第14話 『土人形の生徒征服』
まだ1年目だ。
既にもうやめたい。
生徒は傲慢で、生意気だ。
授業もまともに聞いてくれない。
人手不足なのも頷ける。
実際のところ金貨1枚が相場だが、
仕事のわりに給料が低すぎる。
この間だって生徒に戦いを挑まれた。
俺が小さいからだとか、
弱そうだとか、言いたい放題だ。
相当罵倒を浴びせてくるので、
倒すしてやろうとも思ったが、
リーモルから深く禁止されていたので、
回避行動に出るしかなかった。
それにしても授業を聞いてくれないのは困る。
ランニングを怠けたり、魔法付与を怠けられると、
リーモルから怒られるのだ。
どうすれば楽しく授業が出来るだろうか。
……待てよ、魔法付与は必ずしも剣や拳だけとは限らない。
昔ロボットを戦わせる映画を見たことがある。
ゴーレムだ!ゴーレムを動かせば良い!
ゴーレムは通常魔力回路などを取り付けて、
自律的に守ることに特化するものだ。
しかし魔法付与は、
弓から放たれた矢にも付与される。
その原理を応用すれば、ゴーレムを動かすことは可能だし、
楽しく授業が受けられるし、
より強いゴーレムを作るために、
魔法の授業も集中するはずだ!
武闘大会だって、
人間が戦わなければ死ぬ可能性などなくなるし、
何より、通常の人間よりもド派手な戦いが観れる!
それにゴーレムで戦うために、
武術を自ら進んで習ってくれる!
なんて素晴らしいアイデアだ!
早速家に帰って作るぞ!
学校を早退して、
ゴーレムを作り始めた。
第6階位土魔法 土偶建築を作り上げた。
どのような形状にしたものか……。
ふと脳裏に、あるボディビルダーの姿が浮かんできた。
彼は素晴らしい肉体を持ち、サングラスをかけ、
ガトリングを連射しているイメージだ。
ゴーレムは出来上がった。
しかしそれはイメージ通りに行かず、
サングラスをかけたスケルトンのようになった。
少々残念だったが、試作品だ。
割り切って、動かしてみる。
最初は遠くにいるものに魔力を付与するイメージが湧かなかったが、
体の中にある魔力を指先を通して、
ゴーレムと共有するという感じだ。
つまり、自分と同じ動作をエンチャントゴーレムはするわけだ。
ということは生徒は体力もあげなくてはいけないということだ。
それはランニングも真面目になる事も同じ!
勝った。俺は生意気な生徒に勝ったのだ。
天才!やっぱ俺様は天才だな!
早速明日朝早く行って、リーモルに許可をもらおう。それが良い!
調子に乗って魔力を使いすぎて、
その日は倒れるように寝てしまった。
翌日早朝、
メリッサに送られて、愛犬ボーンと一緒に、
学校へ向かった。
後ろはゴーレムを動かし、付いて来させている。
職員室にいるリーモルに、
このゴーレム計画を話してみると、
死んでいたリーモルの顔は、段々と生き返ってきた。
「すっばらしぃぃぃじゃないですか!
流石私が見込んだロメディア先生だ!
わかりました!今日一日、貴方に一年生を任せましょう!
成功すれば、生徒達は中々良い魔術師になる事間違いなしです!
今年の武闘大会も、ゴーレム同士にしましょう!」
リーモルは足をバタバタさせながら、
俺の計画を認めてくれた。
という事で、今日の朝会は俺が喋ることになったのだが、
生徒達の目が痛い。
喉が震えるのを抑えながら、
朝礼が始まる。
「み、皆様おはようございます。
魔法付与教師のロメディアです。」
生徒達が舌打ちを始めた。
本当に生意気な生徒だ。
今に見てろ、ちびってもしらねぇぞ!
「今日諸君らを、ここに呼んだのはだな、
見て欲しいものがあるからなんだ。
これを見れば、みんな絶対授業を受けたくなるはずさ!
出てこい!ゴーレム!」
地面からゴーレムが出てきた。
約3mはあるであろうその身体は、
骨の様な形をしており、
顔はサングラスの様なものをしている。
生徒達は地面から急に出てきた土の塊を見て、
その形ゆえに固まっている。
いい気味だな。
「実はこのゴーレム、自律的には動かないんだ。
でもこうやって魔法付与をすることによって……
ほら動いた!俺と全く同じ動きをしてるぜ」
試しにアッパーカットをしてみる。
ほぼタイムラグなしでゴーレムも同じ動きをする。
生徒達から歓声が起きる。
「今日からは、このゴーレムを作れるように魔術の練習をして、
魔法付与の練習もしっかりして、
ランニングで体力をつけて、
武術を学んでくれ!
この年の最後はお前達が作ったゴーレムで、
トーナメント戦を行う!
勝った奴には、ゴーレムに付与できるパーツを与えてやろう!」
雑な言葉に一部の先生はムッとしたが、
生徒達が、やる気に満ち溢れた顔をしている。
大成功だ。
これで明日からの授業は、真面目に受けるだろう。
ちなみにゴーレムを作る意義についてだが、
リーモルは修学旅行の時にも、移動手段として使えると、
とても喜んでいた。
実際、ゴーレムは素早い。
作られた性能によるが、
俺のゴーレムの場合は、迎撃や、侵攻する際などに使う、
もっぱら戦闘型だ。
土魔法系魔法付与なので、
体を固くしたり、
泥団子を放ったりすることができる。
結構お気に入りの作品だ。
試しに近くの森にいる魔物と戦わせてみると、
超強いのだ。
魔物を上回る力を持ち、
尚且つ魔法を行使できる。
下手に俺自身が動くより、
ゴーレムに任せた方が、楽に済みそうでもある。
ただし欠点もあるのだ。
俺は魔力行使範囲が狭いため、
半径50m程度を過ぎると動きが鈍くなり、
80mを過ぎる頃には動かなくなる。
つまり偵察などには向いていないのだ。
更に、ヤワな土魔法で作られていたら、
水魔法をかけられるだけで泥の塊になるし、
複数体同時に動かすとなれば、
全て同じ動きをしてしまう。
軍隊にするには各個人が動かす必要があり、
強めの土魔法で作らなければ、
簡単に壊れてしまうのだ。
しかし水対策なら簡単にできる。
魔法石を買えば良いのだ。
魔法石は、
魔力が宿っている。
もちろん炎の攻撃をあげるものもあれば、
耐性を付ける石だってあるのだ。
ということで、俺は魔石店に来ている。
昔ギーモンと共に訪れた店だ。
「おぉ、坊ちゃん!お可愛いままですね…。
本日はどういったご用件で?」
「あぁ…えっと、土属性の強化魔石と、
出来れば水が良いんですけど……、
耐性魔石があれば、それで良いです」
坊ちゃんと呼ばれ、一瞬動揺してしまった。
最近はメリッサにお嬢様としか呼ばれてないので、
久々に聞く響きだったのだ。
「おぉ!坊ちゃんは運がいい!
今なら全属性耐性魔石が置いてありますよ!」
はっ?全属性?
そんなものあるの?
先生してたけど、初めて知ったんだけど。
「あっ是非!是非見せてください!」
「もちろんです。ではこちらへ」
俺は店の奥に案内された。
店の奥には高級そうな魔法石が並んでいる。
小さい頃ギーモンと一緒に行ったのはここだ。
右手についている紅いブレスレットは、
元はといえばここで買ったのだ。
「こちらです」
差し出された箱の中には、
魔法石にしては大きい物が置いてあった。
色はない。強いていうのであれば透明だ。
「こちらの魔石、今なら金貨50枚!」
50枚!?金貨1枚が銀貨30枚分と考えて…
銀貨1500枚……
全財産合わせたとしても、
銀貨換算で400枚程度だ。
「あ、あの……」
「なんですか坊ちゃん?」
「ローンって組めますか?」
「もちろんですとも、という事はお買いに?」
「はい。1ヶ月銀貨3枚ずつで良いですか?」
「坊ちゃんのペースで構いませんよ!
毎度ありがとうございます!」
良い買い物をした!
これでゴーレムは最強になるぞ!
生徒達にも自慢してやろう!
俺は知らなかったんだ。
この決断が後に最悪な事態になるだなんてね。
伏線っぽく書いておきました。
苦手なので、どうなるでしょうか。




