番外編~涙の向こう側side千秋⑦~
すると篤は私達を睨みつけ、
「精々、似た者同士で仲良くやるんだな」
そう捨て台詞を残して、去って行った。
──ホッとした、その瞬間。
「ち~ちゃん!無事で良かったよぉ~!」
たまちゃんが、勢いよく私に抱きついてきた。
(いや、そこは功労者の田川に抱きつくところじゃないの?)
そう思いながら眺めていると、
「なんか……出番なかったんだけど……」
と、少し不満そうに言いながら、石橋が石塚さんを伴って現れた。
(……みんな、私を心配して来てくれたんだ)
胸がじんわり温かくなった、その直後だった。
私に抱きついているたまちゃんの首根っこを、ぐいっと掴み、強引に引き剥がす人物がいた。
「こっ……の、バカ! アホ! 考え無し!!」
田川の怒鳴り声が、辺りに響く。
「だって! 新井君がち~ちゃんに酷いことするんだもん!」
「だからって! 振りかざした紙袋の前に飛び出すバカがいるか!」
──始まった。
田川の説教タイムだ。
しょんぼりするたまちゃんに、ガミガミと説教する田川。
この構図、もうすっかり定着してしまっている。
(無鉄砲な彼女を持つと大変だねぇ……)
そう思いながら、
(あ……まだ彼女じゃないのか……)
と、心の中で一人ボケツッコミをしていると、
「間に合わなくて、ごめん」
そう言いながら、小野が私をそっと抱き締めた。
「……え?」
「これからは、ちゃんと守るから。
だから、一人で抱え込まないでほしい」
思わず息を呑む。
無理矢理彼女になったはずなのに……
ちゃんと、気に掛けてくれているんだ。
そう思っていると、
「たまちゃんも、聡も巻き込んでごめんね」
と、説教中の二人に割り込めるのは、やっぱり小野らしい。
しかし──
「あ?小野は悪くない。
お前が行こうとしたのを無視して、
飛び込んだこの……バカが悪い!」
相当、キレている。
「ち~ちゃん……田川君、怖い……」
私の後ろに隠れようとしたたまちゃんの首根っこを、再び掴み上げる田川。
「お前な! 俺が間に合わなかったら、顔を怪我してたかもしれないんだぞ!
そうなったら、添田が悲しむだろうが!!」
怒りが収まらない田川に、たまちゃんは上目遣いで見上げて、にこっと微笑んだ。
「田川君が助けてくれるって、信じてたもん」
──その一言。
その可愛らしい笑顔と、
『あなたを信じてます』全開の発言に、田川がグッと息を飲む。
(あ、これ……絶対「田上、可愛い」って思ってる顔だ)
私がジト目で見ていることに気付いたのか、田川は咳払いをして、
「と、とにかく! お前は無茶するな!」
と、声を荒げた。
するとたまちゃんはムウっと頬を膨らませ、
「いや!」
と、即反発。
「ち~ちゃんや繭花ちゃん、田川君だって、小野君も石橋君も!
誰かを傷付ける奴がいたら、私は助けるもん!」
そう言って、田川を真っ直ぐ睨みつける。
──田川、天を仰いだ。
(これは……あれだな
田上、堪らなく可愛い!!
でも、どう言い聞かせればいいんだ……!!)
完全に困り果てている。
そこへ小野が、たまちゃんの頭をぽん、と撫でた。
「たまちゃん、ありがとう。
でもね、たまちゃんは女の子なんだ。
顔に傷がついたら大変だから」
そう言ってから、優しく続ける。
「気持ちだけ、受け取っておくよ。
これからは……ほら。聡にお願いするとかさ」
話をまとめに入った、その瞬間。
「それじゃあ、私が田川君を振り回しちゃうじゃない!」
たまちゃんが、むっとして叫んだ。
……多分、この場に居た全員が思った。
もう、充分振り回されてますけど!
笑いを堪える私達を、たまちゃんが不思議そうな顔で見回す。
「聡、ファイト」
「聡、ドンマイ」
「田川……頑張れ!」
石橋、小野、そして私の順で、田川の肩をぽんぽんと叩いた。
そんな中──
石塚さんだけは、ブレなかった。
《さすが、たまちゃんのナイト!!》
という、憧れ全開の眼差しを田川に送っている。
「……田川、大変だな」
思わず漏れた私の本音に、
田川はガックリと肩を落としたのだった。




