間話 『贈り物と筋トレ』
全身の感覚がない。
床は俺の汗と血とよだれで水浸しだ。
心はとうの昔に折れた。
しかし体は動き続ける。
幾度太陽が昇り、そして落ちたか。
一切飲まず食わずで生きているのは、
コーチが創造神だからだろうか。
彼女は良い人だ。
俺の事を本気で思ってくれるのだろうか、
俺の動きが止まるごとに背中を蹴り飛ばしてくる。
体はちゃんと拭いてくれるし、
冷たい水も時々かけてくれる。
心地よい疲れだ。
なわけねぇだろぉ!?
巫山戯てんのか!?
心もまだ折れてねぇし、
何より腕が千切れそうな痛みを常に発してるんだよ。
冷たい水だけはマジでやめろ!
あのスピードでかけないで!
「はい!お疲れ様!
これで貴方の筋トレはおしまい!」
急に体が重くなり、
腕で支えきれなくなる。
地面に崩れ落ちた衝撃で、
足の方の筋肉が引きちぎれる音が聞こえる。
「あらら、やりすぎちゃったね。
大丈夫かい?直してあげるね」
ゆっくりと全身の痛みが引いていく。
傷がみるみるうちに塞がっていく。
傷が治った瞬間に、
こいつに襲いかかってやる。
「この間ね?
あの人のプレゼント貰ったのよ!
嬉しいなぁ。分かるでしょ?
この気持ち!」
あの人?俺の恩人のことか?
まぁ、人にプレゼントをもらって、
悪い気はしないよね。
特にテオトルはその人の事が好きだったなら、
余計に嬉しいんじゃないかな?
よし、少しづつ力が入ってきた。
覚えてろ、鬼女神め。
これは終わったら代替わりの時間だ。
「あの人は世界樹内で、
最強の男よ!私が保証する!
貴方の爺さんなんか、
人差し指で吹っ飛ばすに決まってるわ!」
そんなに強いのか!?
えっ!?チートじゃね?
ギーモンを人差し指でねじ伏せる強さは、
異常でしかないと思うんですが。
神様ですか?それより強くないですか?
「彼も今度試験世界に来るみたいだから、
君もそれまで生きてたら見る事が出来るかもね」
へっへん。
呑気に言ってる間に準備完了だぜ?
仕返しをしてやる。
「ちょっと?聞いてるの?
なに?どうしたの?魔力凝縮術なんかしちゃって?
敵でも来た?」
「うん。俺にとっての敵がいるんだ。
目の前にな」
思い切りジャンプをして、
右手に0階位闇魔法魔法付与を腕に施し、
力任せに振り下ろす。
「あぁ、そう。一時の恨みで、
私に歯向かっちゃうんだ」
テオトルの周りに結界が出来上がる。
今まで見たこともない、
恐ろしく禍々しく、
それでいて透き通るように綺麗だ。
「言ったでしょ?
彼にプレゼント貰ったって。
彼のプレゼントは、
私の永遠の保護よ」
体が宙に舞い、
猛スピードで地面に叩きつけられ、
意識を失った。
「結界内にも入れないだなんて、
まだまだ弱々しいものね」
意識を失う直前、冷たいテオトルの声が聞こえた。




