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第22話「前代未聞」

剣より頭、魔法より読み。


平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。


ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。

「グレンダ様ぁぁあ!」


 グレンダの副官が振り向き、グレンダの馬の異変に気付き声を上げるも時既に遅く、マイトランドがランスを戦車の車輪に投げ入れると、片側の車輪の力の行き場を失った戦車は、回るように宙を舞った。


 グレンダが馬とは別方向に飛ばされると、それを待っていたかのように、ジェラルトがグレンダを受け止め腕に抱いた。


 父親以外の男に抱かれることとなった為か、頬を赤く染めるグレンダに、ジェラルトが降伏を促すと、グレンダは観念したのか、あっさり了承した。


「あの、名前を伺っても?」


 そう言ったグレンダにジェラルトは笑顔で答えた。


「ジェラルトだ。」


 名前を言うと、グレンダを立たせその場を後にした。


 そんなやり取りの後、フレデリカがヘクターに降伏をすると、各班に随伴していた班長と査閲官が模擬戦本部に状況を伝えた。


 しばらく経つと、


 ドーン、ドーン、ドーン


 という模擬戦開始時と同じ銅鑼の音が鳴り響き、2日間に渡る模擬戦はここに終わりを迎えた。


 戦場にいた、もしくは、戦場から脱落し模擬戦終了まで待機していた全ての班は、開始前の集結地点である広場へと移動を開始した。


 かがり火が灯る広場には、既にマイトランド達以外の全ての班が集結しており、マイトランド達が到着すると、参加者全員から惜しみない拍手が沸き起こった。


 その中に、傷一つない鎧を身に纏った一団がいた。新貴族3班、ヨーゼフ・アルファイマー率いる魔導砲撃騎兵20名。一度も戦闘することなく戦場を離脱し、降伏扱いとなった部隊であった。


 拍手の中、マイトランド達はヘクターを先頭に、自分達の定位置47番目へ向かった。


 その班の整列位置に立っていたドワイト班長は、終始にこやかにその状況を見守っていた。


 全ての班が揃い整列を終えると、あの魔力拡声器から声がした。


「査閲官登壇。」


 各班の代表者が出す"気を付け"の号令を確認すると、査閲官フランドールが登壇した。


 魔力拡声器の指示で、敬礼を終えると、


「これより、評定を執り行う。部隊番号と、代表者を発表する。呼ばれた受賞部隊の代表者は中央に移動せよ。尚、受賞部隊には副賞として、グレッテ家、ロンメル家より金一封が授与される。」


 魔力拡声器を持った軍人は、金一封と言われはしゃぐマイトランド達をちらりと見ると、受賞部隊を一気に読み上げた。


「第5位、第3班、ベルナー隊、撃破数4個班」


「第4位、第5班、クリシュマルド隊、撃破数4個班」


「第3位、第4班、アルドリック隊、撃破数4個班」


「第2位、第2班、ロンメル隊、撃破数8個班」


「第1位、第1班、グレッテ隊、撃破数10個班」


 そこに47班ヘクター班の部隊名は無かった。


「ふざけんな!おかしいだろ!」


 ジェイクが大声で叫ぶと、当然他の者も騒ぎ立てた。無論のこと参加者ほぼ全員だ。


 いい加減にしろ、横暴だ、クソ野郎、賄賂を貰った、職権乱用、様々な文句が飛び交う中、ジェラルトは、目を閉じ黙って腕組みをするマイトランドを覗き込んだ。


「俺的には1位でも最下位でも変わらねえ。でもまさか撃破数だとは思わなかったよな。マイトランドはどう思う?」


 マイトランドは、ジェラルトに顔を向けると答えた。


「ああ、まあこんなもんだろ。こんなことも想定済みだ。去年までの記録は違ったんだけどな。概ね予想通りだ。決まってしまったものに文句を言ってもしょうがない。潔く5倍の罰を受けるとするか。金一封はフレデリカ達から回収することにしよう。」


 そう言うと、ジェラルトはその言葉を後ろの班員に伝えた。


「軍師殿が想定済みだとよ。もう文句言うな。フレデリカ達が金くれるってよ。」


 伝言ゲームの様に、後ろへ後ろへとマイトランドの言葉が少し違った形で伝達されると、全ての班員は文句を言うのを止め、おとなしくなった。本当の優秀班であるはずのヘクター班が、文句を言うのを止めたので、それに倣い他の者も口を閉じた。


 貴族、新貴族班の代表者5名が査閲官の立つ壇の前に集まると、事態はまたマイトランドの思惑とは違う方向に動いた。


「勝利条件がおかしい!撃破数ではなく、勝ち残りの模擬戦だったはずだ。今すぐに再考されよ。称えられるべきは47班ヘクター隊のはずだ。」


 そう言ったのはフリオニールであった。


 査閲官フランドールはこれに対し、


「グレッテ卿、評定の変更はありません。今回の模擬戦より、評定の評価科目が変わったのです。事前に通達しておりましたが?」


 無論のこと、フリオニールは評価項目の変更などは聞いていなかった。


「では私の部隊は受賞を辞退しよう。勝利を譲られても嬉しくはないのでな。」


 そう言って、元の位置まで戻ると、号令をかけ、班ごとその場から退場した。


「私も辞退する。共に戦った者を差し置いて、受賞する気はない。」


 フレデリカもまた、自らの意思で受賞を辞退し、その場を去った。


 グレンダもこれに続くように受賞を辞退し、退場した。


 それは、マイトランド達平民の知っている貴族の姿ではなく、信頼に値する真の貴族の姿であった。


「どうするんだよ。金一封回収できなくなったぞ。」


 マイトランドは、少し考えると、ジェラルトの疑問に答えた。


「金貨1枚じゃダメか?」


 かくして、新兵班対抗の第一回目の模擬戦は最優秀班なしという前代未聞の結果で幕を下ろした。

面白いと思っていただけたら、ブックマークしていただけると大変励みになります。次回もよろしくお願いします!

4位の順位が間違えていました。8/2修正。

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