第15話 『土人形大会・前編』
生徒にゴーレムを教えて数ヶ月が経った。
簡単にいえばゴーレム計画は大成功で、
全ての授業を少しづつ、真面目に受ける様になってきた。
土魔法は全員5階位程度にはあがり、
魔法付与操作技術も上がっている。
嬉しい事に、生徒内で一番人気の授業は、
俺が担当している武術の授業だ。
質問もよくされ、
ゴーレムを破壊するにはどうすれば良いかをよく聞かれる。
最初の頃は俺も分からなかったのだが、
魔法付与操作をしているうちに、
ゴーレムには魔力の通り道ができる。
人間の血管などと同じ様な感じだ。
故に弱点もある。
頭が外れれば動かなくなるし、
貫かれでもしたら魔力の通り道から
魔力が漏れ出し、動きが鈍くなる。
漏れ出す量以上の魔力を付与すれば、
問題なく動くが、漏れ出す量は恐ろしく多い。
魔力通路は無数にあり、物凄いスピードで魔力を自然に放出していく。
貫かれた後も、通常通りに先頭が行えるほどの
魔力を持つ人間は存在しないだろう。
人王ブレイダルで、精々10分ってところだ。
遠い昔にいたとされる神様なら、
容易に行えるだろうな。
つまり生徒達は殺傷能力がどんどんと上がっている。
大人になった時に悪用されない事を願うばかりだ。
生徒が授業に集中してくれる様になったのは、
とても良い事なのだが、
良い事尽くしではないのだ。
村人からの苦情が、少し増えた気がする。
大きいゴーレムが怖くて寝られないだとか、
暴走したらどうするんだとか。
実際暴走する危険性は皆無なはずだ。
魔法付与状態でのみ、
模倣機能がつくだけであって、
自ら動くことは出来ないはずなのだ。
だから俺達学校側は、丁寧に苦情を処理している。
ゴーレム武闘大会まであと数日だが、
生徒は、既にとても強いゴーレムを作り出している。
正直に言って5階位相当の魔物に匹敵するだろう。
今回の優勝候補は4名。
5階位クラスのワットと、
4階位クラスのアコール。
7階位クラスのテッサに、
1階位クラスのシギー。
彼等はゴーレムだけでなく、
自分自身のトレーニングをしっかりしている。
魔法付与が上手だったり、
武闘派だったり、工夫していたりだ。
特に7階位クラスのテッサは、
ゴーレムに水属性魔法武器を持たせている。
武器自体の性能は大したことはないのだが、
対ゴーレムとして使う事によって、
凶悪な強さになっている。
切り口を泥に変えて、魔力通路を壊すのだ。
シギーは恐ろしい子である。
彼はアバルディア王国の王子であるのだが、
やはり武闘派の国と言ったところか、
強さに執着している。
俺が教えている精霊武術の授業では一位の成績を取っており、
恐らくゴーレムを通さない限り、
この学年の生徒には勝機すらないだろう。
俺のゴーレムは、テッサに壊された。
少し悲しかったが、ちょうどよくもあった。
今度はこの間買った魔法石を軸に作るのだ。
土魔法で原型を作り、火魔法で焼き上げる。
かなりの高温で焼く事によって、
土は磁器と化す。
吸水性がなくなるのだ。
これによって弱点の一つである水は、一切聞かなくなるのだ。
後は魔力に馴染ませれば出来上がりだが、
ゴーレムの右腕は作ってる最中に、
燃え盛る黙示録の影響で、
真っ赤に染まってしまったので、
不自然な感じで色が付いている。
毎日魔法付与をし続けて、
大会の前日に、やっと魔力に馴染んだ。
透明な魔法石だったので、
ガラスの様に透明になるかとも思ったが、
素材を変えたからか、真っ黒になってしまった。
ムキムキマッチョマンな感じで作ったゴーレムは、
目や駆動部が淡い緑色に光っていて、黒いボディを持ち、
相当怖い感じになっている。
名前を付けるとすれば間違いなく、
冥界の王だろう。
ゴーレムを作り終わると、
アルクが戦いを申し込んできた。
冥界の王は、アルクの攻撃を軽々と避け、
受け止めた。
アルクの拳は簡単に固定されてしまい、
一発アッパーカットを食らわせられて、
伸びてしまった。
とても一方的な試合だった。
起きたアルクが涙目で部屋に戻って行ったのは、
少しかわいそうだったが、
ゴーレムが強すぎたのだ。仕方ない。
魔物で例えるならば、
3階位を超えているかもしれない。
俺は悪魔を作り出したのかもな。
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武闘会の日がやってきた。
出席者は多く、貴族階級上位の人々が多く集った。
アバルディア王国、国王のケブライ・アバルディアを始め、
ヘリル王国、国王ブレイダルに、
第2都市ウサの街から、エフダ・ドナルド。
ハーキュリーズ家の面々も多くいた。
決勝のみ4人での対戦で、
その他の試合は1対1の戦いである。
しかし優勝候補の4人のゴーレム機能は、
周りに比べると比べものにならず、
一方的な破壊を見せられてしまった。
来賓の皆様に失礼かとも思ったが、
破壊ショーの様なものを気に入られた様だ。
もちろん、あの4人が決勝進出を決めた。
シギーのゴーレムは緑色で、
とても攻撃力が高い。
腕の部分のみ胴体に比べて硬く作られている。
軽い岩を破壊するのを今朝も見てしまった。
テッサは剣の手入れをしている。
対ゴーレム戦では最強に近い剣だ。
どこで買ったのだろうか。
今度教えてもらおう。
アコールは魔法付与の天才だ。
自分の動きをタイムラグなしで、
ゴーレムに伝えることができる。
これが一番怖い機能だったりする。
ワットのゴーレムは魔法を詠唱できる。
ゴーレムの腕から魔力を放出するのだが、
この歳でそこまでの魔力操作を可能にするのは驚きである。
「今回の大会はロメディア先生が考案した、
操作型のゴーレムを使用していますので、
暴走などの心配はございません。
ご安心くださいませ」
リーモルがゴーレムについて説明をする。
観客は皆、感心した様にゴーレムを眺めている。
「という事で、
決勝に残ってきた4人の猛者を紹介いたします!
一人目はシギィィィィィ・アバァァァァルディアァァ!
貫けるなら貫こう!吹き飛ばせるなら吹き飛ばそう!
まさに武闘派!この男のゴーレムは、
まさに地獄への案内人!
壊されたゴーレムの数は計り知れない!
全てのゴーレムは指をくわえて待っているしかないのか!」
やはりリーモルは実況が似合う。
彼のゴーレムの腕は、恐らく鉱石が混ざっている。
綺麗な色をしているので、単に硬い魔法石である可能性もあるが……。
「二人目はアコォォォォォルゥ・ワスタァァァ!
全てを見切り、全てを避ける!
彼女のスピードに見切られぬものはない!
敵はパンチを繰り出したはずなのに、
次の瞬間には倒れている!
まさに神速のクイーン!
このゴーレムに、傷を与える者は現れるのか!」
実際は攻撃が何回か当たっているんだけど、
動くスピードが早いので、
当たっているように見えていないだけだ。
だから試合後の入念なメンテナスは、
その傷を直したり、関節部の動きを確認したりするのに使われている。
「3人目はテッサァァァァ・アーリムスゥゥゥ!
ゴーレムだってただの土、水を加えりゃ泥になる!
彼の持つ剣は、かの名工アズーラ・マーデルが鍛えた魔剣!
水を操るその剣は、ゴーレムにとって天敵!
今回も彼の圧勝で、全て泥にされてしまうのか!」
確かに普通のゴーレムには強いだろうな。
俺が作った様に吸水性を消したゴーレムなら、
あの剣も無意味になる。
アズーラ・マーデルは世界的に有名な剣の名工で、
彼の作る剣は全て、その人の魔力になじむ様に作られている。
最近では剣に学習能力がついてるだとか、
ありもしない噂が流れているそうだ。
「4人目はワットォォ・メイボルギィィィ!
動いてないのに相手が倒れた?
いや、違う!魔法を繰り出している!
魔法付与したゴーレムから、
多種多様な魔法を繰り出す!
何者の彼の前には近付けられない!」
4人がアピールを取ると、
ゴーレムが同じ動きをする。
「レディィ!ファィッ!」
リーモルの掛け声と共に、
熱い戦いの火蓋が切って落とされた。
早く話を進めたかったりするのですが、
書きたいことを書くと、どうしても先に進みにくいものですね。




