難しい顔で呟いた……



プルルルル……



二人の沈黙を割くようにスマホが鳴る。

僕は一瞬スマホを探そうと手で探ったが、自分のではないとわかり動きを止めた。


彼女が

「あっ、私だ。少年! ごめんよ。少し電話にでる」

と千里香さんは少し距僕から離れ電話をかける。


「あっ、私だ……うん、スマン。今……野暮用で、行くのに2時間ほど遅れそうだ………………だから、スマンって言ってるだろ。ちゃんと行くから、頑張って場を繋げ!! あと今後の例の件はやっぱりナシだ!…………元々、乗り気じゃなかったし! あぁ、がんばって、私より優秀なのを探せ!…………んじゃな! 」


所々、荒げてる男性の声が聴こえる……もしかして、この前のスーツの男性?


「ごめんよ、少年待たせてしまって……」

「いえ……あの……今の電話は……」

「あぁ、兄だ!」

「えっ、お兄さんいたんですか!?」

「あぁ! 最近、ちょっと雲隠れしてたんだが見つかってしまってな 」

「えっ、んじゃ! この前、言い合ってたのってお兄さん?」

「少年、盗み見してたのか? いい趣味だとは言えんよ 」

「たまたま、戻った時に見てしまって……」


僕はなんか腑に落ちて力が抜けた……


「なぁんだ、お兄さんだったんだ 」

僕は安堵で息で笑ってしまう。


彼女は不思議そうに此方を見ながら首をかしげた。


「……少年、もしかしてと思うが……私に惚れてる?」

「はぁぁ!! ちがっ、違いますよ!!」


すると彼女は見るからに、ニヤニヤしながら答える。


「確かに私は、美人で愛嬌があってそこがまた可愛く、それにスタイルがいいし、頭もいい。そして気が利くし、君が惚れてもしかたがない!」

「いや、僕はただ心配してただけです!! なんか、変な男に捕まっちゃったのかと思って!! それに、僕には早川さんという想い人がいて!!!」

と言うと彼女は、わざとらしくショックを受けたように

「少年……そこでまで否定されたら悲しいよ……あと、それ! 本人に言ってあげたら……喜ぶと思うよ~!」

彼女は意気揚々とからかう様に言った。


「いや、まだ言えないですよ! お互いの事……まだそんなに知らないですし……それに、迷惑掛かっちゃうかもしれないし、卒業の時に言います 」


千里香さんはジーッと僕を見てから、呆れた様にため息をついた。


「少年……だから君は少年なんだよ……」

「どういう事なんですか!!」

「いや、まぁいい……んでぇ、君はどうしたら安心してくれるのかなぁ……」

「えっ……あぁ……わからないです……」


それから僕たちは解決のため、考えた……彼女は顎に手を添えて、僕は腕を組み……性別、年齢、立場……全然違う僕たちは、今同じ事を考えている……

沈黙だが、この人との沈黙はぜんぜん苦に感じない。


「うん、じゃ、決めた!」


千里香さんは僕に手を差し出した。

「私と正式に契約をしないか 」

「契約?」

「うん、魔女との契約だ。君は正式に、私の……悪魔……?いや、魔女の弟子だ 」

「えっ、どういう?」

「そうだなぁ、私が困った時。もしくは、君が困った時。お互いを助け合おう。そして、私の知識は君に授ける。私は魔女と言われてるからには厳しいぞ 」

「はい!」

「あと、契約というものは違約もある。そうだなぁ……違約の内容は……『君が君の大切な人を傷つけてしまった時』……この契約は破棄される。それだけは、重々承知してくれたまえ。」

「わかりました!! 絶対に、破りません 」

「あと、私が40歳になっても結婚できなかったら結婚してね!」

「いや……それはちょっと……」

「まったく、ノリが悪いなぁ……まぁ、とりあえず……うん、ほら、アレっ出したまえ!!」

「えっ、あぁ!」


僕は分からず、手を差し出す。


「違う!! 手じゃない! スマホを出せ!」

「あぁ。」


そして、魔女は僕のスマホを取り上げた。


数分が立ち……


ピローン。



「うん、これで完了だ。魔女との契約。私のLINEを登録しといた。返事はすぐに返せない時もあるがその時は許してくれたまえ 」


僕はスマホを受け取り、登録されてる事を確認した。

なんか、理由もすぐに思い付かないが……すごくすごく嬉しすぎて、何故か身体が震える……

あれ、目頭があつい……


「あれ、少年……もしかして、泣いているのか……」

「えっ、いや、違います!花粉症が辛くて……」

「少年……」

彼女はそう言った後、魔女は後ろを向き、そのまま何かを考える様にして歩回る。

魔女は納得し、少し上を向いた後、振り返り腰に手を当て、笑顔を向けた。



「私は小野寺千里香。26歳。1月7日生まれ、血液型はB型。出身はアメリカ。好きなものは、コーヒーと甘いものと辛いもの。嫌いなモノは人の気持ちを考えないヤツ。以前の仕事はモデル兼、女優兼、デザイナーのアシスタントだ!! そして、スリーサイズは……」

「スリーサイズはいいですよ!!」

「なんだ、少年。ここまで聞いといて~、もうウブだなぁ~」

「というか、モデル兼、女優兼、デザイナーのアシスタントってのは作り話じゃないんですか!作り話に花を咲かせ過ぎですよ!!」

「ひっどーい! もうちょっと信用してくれてもいいんじゃないか!! あっ、それと少年。今日のコーデ春らしくていいじゃないか!」

「えっ、そうですか! いやー、ちょっと可愛すぎるかなぁって思ったんですが……あっ、話し反らさないでください!!」


……そんなやり取りがすごく楽しい……




その時、風が吹いた。ピンクの花びらが何枚も何枚も何処からか、彼女の回りにヒラヒラと揺れている。


桜……あれ、もう、散ったハズなんじゃ……あぁ、きっと彼女が……魔女だから、魔法が起きた。

これも千里香さんの力なのかなぁ。


僕は息が抜けるように笑う。


「なんだ、少年! 今日は忙しいな!! 泣いたり怒ったり笑ったり 」

「誰のせいだと思ってるんですか!」

「あぁ~お腹空いたなぁ~」

「あっ、バウムクーヘンなら有りますよ!……」

「少年、なんでバウムクーヘンを持っているんだ?……」


僕との何気ない会話で彼女がすごく笑ってくれている……

そんなごく普通の事がなんかスゴく嬉しい……


春らしいコーデをしている僕たちは広場で戯れる。



舞った桜の花びらは彼女の髪についている。

少女みたいな大人。それがまた、面白くて……そして、愛おしい。


はぁ、ときめいちゃってんな! 僕!!


でも、好きなのは早川さんだ。それに揺るぎはない。



この、『魔女』とおぞましい名で呼ばれているこの人は……人の幸せを祈り。たぶん、服に魔法をかけて、色んな人を幸せにする。



大人ぽさと子供らしさを兼ね備えた、そんな人の弟子になってしまった僕は……


いや、僕も魔女になれるかなぁ。


この人みたいに……




「さぁっ! あなたの願い叶えましょ!!」



花びら舞う中で…………彼女は手を差し出した。



どうだったでしょうか?


私的に、桜をバックに魔女との契約をして終わるってのが理想だったの描かせて頂きました。


千里香さんと佐藤くんが、ちゃんとLINEを交換し、一人の友人として、歩んで行って欲しいと思いました。

もちろん、描き足りない部分やメインの二人の過去で描いてない部分もあります。

それはいづれ描こうと思います。


私自身、今から挑まないといけない事があり、その試練がいつ終わるかにもよりますが(汗)

そっちが落ち着き次第また、書いていきたいと思います。



第1章は sweet&sour 甘酸っぱいを題材にしてます。

なのでラストもコメディらしい王道らしい終わり方にしました。

私自身、海外のシットコムが好きなのでちょっとぶっ飛んだ展開にしたかったんです。



第2章は sweet&salty 甘じょっぱいをイメージして描きたいと思います。

ハッピーターンっておいしいですよね。あの粉って旨味で形成されてるみたいで、理想はあんな感じです(笑)

また、何人かの新たらしい登場人物の別の視点も描きたいと思います。



第3章は 仮ですが Bitter&Sweet にしたいと思ってます。

人生ってぜったいにほろ苦い事が多々あるので、たぶん予定では笑いを少し混ぜつつの人間ドラマを描けたらいいなぁ~っと思ってます。


長いのに全部読んで頂き、誠にありがとうございます。

もし、また、続きを投稿できましたらその時は宜しくお願いいたしますm(。_。)m

本当に本当にありがとうございました!!

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