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最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜  作者: 稲盛 皆藤
【第三部:伝説編 ―不滅の光と真の救済―】

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第48話:ルミナス・ガイア~温かな祝祭の夜~

 宇宙における光の速度は、いかなる状況でも不変である。

だが、その光が人々の心を温め、孤独という名の冷たい時間を、

融解させるまでには、相対的な「時間」が必要だった。


 昨日、マローは大陸全土を覆う、絶望の暗闇を完全に振り払った。

自らの魂を燃やして放った、オーロラのごとき全波長発光。

 その輝きは今、大陸の隅々にまで、血管のように敷設された、

魔導と光科学の結晶たる、『光子軌道フォトニックレール』を、

希望の熱として脈動させている。



 歴史的な偉業から一夜明け。

熱狂が冷めやらぬ首都ルミナスは、昨日の感動と涙を、『食』と『酒』という、

最も原始的で幸福な祝祭へと、見事に昇華させていた。


 特設会場となった巨大ガーデン。

頭上では、マローが放ち続ける、銀白色のオーロラが揺らめき、

「ルミナス・マロー・ガイア共栄国」の、同盟国24ヵ国の国旗を照らしている。


 その中心に座するのは、マローと苦楽を共にしてきた、親密なる六つの国の

代表たちだ。


 自由商業都市同盟ベネトからは、大商人モルガン。

 鉄鋼皇国バルカンからは、剛腕王ゴルム。

 静謐なる森のエルフ領からは、大長老セレナ。

 蒼海諸島連合からは、至純の海竜(ルミナスシードラゴン)キング・ポコ。

 鉄錆の荒野ジャンクからは、天網商会(アマ・ゾーン)のジャンク支部長、巌鉄(ガンテツ)

 そして精霊の箱庭スプリガンからは、妖精たち。


 だが、今夜の祝祭は、それだけでは終わらない。

祝祭の完成を祝うべく、フォトニックエクスプレス999号に乗って、

 陸のテーマパーク、ルミナスランドからは、先輩眷属たちの

『至純の水霊』へと進化したスライムのアルトたち、

『翠風の技師』となったゴブリンのテノールたち。

『閃光の飛空士』となったハーピーのソプラノたち。

『金剛の守護騎士』となったオークのバスたち。


 海のテーマパーク、ルミナス・オーシャンからは、

元ポセイドリス・Ωの至純の海竜(ルミナスシードラゴン)のキング・ポコを中心に

輝海人(ルミナス・マーマン)たち。

 

 愛すべき魔物の眷属たちが、大挙して押し寄せて円卓を囲んでいた。


 ある者は、サトシがプロデュースした、『からあげスナック』を一口で放り込んだ。


「ぽこー!。

 マロー様、ぽこー!。

 おでん、美味しいぽこ!。」


 マローの足元では、テーマパークの人気者、ポコが短い手足をバタつかせ、

出汁の染みた、『車麩』に、必死に食らいついている。

 その周りでは、スプリガンの妖精たちが、ポコの柔らかな毛並みに隠れ、

おにぎりの海苔を、分け合っていた。


 円卓の上を埋め尽くすのは、サトシがプロデュースし、天網商会(アマ・ゾーン)

総力を挙げて用意した、『コンビニエンス・フェス』の、圧倒的な質量であった。


 中央で湯気を立てるおでん鍋。

 黄金色に輝くホットスナック。

 最新の冷却魔導で鮮度を保つ、海鮮寿司弁当の豪華な山。

 そして、マロレッドの熱源魔導で、いつでも出来立ての熱を持つ、多種多様なお弁当。


 それらは、サトシが持ち込んだ、「効率と多幸感」の結晶だった。


「モルガン殿。

 この『まくのうち』……。

 実に見事な配置ですな。」

ベネトの大商人モルガンが、幕の内弁当の仕切りを、まるで大陸の勢力図を見るように、

真剣な眼差しで見つめていた。


「この限られた四角い宇宙に、

 主食、主菜、副菜。

 全ての調和が取れている。

 サトシ殿の説く流通革命……、

 これは単なる食い物ではない。

 一つの完成された経済圏ですな。」


「はっはっは!。

 理屈はもういい!。

 この『たるたる』よ!。」

鉄鋼皇国バルカンの剛腕王ゴルム。

 彼の前には、『チキン南蛮弁当(特盛り)』の、空き容器が山のように積まれている。

濃厚なタルタルソースが、自慢の髭に白くついていた。


「バラムの旦那!。

 あんたが改良した熱源魔導。

 あれがあるからこそ、

 この揚げ物とソースは、

 真の命を宿すのだ!。

 カロリーこそが力の源だ!。」


 ドワーフのバラムが、呆れたように鼻を鳴らすが、その口元は微かに緩んでいる。


 その隣では、蒼海諸島連合の元ポセイドリス・Ωの双子の姫君が、

センパイ魔族たちと並んで声を上げた。


「マロー様、見てください!。

 この海鮮寿司弁当!。

 私たちのテーマパークでも、

 これほど鮮やかな、

 『まぐろ』は出せません!。」


「光科学による、

 超高速冷却の賜物……。

 まさに海の奇跡、

 マロー様の慈愛ですわ!。」


 姫君たちが宝石のように輝く、いくらの軍艦巻きを頬張り、うっとりと頬を染める。


 エルフの大長老セレナは、その喧騒を愛おしそうに眺め、出汁の染みたおでんの

大根を、静かに、慈しむように味わった。


 円卓の端では、天網商会(アマ・ゾーン)のジャンク支部長、巌鉄(ガンテツ)が、

丸太のような腕で『カツサンド』を鷲掴みにしていた。

 彼は元暴走族の総長という荒くれ者だったが、サトシにその「爆走の才能」を

物流へと転換させられ、今やジャンクの荒野に光速の配送網を築き上げた男だ。


「……信じられねえ。

 管理者(トップ)の指示で、

 あの錆びた鉄屑の山に、

 初めて光の道が通った時。

 俺たちは、マロー様に、

 人としての誇りを取り戻させてもらったんだ。

 ……あの方の光こそが、

 俺の魂のヘッドライトだぜ。

 ……夜露死苦ヨロシク!。」


ガンテツは、一口でカツサンドを飲み込み、熱い涙を特注のツナギで拭った。


「サトシさんの言う、

 『廃棄を出さない世界』……。

 俺たちは、マロー様に、

 人としての誇りを、

 取り戻させてもらったんだ。」


 スプリガンの妖精たちが、ジャンクの男の肩の上で、『たまごサンド』の、

 黄色い中身を突きながら、「ふわふわだー!。」とはしゃいでいる。


 人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、そして精霊。

種族の壁を超え、科学と魔法が融合し、かつての敵も味方も、同じ『コンビニ飯』

に感動している。


 その中に誰もが振り返る程の美形の男子がポツリと居た。


「あなた誰?」

お調子者のハクが周囲の空気を読み取ってストレートに質問した。


「そうそう、みんな気になってたんだよ。よく言ったハク。」

マローはハクを褒めたので、褒められたハクは喜んで満面の笑みを浮かべていた。


「我はヴェルザード。マロー様の眷属となりました白氷竜にございます。」


「人の姿は初めてだな。いろいろと、さすがだな。」

マローはそれを聞いて笑顔で納得した。


 だが、その歴史的な、熱狂の中心に座るべき、至高の光神・マロー本人は。


「ああっ、もう!。

 フィオナ、

 撮らないでってば!。」


 赤くなった顔を、小さな手のひらで隠し、サトシの背中の後ろに、

必死に身を潜めていた。

 記録を司る獣人のフィオナが、漆黒のカバーが掛かった、

最新鋭の量子魔導カメラを、至近距離から構えている。

 レンズの先には、王たちや魔物たちから、代わる代わる褒めちぎられ、

羞恥心が限界を突破して、全身が薄ピンク色に、ぽわぽわと発光している、

なんとも可愛らしい神がいた。


「無理です、マロー様!。

 先日の、『天冠無極光神(ルクス・エテルナ)』への進化。

 あの神々しさの後に、

 この無防備な『照れ発光』!。

 このギャップこそが、

 共栄圏の最高機密!。

 フィオナ・レポートに、

 永久保存させていただきます!。」


「品がないし、

 恥ずかしいよ……!。

 サトシ、助けてよ!。」


 マローが真っ赤になって逃げ惑うと、センパイ魔族までが、


「光の加減がいいぜ!。」


 と笑い、キング・ポコも「キラキラぽこ!。」と尻尾を振る。


 周辺国の代表たちも、


「おお、神の慈愛の光が!。」


 と、真顔で拝み倒し始める。


 その過剰な崇拝が、マローの羞恥心をさらに加速させ、ピンク色の輝きは、

やがて繊細なオーロラとなって、首都ルミナスの夜空に、激しく美しく乱舞した。


 その騒がしくも温かい光景を、円卓から少し離れた階段に座り、

『メンチカツ』を、頬張っている男がいた。


 ヨレヨレの作業服を着た、深夜コンビニの元バイトリーダー、サトシである。


「……おい、丸尾さん。

 いい加減、諦めろよ。

 あんたが命懸けで始めた、

 このバカみたいに明るい平和だ。

 最後くらい、

 皆に揉みくちゃにされてこい。」


「サトシ……。

 君はいいよね、

 いつも涼しい顔してさ。」


 マローが溜息をつきながら、サトシの隣の冷たい石段に、ドカッと腰を下ろした。

背後から聞こえる、賑やかな宴会の喧騒。

 自分を呼ぶ声、笑い声、食器が触れ合う音。

 センパイ魔族たちの豪快な笑いと、キング・ポコの愛らしい鳴き声。


 それらが心地よい旋律のように、夜の空気を震わせている。


 マローは、夜空を見上げた。

 自分が放つ光が、星々を覆い隠すほどに明るい。


「……ねえ、サトシ。

 君が教えてくれた、

 『ジャンク』の精神。

 廃棄物を宝に変える、あの知恵。

 あれがなかったら、

 昨日の俺は、あの孤独のフラッシュバックに、

 飲み込まれていたと思う。」


 マローの繊細な独白に、サトシは鼻で笑い、最後の一切れのメンチカツを、

 口に放り込んだ。


「……あんたが、

 一人で勝手に、

 孤独死のトラウマに、

 浸ってただけだろ。

 丸尾さん。

 廃棄直前の弁当だってな、

 レンジで温め直せば、

 まだ十分に美味しく食えるんだよ。

 あんたの人生も、同じだ。」


「……ふふ。

 サトシは本当に、

 最高のバイトリーダーだね。」


 マローが柔らかく微笑んだ時。

 暗がりから、次々と、近しい者の気配が近づいてきた。


「マロー様、

 こちらにいたのですか!。」

職人肌のバラム。武力と外交を担うカイル。精神的支柱のルミナ。

そしてカメラを抱えたフィオナ。

 マローを支え続けてきた、パーティメンバーたちが、笑顔でマローを囲む。


「……ああ。

 皆、お疲れ様。

 少し、涼んでいたんだ。」


「涼むも何も、

 マロー様が一番熱いですよ!。

 見てください、

 このピンクの発光ログ!。

 歴史に残りますよ!。」


 フィオナがふざけて、カメラの画面を見せ、一同にドッと笑いが起きる。

 その輪の中に。一人の女性が、大事そうに、包みを抱えて現れた。


「マロー様。」


 神聖ローデリア教国最高位の執行騎士だった。

 今はマローの傍らで微笑む巴が、温め直したばかりの、『特製・鮭明太弁当』

を二つ、差し出した。

 彼女の白い頬は、マローのオーロラを浴びて、ほんのりと薄紅色に染まっている。


「……三人で、食べましょう。

 かつての、

 あの路地裏の、続きの味を。」


 巴の言葉に、マローは頷き、サトシと目を合わせた。

サトシは肩を竦めながらも、新しい割り箸をパチンと割る。

湯気の立つ、ふっくらとした鮭。

ピリ辛の明太子をご飯と共に。


 光の身体では不要だったはずの食事、けれど、人間の身体に戻った時に感じる、

この暴力的なまでの美味さと、隣に誰かがいるという確かな温もり。

 それは、心の奥底に残っていた、孤独な死の、最後の鋭い棘までもを、優しく、

完全に溶かしていった。


 もう、一人じゃない。

 見上げれば、自分が灯した街灯の下で、二十四カ国の代表も、

 魔物も、精霊も、たくさんの仲間たちが、笑い、食べ、明日を語っている。


 孤独だった丸尾一(まるお かず)は、今、世界で一番温かい、賑やかな円卓の主

となっていた。


 平和だ。


 もう、二度と。あんな暗く冷たい夜には戻らない。

 ……マローがそう確信し、幸福に目を閉じた、その瞬間だった。


 ピコーン。

 サトシの腰に下げられた、大陸全土の通信を統括する、金色のマスター端末から。

これまで聞いたこともない、鋭く冷たい警告音が響き渡った。


「……!?。」


 バラムが即座に身構え、カイルが剣の柄に手をかける。

センパイ魔族も鋭い眼光を、夜の彼方へと向けた。


 サトシは顔を顰め、端末のスクリーンを叩いた。


「……おい、丸尾さん。

 祝祭の時間は、

 どうやらここまでらしいぜ。

 二十四カ国の、

 ネットワークの、

 さらにその『外側』……。

 大陸の最果てにある、

 永久氷壁から、とうとう

 緊急の本注文が入った。」


「注文の、内容は?。」


 マローの声から、先ほどの柔らかな響きが消え、神としての静謐で研ぎ澄まされた、

絶対者のトーンへと変わる。

 だが、その背中を支えるのは、今は大勢の信頼できる仲間たちだ。

 サトシは、口元の笑みを深くして、画面の文字を読み上げた。


「『夜を終わらせる、

 一番明るいランプを一つ』。

 ……お届け先は、

 地図に存在しない世界の果て。

 未踏大陸、レムリアだ。」


「……配送料、

 すごく高そうだね。」


 マローは立ち上がり、祝祭を続ける仲間たちを、一人ずつ、ゆっくりと見渡した。

 

 ここはもう、完成している。

 俺たちが作り上げた、光に満ちた新世界。

 ならば、次は。

 まだ世界の隅っこで、夜に震えている、誰かの元へ。


「ねえ、サトシ君。」


 マローが、含みのある悪戯な笑みを浮かべ、前世の元上司をあえて君付けで呼んだ。


「そのバカ高い配送料の見積書。

 一番最初に持っていくのは、

 君の役目だからね?。」


「……ちっ。

 人使いの荒い神様だぜ。

 だが……まあ、いいさ。

 世界の果てまで、

 商品を届けてやる。」


「フィオナ、カイル、ルミナ、バラム。

 それと、エレーナに巴、国の皆と、それから

 陸の眷属と海の眷属のみんな…………たち、

 ……配達の準備はいい?。」


「仰せのままに。」

全員の呼吸が一つとなり、心地よいハーモニーを生み出した。


マローの全身から、これまでにないほど強く、けれど、

 どこまでも優しく温かい、『白銀の虹』が溢れ出した。

 大陸全土を繋いだ光子軌道を、媒介にして。


 次なる未知の大陸へと、自らの意志を運ぶための光。

空には、光速の魔導列車である、フォトニックエクスプレス999号が、

未知なる領域を目指し、銀色の尾を引いて、星空へと発進していく。


 その後ろを追うように、物資を積んだ貨物車両のサンライズ号が、

新たな希望を載せて加速した。


 消えた街灯の下での、孤独な死から始まった物語は、

世界を繋ぐインフラとなり、今、さらなる境界を超える。


 マローの隣には、もう、数えきれないほどの、温かな「絆」があった。


 ――最強の光神マローは、二度と夜を許さない。


 笑い声と光に満ちた、ルミナス・ガイアの祝祭を背に、

マローたちは今、新たな『光』を届ける旅へと、力強くその一歩を踏み出した。

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