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第40話 『素直な決意』

「いだだだだ!許してぇ!」

「このぉ!ダメでしょぉ?

これに懲りたら、次からはやらないのよ?

分かった?」

「ほんの出来心だったんだ!

あんまりにも苦しいから、いだだだ!」

「分かりましたか!?」

「ふぁい!分かりまじだ!ゆるじでぇ!」


だはぁ、ひどい目にあった。

結界を破れずに跳ね返され、

意識を失ったあげく、

きついお仕置きまで付いて来た。

まったく、なんて人だ。

いや、神様か。


「うん、でもまぁ、結界に殴りかかっただけあって、

ちゃんと筋力も上がったね。

これなら打てるかな?

よし、始めよっか」


テオトルは右手に炎を、

左手に禍々しく黒い球を出し、

地面に叩きつけた。

一瞬、世界が揺れたような感覚が襲い、

炎が付いた。


「あぁ、危ない、ギリギリ耐えてくれたか。

神地園(ネレナヘイム)の奴らは、

少し強すぎるんじゃないかな?

今度調整入れとくかな」


ブツブツ言いながら次々に虚空から、

材料を取り出していくところを見ると、

流石創造神と、言った所だろうか。


「よぉし!準備完了!

感謝しなさいよ?これもう失われし技術で作られてるやつよ?

魔力を大幅に消費してるんだから!」


テオトルにも魔力とかいう概念があるのか。

なんだかこういうところは親近感を感じるな。


「さぁ!順番に入れなさい!

神鉄(オリハルコン)不壊金属(アダマン)魔鉄鋼(ミスリル)よ!」


言われた通り、材料を溶かしていく。

最初の頃は混ざりあっていなかった液体は、

テオトルの言葉とともにゆっくりと混ざりあっていく。


「うん。これで彼の祖母の幻魔石を…、

よし、おっけい!叩いていくよ!」


溶けた金属を四角い状態にまとめ、

テオトルは鍛治ハンマーを取り出した。


「良いかい?君の今までの筋トレの成果を、

叩きつけるんだ。

私への恨み、それも良し、

ヘリル王国への怒り、それも然り。

だけど何より、自分の素直な気持ちを、

本気で叩き込んでおくれ。

それも彼が望んでいる事だと思うんだ」


素直な気持ち……か。

なんだろうな。


ヘリル王国への恨み。

もちろんそれもある。

ブレイダルの野郎は許せないし、

それに協力した奴等だって、

許せるはずがない。

だけど、それが素直な気持ちなのか?

そんなわけがない。


テオトルへの恨み。

それはあったけど、一時的なものだ。

筋トレをさせられすぎて、

イライラが募って、魔がさしただけだ。

決して本心でないし、

素直な気持ちなんかではない。


だとすればなんだ?


仲間への感謝?

ギーモン、ヴォーラフ、ヴェナ、

ワーザックにメリッサ。

確かに感謝はしているし、

彼等がいなければ俺は此処まで生きては来れなかっただろう。

しかし、本心かと聞かれると微妙だ。

素直で純粋な気持ちではない。



金属を叩き続ける。

一向に形は変わらず、

ただ打ち付ける作業を行っている。


素直な気持ち、

それは一体なんなのだろう。

答えを求めテオトルを見るが、

目を瞑り、宙に浮かび続けている。

俺自身に答えを出させようとしているのだろう。

彼女のこういう不器用な所は好きだ。

不器用ながらも、しっかりと気持ちをぶつけてくれる。



生まれて来てから今までを振り返ってみるが、

答えは見つからない。

俺は今まで何をして過ごしてきたのだろう。

内容のない人生だったということか?

いや、違う、そんなはずがない。


では一体、何が本心なんだ?


答えは簡単に出て来た。

かけがえがなく、それでいて憐れで、

惨めで、小さくて、どうしようもない男の人生だ。


彼は何をやっても上手くいくなど、

浅はかな考えを持ち、

受ける試験にはことごとく失敗し、

挙げ句の果てには両親が死に、

自分も殺されてしまうのだ。

そう、つまり俺だ。


だが、彼は俺であり、俺ではない。


俺は転生したのだ。

それがどういう経緯かは知らないが、

なんであろうと生まれ変わった。


もう一度「生」を受けてやり直せたのだ。


散らばっていた心のカケラが、

一つになってくれた。

答えは簡単だ。

ただ一言で良いんだ。


ありがとう。


今まで会ってきた仲間達に、

今まで育ててくれた両親や侍女に。

生まれ変わらせてくれた恩人に、

導いてくれたテオトルに。


固まっていた金属が、

形を形成し始めた。


希望を胸に生まれてきた此の世ならば、

夢を抱いて何が悪い。

夢を実現しようとして何が悪い。

人生を思い通りにさせようとして何が悪い。


生き方は自由だ。


ただ気の向くままに駆け回り、

楽しんで何が悪い。



俺は俺が決めた道を歩むんだ。

断じて命じられてじゃない。


前世で遂げられなかった、

両親への感謝を、

ここで込めねばいつ込める?

仇を取らなきゃ駄目だろう?

剛逆に、鮮烈に生きていこう。

気の向くままに。


そして、ヘリル王国に復讐してやるのさ。

両親の感謝を胸に抱いたままな!


剣が完成した。

至高ににして最強の、

神をも凌駕せんとする剣が。


「おぉ!良くやった!

良い顔してるじゃない!

進路を決めたんだね?

何をする?最後までお手伝いするよ?」


穏やかな気持ちと裏腹に、

復讐を果たすという目標が出来上がった。



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