8 桜の季節過ぎたら#2
前回の続きです!桜の季節といえば別れと出会い。
離れてしまう人や出会う人もいる季節ですよね。
私は花粉症がつらいです……。
今回はちゃんと服のお話します!
今回も長いのゆっくりと読んでください。
お楽しみ頂けたら幸いです!
8-2 すーぱー!!
小野寺さんと会わなくなり数日が経つ……4月の終わりの週……の月曜日。
すっかり、桜は散ってしまって青々とした葉っぱが色づいている。
彼女はどうしてるのか……もしかして何かあったのか?
と思っていた。
ただただ、セイカちゃんの件があったから不安が積もってくる。
もし、今日居なかったら鈴木さんか田中さんに住所を聞いて直接元気かを確かめよう!…………
とそれくらいの意気込みで店に向かった。
あれ、僕、最初の方に小野寺さんが言った通り……ストーカーじゃん!
いや、違う! 違う違う違う! 千里香さんに対してそのような感情は無い! 僕には早川さんという、想い人がいて……そう、千里香さん……とは……千里香さんとは…………
あれ………なんだ……
そういえば小野寺さんとは、どういう関係なんだ……
魔女の弟子……? 姉と弟みたいなもの……? 友人…………?
というか彼女がいくつかも知らないし、個人的なこともなにも知らない……彼女が何が好きで何が嫌いか……出身は? どういう人生を送ってきたのか……?
僕、彼女の事を何も知らないじゃないか…………結局……お客さんと店員という関係性……いや……違う……だって、小野寺さんと仲良く話してるのは僕ぐらいしかいないじゃないか……
いや、でも……僕は小野寺さんの事……何にも知らないんだ…………なにも……と色々考えた結果、気持ちがすこぶる下がった状態で僕は店に着いた。
ふと店を見回し、鈴木さんと田中さんはいる……僕は少し店をぐるっと一周した。だが小野寺さんはいない……
レジに暇そうにしている鈴木さんがいたので声をかけることにした。
「あの……今日も小野寺さんは……」
「あぁ、少年くん。今日、店長代理は…………」
鈴木さんは口をへの字に閉じ、考える様子で少し黙った。それからサングラスをくいっとあげ、言葉を詰まらせて……
僕は千里香さんに何かあったのではないかと思い、ただ鈴木さんを見つめる。
その時、店の入り口の自動ドアが開き、顔を向けると小野寺さんが入ってきた。
「実は、今日は来るんだよね~、驚かそうと思って~」
っとニヤニヤとしている。
うん、十歳以上年上であろう人だが少し殴りたくなった!
僕は、小野寺さんに近寄り、
「最近……どうしたんですか? あまり店に会わないですが……何かあったんですか?」
「あぁ、いや、最近はちょっと……」
彼女は一瞬顔を曇らせたが直ぐ様明るい顔をして、、
「色々と忙しくてね! ごめんよ~、最近は、寂しい想いを……さ・せ・て! 」
そうやって彼女は僕との距離をつめた。
僕がその近い距離にアワアワした瞬間、彼女は視界から消える。そして直ぐ様僕の後ろに回り、頬と頬が触れ合う距離にいた。
僕は驚き退け反った。
「もー、少年はウブだなぁ~あぁ、話しを戻す! 安心してくれたまえ。 そして~前みたいな生半可な回答はしないよ。したい相談があったら聞くし、服の事も聞いてくれ。少年」
彼女は平然と明るく答えてくれた。笑顔でしっかりと……
そのいつも通りおちゃらけた様子と、しっかりと答えてくれた事、『少年』という言葉と全体的なニュアンスで僕は安心して、ほっと一息つく。
「もう……心配したんですよ! 本当に本当に……何かあったんじゃないかと思って……」
僕は嬉しくなる反面、いくつかの質問を考えてみたが、ただ彼女の事を知りたいと思ってしまった。
「えっと、質問! 何でもいいなら……とりあえず、小野寺さんはいくつ何ですか?」
「少年、それは女性にあまりしちゃいけない質問だぞ 」
苦笑いしながら、低いトーンで返された。
ついつい、千里香さんの事を知らないのが自分自身情けなく突拍子もない質問をしてしまった……普通に失礼だな……僕……
そんな事を思いながら、頭を搔く。
「というか、今日はより深刻そうな顔をしてるね……」
「いや……さっき鈴木さんが、意地悪してきて……」
小野寺さんはむっと顔をして、鈴木さんの方を向いた。
「おい、鈴木……お前、少年に何をした……」
「いえ……自分は少年くんに何もしてないですし、何も言ってないっすよ! なぁっ、田中!」
「えっ、俺は知らないですよ」
「お前、こう言うときは庇えよ!」
「えっ、めんどくさい。」
「とりあえず、鈴木は残業確定な! 店のレイアウトを変えろ!」
「えっえ……そんな……それパワハラっすよ……」
「文句あるなら、上に言ってみろ。そして、また同じ様な事をやってみろ。正式なやり方でお前を潰すからな 」
「そんな……」
真剣な言葉だが、おちゃらけた慣れたやりとりを観て、ふっと笑ってしまう。僕はそんなやりとりを見てたら安心し、本当に何もないんだと思った。
「そう……いえば! 最近、君はお洒落になってきてるとは思うが新しい事にチャレンジしてみないか?」
「えっ、新しい事って……」
「うん、例えば柄ものとかはどうだい?」
「柄ものですか……」
「そうだ、君はシンプルなものをチョイスしがちだから……あえて、違うアイテムを試すのもいいと思ってな」
「なっ、なるほど……でも、柄ものって難しくないですか……なんか、悪目立ちするっていうか、チャラくなるっていうか、変に頑張ってる感がでるというか……」
「うん、まぁ、確かに難しいモノもある。だが、お洒落って究極を言えば、足し算と引き算なんだよ」
「ええっと……」
「まぁ、例えばパッションピンクのアウター、黄緑のシャツ、明るめの紫のパンツを着てる人がいるじゃないか」
「それはスゴく独特ですね……」
「うん、まぁ、漫画のキャラクターとか映画の登場人物や独特な雰囲気な芸能人なら別だが……普通の人だと、それは似合わないじゃない?」
「はい」
「でも、パッションピンクだけ残して、他を白やダークグレーや黒やネイビーやダークブラウン等でコーデする。だと、ちょっと個性的だけどハイなお洒落な人だと思うよね」
「まぁ、一枚だけ特殊だけど、ワンアイテムだけ外してお洒落な人に思えます」
「うん、だから、柄ものも同じようにその足し引きができれば、古着感のあるコーデ。綺麗めの外しコーデ、アメカジ風のカジュアルコーデ等色々できるんだよ。だから君には、また1つ違うものを試して欲しいんだ」
「あぁ、なるほど……」
「私の考えだが、若いうちに色んなモノを試して欲しい……自身の見た目、体格、趣味趣向に合わないものもあるし、今の年齢の自分では合わないものもある。だが、試すことによって、違う自分を知れたり……今、全部は使えないが将来の自分の一部として生きてくるところもあるっかもしれない……服も人生もそういう所では同じなのかもしれないね。その1つとして、服は身につけるだけでその人自身を変える事ができるのさ。まぁ、因みに元も子もない話だが私は究極のお洒落は『筋肉』だと思う部分もあるけどね……」
「それ、本当に元も子もないですね……」
「まぁ身体的なお洒落は努力や自身を知る事が必要で……色々と変わらないといけないから大変だよ。それに続いして服もその延長線だが……先に服から変えて、自分の考えを変えるっということもできると思う。また、私の考えでお洒落に必要なモノって、1に清潔感。2に筋肉とスタイル。3に服装飾と言っても過言ではない。 まぁパッと見、見た目がいい人って類稀な持ち主の人もいるが、殆どの人は努力で保ってるからねぇ。まぁ何を言いたいかと言うと、ベースは結局その人自身に、どういう色を着けていくか……その色で相手にどういう印象を与える事になるか……もしかしたら、どういう人生を歩んできたかっ、までも感じさせてしまうかもしれない事がある。等々、私は思う」
「そんなに壮大な事になるんですかね……」
「まぁ、私の一極論だよ。だから、君にその考えを押し付けようとは思わないし、そういう人間もいるということをわかってもらえたらいい……まぁ、少し話が戻るが人の体つきも含めてそれぞれの個性だとも思ってるよ……だから其々の人間の生き方、全てを含め私は基本否定はしないつもりだ……おっと、というか話がだいぶ脱線してしまったが……やるかね! 柄もの服を!」
彼女は明るくチェケラッチョの指をして、僕に案を提供する。僕は彼女の熱い提案に、嬉しくなり精一杯の誠意で答えたくなった。
「はい! 変われるなら変わりたいです!」
彼女は僕の返答に少しきょとんした。それから少し切なく一息ついてから、口角を上げていつも通りに答える。
「うん、なら、あなたの願い叶えましょ!」
そして、僕たちはシャツのコーナーに移動した。
「柄ものって勿論、パンツやアウターもあるが最初に試すなら……やはり、柄シャツ! がいいと思ってね~」
「なんか、ワクワクしますね!」
「うんうん、そうだろ~やはり服選びは、コーディネイトね(こうでないとね)~」
「小野寺さん、それは無いです 」
「君……せっかくより楽しませようとしたのに……まぁ、とりあえずこれはどうだい?」
小野寺さんはまず一つ目を差し出した。
「ポール・スミス のシャツだ。写真と花がデザインされている。このシャツの柄、いわば柄々ではないから綺麗めに合わせやすいね。半身近くは柄ではない。そしてベースのクリーム色、差し色として緑と青色がまた気品の良さを出してるね。背中のヨークのが目立たないのがよりスタイリッシュに見える!」
「あの……ヨークって……?」
「肩から背中にかけての切り替え部分だよ。本来は身体にフィットするように左右の布の分量を調節して両肩にフィットさせるためのもので、ヨーク面積が狭いほどドレッシーに仕上がり、広いとカジュアルに見えるだよ 」
「なっ、なるほど……」
「ポール・スミスは多分、知ってると思うが……イギリス発のブランドだ。ラインの展開も多く、学生からミドル世代まで幅広い世代に愛されている 」
「まさかのポールスミスか……たしかにポップな柄シャツのイメージありますね……一条くんに進められた事もありました 」
「うんうん、さすがは一条くんだ! ちなみに、ポールスミスのコンセプトは『ひねりの効いたクラシック』だそうだ 」
「コンセプトもかっこいいですね!」
「そして、このポールスミスのシャツが……2480円!」
「お手頃ですね~」
「うん、では次だ!」
小野寺さんは2着目を出した。
「ナラカミーチェ。波をイメージしたシャツだ。まぁ、観た感じで波かどうかは実際はわからない……」
「まぁ、藍色、青色、水色、白色と……確かに波っぽいといっちゃ波っぽいですね。これこそ、柄ものらしい感じですね 」
「うん、このシャツは背ダーツのおかげでスッキリとみえるね。ちなみに、ナラカミーチェはイタリア発のブランドだ。どちらかと言うとレディースの方がイメージあるブランドだね。そして、このシャツが980円!」
「おぉ!安いですね~!」
「まぁ、相場があるからね~ でっ、次だ!」
そして、3着目を出した。
「じゃーん!こちらがフレンチコネクションの大花と小花の柄シャツ。これも柄ものらしい柄シャツ。ベージュをベースとした。オレンジと白と水色の花がそれぞれに綺麗に散らばった上品なシャツだ。ちなみに、フレンチコネクションはイギリス発なのだがデザイン部門ではフランス人が多く所属しているんだ。そして、イギリスとフランスのテイストを併せ持ったデザインが特徴だよ。ヨークとサイドタックがこれまた着るとかっこ良く見せてくれるんだ 」
「うーん、全部、個性的ですね……でも、おもしろい 」
「うんうん、とりあえず試着してみなよ~」
「はい!!」
僕はとりあえず、試着してみた。
「何か、初めて柄もの着るので……なんか、こう……しっくりこないですね 」
「まぁ、着なれないとそう思うよ。だが、またも持論だが、服は着ようとしてると自身に馴染んでくると思うよ。逆に服もその人の形になってくるから、我々に歩み寄ってくれてる気がするんだ。だからこそ、服は色々と挑戦すべきだと私は思う。 うん! でも、着た感じ悪くはないと思うよ。ちなみにそれは1980円だ 」
「はぁ……なるほど……あの、実は……さっきチラッと見て気になったのがあったので……それを着てもいいですか?」
「うむ、もちろんだよ!」
僕は、その気になるのを持ってきて試着した。
「どうですかね……デザインがスゴく目に入ってきて……」
「おぉ、確かにいいね……それ!! うん、たしかそれはスーツカンパニーが出してるWEEKENDというラインだね 」
「スーツカンパニーってたしか……」
「そう、スーツカンパニーはもともと、洋服の青山を展開しているんだが『ハイファッション・ハイクオリティな商品を最高の立地でリーズナブルな価格にて提供すること 』をコンセプトにスタイリッシュなデザインで若者層のサラリーマンたちに支持を集めてるんだ。それでWEEKENDはいわば週末の休みを楽しんでもらうためのラインだね。その青紫とピンクとベージュの小花柄が可愛くそして春らしさを演出してて素敵だと思うよ 」
「そうですね。なんか、スゴく春らしくて……何というか……可愛いのを着てみたいってなりました 」
「うんうん、実に良い変化だと思うよ。そして、そいつは790円だ!」
「安い!」
「うん、さすがはスーツカンパニーだと思う。コスパがいい!」
「僕、これにしていいですか?」
「もちろんさ! 君もホント良いセンスしてるよ!」
「いや、これも小野寺さんのお陰です 」
「まぁ、確かに!! さすが私だ~。これから……ぁ……」
小野寺さんは笑ってたが一瞬顔が曇ったように見えた。でも、直ぐ様切り替える。
「はぁっ、魔女の弟子としてはまだまだ修行が足りないぞ! 少年!」
「はい! もっと色んな服を手にとって試着して、勉強していきたいと思います!この店に来たら小野寺さんに教えてもらえますもんね!」
「うん、そうだ……その通りだ! んじゃ、お会計しちゃうかい?」
「はい!」
僕たちはレジに行った。
ふと、レジの向こう横のショーケースに並べられた時計が目に入った。
「改めて見ると、時計って色んな形ありますね。僕、自分の持ってるのしかないんで~」
「まぁ、時計はいわばアクセサリー感覚でつける場合もあるし、ビジネスマンにとってはステータスとして、とても意味があるものとして扱われてるからね。君はセイコー5を持ってるし、若いからブレスレットやバングルとかでもいいと思うが……ちなみに、日本の三大時計メーカーはセイコーとカシオとシチズンだね。あと、オリエントもコスパのいいメーカーだからお勧めだよ 」
「僕は文字盤のしかないから……」
「アナログタイプだね。もし良かったらデジタルとか見やすいし、スポーティーでカジュアルに使いやすいからいいと思う 」
「実は……G-SHOCKが気になっていまして……この前からついつい見とれてしまうんです 」
「うんうん、G-SHOCKか……ふーん、うん、実は……うちの店のキャンペーンで4月29日の昭和の日、トレジャーキャンペーンってのがあって、いくつかの商品を各店舗限定に安く売るんだよ。その1つにG-SHOCKも何個か限定で安く販売するんだ 」
「えっ、その情報僕に言って良いんですか?」
「一応、サイトに開示はしてるし……君は……と・く・べ・つ・な! お得意様だからね~その代わり早く来ないと無くなっちゃうから、オープン直ぐに来るのをお勧めするよ 」
「はい! そうします! 本当にありがとうございます!」
「うむ!」
彼女はいつも通り、笑顔で見送ってくれる……4月29日、昭和の日が楽しみだ!! G-SHOCKか……なんかワクワクする!!
僕は嬉しくて、駆け足で帰った。
今なら何だって飛び越えれるような!
僕は店に着いた時と違い、軽い足取りで。
季節は巡る。春、夏、秋、冬。きっと僕の周りは変わらない。
そして幸せな……今を生きている……と、そう感じている……
今回も読んで頂誠にありがとうございます!
さて、もしかしたら、小野寺さんまでも消えてしまう……みたいな流れで書いてました。
でも、いつもの日常って私は大切ですよね!
いつも居てくれる人ってありがたいと私は思います!
また、次回読んで頂ければ嬉しいです(*^ω^)
感想とうも気軽にしていただければ幸いです!
今回もありがとうございましたm(。_。)m!




