表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
61/61

第50話「そういう生き物だ」

剣より頭、魔法より読み。


平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。


ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。

 沈黙の中、先のマイトランドの言葉に疑問を持ったのか、フレデリカが声を上げた。


「次があればとはどういう意味だ?たしか、新兵教育は4回の模擬戦と、3回の学科試験だったと思うのだが?」


 この場にいる誰もが、疑問を感じていたことだが、マイトランドの言葉を不思議に感じ尋ねると、マイトランドは両手を広げ、はぁ、とため息をつき答えた。


「ああ、教育規定ではな。だが、これで攻め手、つまり俺達が勝ってしまえば、次の模擬戦をする意味がないだろう。次は大将を二人に分けての総力戦だ。まぁ言ってしまえば、2回目の模擬戦と何も変わらんという事だ。」


「うん、それはわかるんだ。だけど、軍の編成を少し変えるとか、敵味方が入れ替わるなどで、4回目の模擬戦は成立するのではないか?」


「ふふん。少しは考えろ。この兵力差でぼろ負けする大将が次も勝てると思うか?思わんだろう。最悪あったとしても、序列はフリオニールが上だ。フリオニールが俺達の班を選べば、グレンダはそれだけで降伏するさ。つまりこれが最後の模擬戦になるという事だ。加えて俺達は今回勝つから、2回目の学科試験を受ける必要が無い。つまり課業を除けば新兵教育は、学科試験があと1回だけになるという事だ。フリオニールにしても、今回この状況から勝てば、わざわざ俺達を選ばないと言うこともないだろう。どうだ?フリオニール。」


 マイトランドは一通りの説明を終え、フリオニールに話を振ると、フリオニールは両手を広げ、頭を小さく左右に振りながら答えた。


「マイトを選ばない訳がないだろう。私とて、グレンダ嬢の様になるのは嫌だからな。マイトが敵にいると言うだけで、自分の班以外の仲間全てを疑わねばならん。できることなら、そんなことはしたくない。マイト以外47班の全員をこちら側に貰えるというなら少しは考えるがな。」


 フリオニールがそこまで言い終えると、ジェラルトが話に割って入った。


「ないない。少なくとも俺はマイト以外とは組まないぜ?ロンベルトとももう一度戦ってみたいしな。他の皆はどうだ?」


 ジェラルトが班員達に目を向けると、ジェイクが真っ先に拳を突き上げた。


「冗談じゃねぇ。マイトがいない戦場なんて、飯のない食堂みたいなもんだろ。行く意味がねぇよ。」


「例えが酷いな。」


 マイトランドが苦笑すると、フランが手を挙げた。


「私もマイトさんの班がいいですぅ。他の班に行ったら、誰が私の火魔法を使ってくれるんですか?」


「お前の火魔法は使い方が問題なんだよ。この前も隊舎の支柱に火をつけただろ。」


 ジェラルトが突っ込むと、フランは悪びれもせずにぴょんぴょん跳ねた。


「あれは練習ですぅ!」


「練習で隊舎を燃やすな。」


 ヘクターが腕を組みながら静かに口を開いた。


「マイトと離れるのは嫌だな。」


「そもそも班を分割っておかしいだろう。」


 アルベルトが続くと、クリスが咳払いをしてから言った。


「僕は……正直、体が弱いので、マイトさんの班以外だと、戦力外で捨てられると思います。」


「お前、自虐が過ぎるぞ。」


 ジェラルトが呆れると、クリスは真顔で返した。


「自虐じゃなくて事実です。」


「事実って言い切るなよ!」


 ポエルだけは何も言わず、ただマイトランドの方を見て、小さく頷いた。それで十分だった。


 フリオニールはマイトランド班の否定的な意見を聞くと、満面の笑みで答えた。


「ではやめておこう。勝機が無い。」


「そうだな。それを分かってもらう意味も込めて、今回の模擬戦では調略という手を使うんだ。少しはグレンダに同情するけどな。わかったかフレデリカ?」


「ほおぉ。マイトはすごいなぁ。グレイグおじ様の言っていた通りだ!おじ様はいつもマイトを褒めていたぞ?」


「俺がすごいわけじゃない。皆がいるからこの手あの手が使えるんだ。ここにいる全員が、欠けることなく仲間でいるからな。一人で何でもできるのは、そこにいるジェルくらいさ。」


 マイトランドの言葉に、皆が、鼻をほじるジェラルトに視線を移すと、ジェラルトはその取れた鼻くそを、ベッドの脇に付け立ち上がった。


「ああん?俺は作戦を考えるとかは無理だぜ。マイトがその辺は担当してくれるからな。ぶっちゃけ楽でいいぜ。」


 そう言ってまた鼻をほじりだしたので、皆は、苦笑いをしてジェラルトから目をそらした。


 クレアだけが、信じられないという顔でジェラルトを凝視していた。


「……あんた、今の話の流れでそれやる?」


「何がだよ。」


「鼻よ!鼻!」


「人の鼻に文句つけんなよ。」


 フレデリカがクレアの肩を叩いた。


「クレア、もういい。あれはそういう生き物だ。」


「生き物って、フレデリカ様……。」


マイトランドは窓の外に目を向けながら、静かに言った。


「まあ、泣いても笑っても、これが俺達だけで戦う最後の戦場だ。それが調略になってしまうのは、なんだか惜しい気もするがな。楽に勝てるのは悪い事じゃない。いかに自分の手を、異能を、隠して戦うかって話だ。」


 フリオニールが顎に手を当て、マイトランドを見た。


「そう言えば、ジェル以外はマイトの異能を見た者はいないな。あの水色の鳥の偵察くらいだな。他にはどんな異能があるんだ?」


 マイトランドは振り返ると、人差し指を唇に当てて笑った。


「秘密だ。使う場面が来ることがあれば喜んで使うけど、今は使う時じゃない。いずれ見てもらうことになるさ!さて、話し合いも疲れただろうし、明日も早い。今日は解散しようか。」


 マイトランドは、フリオニールの問いを大分ごまかして答えると、皆を解散させた。


 三回目の模擬戦、攻城戦の前日の夜の出来事であった。

面白いと思っていただけたら、ブックマークしていただけると大変励みになります。次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ